スマート農業や最先端技術を活用した潅水装置を紹介

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日本の農業現場では、まだまだ人の手による潅水作業が行われています。

しかし、日本の農業を取り巻く環境は、農業人口の減少や高齢化、後継者や担い手不足等を原因に深刻な人手不足が指摘されています。

この記事では、当社が提供するインターネットを利用した遠隔からの水やりが可能な灌水制御装置をはじめ、AIを利用した自動潅水など、潅水作業を省力化するための技術や最新のスマート農業技術を紹介していきます。

目次

1. 日本農業の課題とスマート農業の普及

2.スマート農業実証プロジェクト

3.スマート技術を活用した潅水制御装置

4.スマート技術を活用した農業ソリューション

5.まとめ

1.日本農業の課題とスマート農業の普及

日本の農業は、農業者の高齢化等を原因とした農業人口の減少から、新たな担い手となる後継者の確保と新規就農者の育成が課題とされています。

農林水産省の調べでは、2010年に約268万人いたとされる農業従事者数も現在では約168万人まで減少し、また平均年齢も67歳まで上昇するなど、農業人口の減少と高齢化が同時進行している状況です。

国や農林水産省では、このような社会課題を背景に、日本農業を救出するための施策として、スマート農業を推進しています。

スマート農業とは、ロボット技術やAI(人工知能)、情報通信技術(ICT)等の先端技術を活用して、省力化や精密化・高品質化を実現するものです。

日本の農業は、人の手に頼る作業や高度な栽培ノウハウを必要とする作業が多いため、農業者の負担が大きく、技術の継承にも多くの時間を費やすといわれています。

スマート農業の普及は、農作業の省力・軽労化は元より、日本農業の課題である、担い手の確保や栽培技術の継承にも役立つことでしょう。

【スマート農業技術の一例】

・ロボットトラクター等を活用した自動運転による耕耘作業

・インターネットを活用した遠隔からの水管理

・センシングデータ等を活用した農作物の生育管理および病害診断

2.スマート農業実証プロジェクト

林水産省は、スマート農業の普及を促進するための施策として「スマート農業実証プロジェクト」という事業を全国各地の生産地で実施しています。

このプロジェクトでは、生産者や民間企業、研究機関らで構成された各コンソーシアムを実施者に、稲作や畑作、果樹、施設園芸など各地の栽培品目に合わせた実証実験を全国148の地区で実施しています。

潅水制御の分野では、JA西三河きゅうり部会生産者らが実施する「ICTに基づく養液栽培から販売による施設キュウリのデータ駆動経営一貫体系の実証」を実証課題に、収量および生産性の向上が検証されています。

農林水産省は、スマート農業実証プロジェクトの成果として、スマート農業の現場実装を加速化するための新たな政策パッケージ「スマート農業推進総合パッケージ」を公表しています。

「スマート農業推進総合パッケージ」には、スマート実証の着実な実施や成果の普及、新たな農業支援サービスの創出、農地インフラやデータの活用など実践環境の整備、農業高校等でのスマート農業教育の充実、スマート農業技術の海外展開の5つの項目を柱に、今後の施策の方向性が示されています。

同省では、この政策パッケージに基づき、「2025年までに農業を担うほぼすべての人がデータを活用した農業を実践できるよう施策を集中展開していく」としています。

3.スマート技術を活用した潅水制御装置

潅水制御のスマート化は、潅水資材を取り扱う農業資材メーカー等を中心に開発が進められてきましたが、近年は農業機械メーカーや各種ITソリューションを提供する企業、研究機関および大学発のベンチャー企業等の参入も増えています。

1)Bluetoothを活用した潅水制御装置

・養液栽培システム太耕望(たいこうぼう)

株式会社サンホープが提供する養液栽培システム「太耕望(たいこうぼう)」に使用されている電池式のタイマーは、無線通信技術である「Bluetooth」を日本で初めて潅水制御装置に導入した製品です。

開発元はイスラエルの企業で、サンホープがアプリケーションの言語を日本語へと翻訳しました。スマートフォンやタブレット等のデバイスから潅水時間を設定して水やり作業を実行できるのが特徴だそうです。

溶液栽培システム 太耕望(たいこうぼう)

https://www.sunhope.com/products/taikobo.html

2)インターネットを活用した潅水制御装置

・SenSprout Pro 潅水制御システム

当社が開発した遠隔潅水制御システム「SenSprout Pro 潅水制御システム」は、インターネットを利用して潅水を遠隔から制御するシステムです。

当社の「SenSprout Pro 潅水制御システム」は、灌水ゲートウェイと潅水制御盤の2つで構成され、ベビーリーフの生産量で日本一を誇る熊本県の農業法人 株式会社果実堂様をはじめ、JA福岡大城アスパラガス部会様など多くの農業現場で使用いただいています.

