おつづき農園 代表 緒續 一馬様

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おつづき農園について

祖父から続く3代目農家である緒續代表ですが、初代は牛とブドウ・2代目はスイカメロン、3代目は小松菜と、代変わりとともに栽培作物も変化していったそうです。

今回は、小松菜を生産し売り上げを大きく伸ばした3代目の緒續 一馬様にお話をお伺いいしました。

おつづき農園

代表 緒續 一馬様

Q、おつづき農園の創立は何年ですか?

A、おつづき農園という屋号になったのは2012年です。農家としては祖父の代から始まって、最初は牛の飼育とブドウを作っていました。2代目である父に代替わりしてからはスイカとメロンを30年ほど栽培し、僕に代替わりしたときに小松菜に切り替えました。小松菜を選んだ理由は、人を雇用できる作物だからです。代替わりの頃の父は腰が悪く、スイカの作業が辛くなっていました。スイカとメロンは技術を習得するまで時間がかかるので、もし父が倒れたら規模を縮小するか人を雇うかの2択になります。だったら雇用できる作物を作ろうと思って、小松菜を選びました。

Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。

A、社員は私と父の2名で、パートさんは男性が3名、女性が僕の嫁を入れて7名です。

Q、緒續代表が農業を始められたきっかけを教えて下さい。

A、小学4年生のときに、父は元々久留米試験場(現在の九州沖縄農業研究センター)で防除の研究をしていて、今は農業をしているという話を聞いて農業を志すようになりました。仕事を意識したり、父親と仕事像が結びついてきたりしたのもその頃ですね。

Q、緒續代表の経歴を教えて下さい。

A、農業高校を卒業後、父と同じ九州沖縄農業研究センターに勤めてから就農しました。九州沖縄農業研究センターでは小松菜の勉強をせず、当時猛威を振るっていたタバココナジラミの防除の研究や、微量元素やpHの高低によるメロンの栽培方法の違いを研究していました。対象作物はメロンでしたが、そのときの経験が現在の土作りに活きています。

Q、おつづき農園の栽培作物を教えて下さい。

A、小松菜と、6月だけ贈答用にスイカを作ります。スイカを栽培するのは負担にならないようビニールハウス1棟のみです。過去にはトマトやトウモロコシ、リーフレタス、サニーレタスなどにチャレンジしましたが、人のサイクルが読みやすかったため小松菜に絞りました。小松菜にこだわりはありますが、小松菜に固執したくないと思っています。

Q、おつづき農園の栽培面積を教えて下さい。

A、面積は3.5haで、すべて施設栽培です。

Q、おつづき農園が農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。

A、ありません。

Q、緒續代表が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?

A、販売です。

Q、その理由をおしえてください。

A、今後販売バランスを変えていきたいからです。今は単価よりも県内シェアを重視して販売しています。県外から持ち込むより、輸送費が少ないですからね。だからほとんどを市場に出荷しています。そうすると価格帯に幅が出てきて、今度は下伸びしてきます。だからB to Bを5割、市場出荷を4割、ネット直販を1割にしてきたいと考えています。

おつづき農園の販売戦略について

Q、おつづき農園の主な販売先はどちらですか?

A、市場出荷が9割ほどで、残りはスーパーさんや野菜の詰め合わせをしている業者さんに卸しています。

Q、おつづき農園は直販されていますか?

A、食べチョクに登録して直販しています。道の駅には出していません。僕たちは鮮度を維持して店頭に長く並べたいので、収穫してから1、2時間以内に冷蔵庫に入れて運搬します。でも道の駅は店頭に並んでも、廃棄までの日数が決められているので、1日で廃棄になってしまいます。そこの思惑が違うので、道の駅は僕たちには向いていませんね。

Q、販売戦略において苦労されていることはありますか?

A、苦労と言うより次の展開ですが、県内にこれ以上供給すると値崩れが起きるので、そろそろ県外に出荷してバランスをとりたいと考えています。

Q、販売戦略において工夫されていることはありますか?