また、関連商品として土壌水分や温度のグラフ化、栽培管理のデータ共有、水分量と温度の変化の通知、計測データのダウンロード等の操作をスマートフォン等のデバイスから実行できる「SenSprout Pro センサーシステム」も提供しています。

SenSprout Pro 潅水制御システム

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

SenSprout Pro センサーシステム

https://sensprout.com/ja/sensorsystem-2/

3)AI(人工知能)を活用した潅水制御装置

・AI潅水施肥ロボット ゼロアグリ(ZeRo.agri)

「ゼロアグリ(ZeRo.agri)」は、農作物に必要な水分量をAIが算出して潅水や施肥作業を自動で実行するAI搭載型の潅水施肥システムです。

このシステムは、「土壌の性質が粘土質か砂質によって保水力が異なる」という性質を元に、48時間の準備潅水を行ったあと、AIシステムが圃場の土壌条件を認識して土壌水分量を一定に保つように潅水を制御してくれるのが特徴です。

株式会社KDDIエボルバが宮城県東松島市で展開する農産物栽培拠点「幸 満つる郷 KDDIエボルバ 野蒜」が実施した「AI潅水施肥システムを活用したミニトマト栽培の取り組み」では、IoTを用いた栽培管理や潅水・追肥の完全自動化を実現。生育状態を遠隔から管理する屋外クラウド録画パッケージも導入して前年比の2.4倍の出荷数を達成したそうです。

また、福岡市と福岡地域戦略推進協議会(FDC)が実施した「福岡市実証実験フルサポート事業(イチゴ品種「あまおう」の栽培管理に関する効率化に向けた実験)」では、「ゼロアグリ(ZeRo.agri)」を活用した省力化の推進ほか、データの共有化による栽培ノウハウの蓄積が進められました。

さらに、農林水産省が支援する農業競争力強化支援法に基づく事業では、「生産者のみの努力では解決できない構造的な問題について、国が為すべき責務や講ずべき施策を支援する」として、「ゼロアグリ(ZeRo.agri)」を活用した事業を採択しています。

AI潅水施肥ロボット ゼロアグリ(ZeRo.agri)

https://www.zero-agri.jp/

4.スマート技術を活用したソリューション

潅水制御以外にも農業に関連する様々なソリューションが開発されています。

・環境モニタリングシステム Farmo(ファーモ)

株式会社Farmoが運営する「環境モニタリングシステム Farmo(ファーモ)」は、田んぼの入水と止水を遠隔から制御する水田 Farmoとビニールハウス内のデータを見える化するハウス Farmoの2つで構成されたスマートフォンアプリです。

水田 Farmoは、水位センサーと給水ゲートの2つを使用して、田んぼの入水と止水の制御や水位のリアルタイム表示、水位データのグラフ化ができるアプリです。スマートフォンを使用して田んぼの水位を遠隔から確認・制御できるため、見回り回数を大幅に削減することが可能になるそうです。

ハウス Farmoは、太陽光発電の専用センサーを用いて、ハウス内の環境を見える化するアプリです。気温や湿度、炭酸ガス濃度等のデータを取得してハウス内の環境変化をグラフ化する機能のほか、ハウス内の異常をプッシュ通知する機能も備えるそうです。

環境モニタリングシステム Farmo(ファーモ)

https://farmo.info/index.php

・IoT遠隔制御サービスe-kakashi

ソフトバンクグループのPSソリューションズ株式会社が提供する「IoT遠隔制御サービスe-kakashi」は、専用の装置を使用して、圃場の気温や相対湿度、地温、水温、土壌体積含水率、土壌EC、日射量、CO2濃度等を測定するIoTソリューションです。

農作物の栽培に関する情報や栽培ノウハウ、知見等をインプットすることで、適時必要な農作業の判断をアシストしてくれます。福岡県でいちご栽培に取り組む農家の事例では、新規就農者の育成と増収を目的に、平均で10アール当たり約80万円の増収を達成したそうです。

IoT遠隔制御サービスe-kakashi

https://www.e-kakashi.com/

・ハウス内換気システム 換気王シリーズ

農業機械メーカー大手の株式会社クボタが提供する「換気王シリーズ」は、ハウス内にある換気用の窓を自動で開閉する制御装置です。時刻や温度、雨、風、日射量等を6つの時間帯に区分して開閉を制御することができます。