A、収穫してすぐに梱包して冷蔵庫に入れることで、鮮度を長持ちさせるようにしています。また、外葉を1枚多めに取るようにしています。スーパーさんが主な取引先なので、スーパーさんに「他の農家さんより鮮度が長持ちする」「株元の泥が少ない」「品質がいい」と思ってもらいたいからです。収穫したものを1回コンテナに詰めてから作業場で梱包しまた詰め直していると、品質にばらつきが出てしまいます。また、夏に収穫してコンテナに詰めておくと、小松菜は日向では10分も耐えられません。だから栽培工程にこだわって、鮮度が長持ちするように工夫しています。

おつづき農園の生産管理について

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Q、農業生産していて一番苦労した点は何ですか?

A、栽培工程を確立することに最も苦労しました。

Q、どのように解決されましたか?

小松菜の栽培は農産物の中では簡単な部類に入ると思いますが、季節の移り変わりの中で人を動かしながら栽培するのは大変です。気温によって生育スピードが変わって、夏場だと30日で収穫できても、冬場では70日かかります。その中でいかに効率よく収穫するかが重要です。

僕たちは少し多めに小松菜の種を撒きます。多すぎて取り切れない分はロスになりますが、人を休ませると機会損失になります。僕はできるだけ効率的に収穫することを重視しています。

また、生産工程の確立と同時に品種選別もしました。品種の特性から理解して、それに合わせてオペレーションを組んでいきました。品種によって必要な水の量など、栽培方法が変わってきます。あとは梱包に必要な本数によって、栽培面積も変わってきます。このような試行錯誤を繰り返して、オペレーションとして確立したのはここ数年ですね。

Q、農業生産において独自で工夫されていることはありますか?

A、品質を維持するために、収穫してすぐに梱包して、冷蔵車に積んで運搬しています。コールドチェーンで輸送している小松菜農家は熊本県内にはいないと思います。品質の劣化を防いで消費者にはおいしい状態で届けたいし、バイヤーさんには鮮度がいい状態で店頭に並べてもらいたいですから。

Q、現在、農業生産において困っていることはありますか?どのように解決に取り組む予定ですか?

A、1年間に6作するので、土壌が変化します。だから土壌分析をして現状を把握して、土壌の質を安定させるようにしています。土の経験値は年を追うごとに積んでいきたいですね。

緒續代表が目指す農業の未来

Q、今後の展開について考えていることを教えて下さい。

A、今までは市場出荷が中心で自社の品質を上げることに集中していましたが、今後はB to Bの取引を増やしたいので、取引先のニーズにも答えられるように準備したいです。知り合いを通じて生協さんとも取引したいですね。でも生協さん向けの野菜は除草剤を使えないみたいなので、そこをどうしていくか考えているところです。

Q、緒續代表が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。

A、現在、農業従事者は減ってきていますが、作付面積や産出額はあまり変動がありません。だから生き残っている農家は地域を丸め込めるような、リーダーになれる力があると思います。地域の畑をまとめて人々を雇用して、地域産業になれる可能性があると思います。そして農家の世襲制という流れより、農業に就職する流れが続けばいいと思います。僕も個人事業主の名義を父から僕に変えて、将来的には法人化していきたいですね。

Q、緒續代表から若手農家へひとことお願いします。

A、言い方は悪いけど、僕は地域のスイカ・メロンの小さなコミュニティの中にいました。小松菜に変えるときに「スイカに戻れよ」と言われましたが、他の作物の先輩方には「農業界は広いからたくさん勉強しておいで」と言われました。するといろんな人に出会えて、経営方法が人によって違うことなどを学べました。だから若いうちにいろんな人とつながって、いかに情報を吸収するかが大切だと思います。横のつながりが増えることで、1人じゃないと思えます。農業は1人で経営しているようですが、実は周りの人とのコミュニケーションで学べることが多いです。特に若いうちは経営に疎いので、いろんな人に聞いてください。年をとると人に聞くのが恥ずかしくなるので、若いうちの方がいいと思います。

インタビューを終えて

小学校4年生の時から農業をすると志を持った緒續代表ですが、近い将来に法人化し、農家から農業へと業態変化を目指すとのことです。

コールドチェーンを構築し、消費者には美味しさ・業者には、棚持ちの良さを価値として提供する、川下を見据えた運営管理の構築は参考になるところが多いのではないでしょうか。

現在、売り上げを大きく伸ばすべく、新しい販路を開拓されているようで将来がとても楽しみです。

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