保湿カーテンや遮光カーテンとの連動も可能なため、ハウス内の環境を一定に保つことができるほか、強風や急な温度の変化・降雨に対応する自動開閉機能も備えるそうです。

ハウス内換気システム 換気王シリーズ

https://agriculture.kubota.co.jp/sisetu/horticulture/kankiou/index.html

・ANSポット栽培

ANSポット栽培は、株式会社クボタが提供するポット苗専用の養液栽培システムです。ANS(人口団粒構造培地)と独立ポット、専用コントローラーの3つで構成されています。株同士の養水分の取り合いが無く、均一な生育を見込めるのが特徴だそうです。

ANS(人口団粒構造培地)とは、土の粒子が集まった団粒をさらに集めた状態(団粒構造)を人口的に作り出した土のことを指します。粒子の隙間が水分や空気の通り道となるため、植物の生育に適した状態を維持することができるそうです。

培地の体積含有率(VWC)、電気伝導率(EC)、温度(℃)等の土壌環境の見える化や自動潅水の設定等が可能です。

ANSポット栽培

https://www.jnouki.kubota.co.jp/sisetu/horticulture/anspot/

・パッシブハウス型農業プラント

パナソニックライフソリューションズ創研株式会社が開発した「パッシブハウス型農業プラント」は、農業資材の配置設計と自然の力を積極的に活用するパッシブ環境制御という技術を用いた植物プラントです。

パッシブ環境制御とは、自然光や水、風などの自然エネルギーを直接利用するパッシブ技術を用いて、作物周辺の温度や湿度等をバランス良く整える環境制御システムのことを指します。

エアコンや暖房等を使用しないエネルギーコストを抑えた栽培が特徴で、ハウス外の照度や外気温度、ハウス内の温度や湿度を計測して、遮光、送風、散水等を制御する機能も備えています。

プラント内で使用する機器は、作物の生育ステップに合わせた制御に加え、季節や時間に合わせた制御が可能だそうです。

パッシブハウス型農業プラント

https://news.panasonic.com/jp/press/data/2014/04/jn140421-4/jn140421-4.html

・SenSprout 高機能ビニールハウスソリューション

当社が提供する「高機能ビニールハウスソリューション」は、ハウス内の環境を制御する機能を有した次世代型のビニールハウスです。

土壌データの収集に使用するセンサーは、「SenSprout Pro 潅水制御システム」にも使用している「SenSprout Pro センサーシステム」で、土壌に含まれる水分データや温度データ等のリアルタイム情報を解析する機能や土壌情報の共有を可能にする機能、土壌の変化を検知して通知する機能を有します。

低コストでありながら優れた耐候性も持つことから、農業生産に係わるコストの削減にも貢献します。

SenSprout 高機能ビニールハウスソリューション

・ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電所)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電所)とは、支柱を立てた農地の上部空間で発電を行う太陽光発電設備のことを指します。

太陽光発電事業を展開する株式会社グリーンシステムコーポレーションのグループ企業である株式会社グリーンウィンドが栃木県宇都宮市で行った小麦の栽培では、個人や事業者を対象に売電を実施しながら、宇都宮市の平均収量10a/300kgを大きく上回る10a/368kgの収量を達成したそうです。

同社では、営農型太陽光発電施設を活用した畜産業への取り組みほか、太陽光発電と有機農業を融合した農業の6次産業化も進めています。

最近では、太陽光を自動で追尾する3次元追尾式太陽光発電架台特許技術を用いたノータス架台など専用のパネル架台も発売されています。

ノータス架台は、農業と太陽光発電の完全両立を目指した製品で、太陽の位置を検知する3次元追尾機能ほか、営農に特化した空間設計、農作物の発育を阻害させない角度調整、優れた耐環特性が特徴だそうです。

営農型太陽光発電専用パネル ノータス架台

https://www.notus.co.jp/product/

・自動野菜収穫ロボット(inaho株式会社)

収穫ロボットは、農作物の収穫作業を省力化するためのロボットで、研究機関や大学、アグリベンチャー企業らを中心に様々な実証実験が進められています。

inaho株式会社が開発した自動野菜収穫ロボットは、アスパラガス、ピーマン、トマト、なす等の作物に対応した収穫ロボットで、病害判定等を実施する拡張機能ほか収穫高の15%をマージンとして支払う従量課金型のサービスも提供しているそうです。

inaho株式会社  自動野菜収穫ロボット

5.まとめ

スマート農業は日本農業が直面する様々な課題を解決する可能性を秘めています。

この技術を活用した農業を実践することは、農業人口の減少や高齢化、担い手不足等に悩む地方の農業生産現場の明るい未来にもつながります。

この記事を参考にぜひスマート農業技術を活用した潅水制御を導入いただき、作業の省力化と人材の確保をすすめてみてはいかがでしょうか?

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