有限会社松山ファーム 松山 哲治様

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有限会社松山ファームについて

長崎県の雲仙は歴史的にも、火山と共存してきた地域でもあり、自然との共存は必然とされる場所です。その昔、「温泉」が「うんぜん」と呼ばれていた時代があるそうです。

そんな雲仙でレタス栽培を中心に、業務加工用として安定供給をされている松山ファームの松山社長にお話を伺いました。

有限会社松山ファーム

代表取締役 松山 哲治様

https://www.matuyamafarm.biz/

Q、有限会社松山ファームの創立は何年ですか?

A、平成8年(1996年)に立ち上げたので、今年で創立25年になります。

私は2代目で39歳のときに社長になったので、今年で8年目になりますね。

Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。

A、社員15名、研修生15名の、計30名です。

Q、松山社長が農業を始められたきっかけを教えて下さい。

A、私の性格的に、人に使われるのが嫌だったので。またサラリーマンになるのも嫌でした。だから松山青果に就職しました。

松山ファームは、松山青果という仲卸業が始まりです。松山青果で従業員を雇っていましたが、夏場は売るための作物がなにもありませんでした。だから雇用対策として、初代社長が農業生産を始めました。ちょうどその頃、離農する農家さんが少しずつ出始めました。それで「うちの畑を使ってくれ」と話になって、最初は1haくらいから農業生産を始めました。それが10年もしないうちに30haくらいになりました。ただし、畑の枚数は400枚ほどでした。だから、いくらやっても儲かりませんでした。畑は雲仙市の一番端の南串山という場所から国見というところまで、点々としていました。南串山から国見までは、移動時間だけで1時間もかかります。だから効率がものすごく悪い。それで「何とかしたい」と思っていたときに、諫早湾干拓の入植の公募がありました。そこだと効率的な農業ができると思ったので、諫早湾干拓地で農地を借りました。すると、畑は400枚から500枚になって、面積は45haになりました。そして、効率がものすごく良くなり、最初に比べて経費は3割減りました。

Q、松山社長の経歴を教えて下さい。

A、大学を卒業して、松山青果に就職しました。

Q、有限会社松山ファームの栽培作物を教えて下さい。

A、メインは秋冬のレタスです。夏にかけて、ビニールハウスでかぼちゃを作っています。かぼちゃは雇用対策で作っています。

Q、有限会社松山ファームの栽培面積を教えて下さい。

A、レタスが65ha、かぼちゃが5haです。ビニールハウスは250棟あります。ビニールハウスというよりは、トンネルの大型版ですね。コストを抑えるために、基礎も何もしていませんから。レタスは安いので、設備にお金をかけると回収できなくなります。昔は18haほど小型のトンネルをしていましたが、手間のかかる割に管理に追われて生産が安定しませんでした。それなら、大型のトンネルを建ててしまった方が効率よくできると思いました。それで最初は試験的に1ha大型トンネルを作りました。すると商品もよくできるし、歩留まりも上がるし、従業員のモチベーションも上がりました。冬の寒い中、外で仕事をするのと仕切られた中で仕事するのでは、環境が違いましたからね。海風が強い場所なので、大型トンネルを建てることで労働環境が大きく改善されました。それから増設していきました。支払いは大変でしたけど、使える助成金は使ってビニールハウスを増やしていきました。

Q、有限会社松山ファームが農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。

A、青果の仲卸業です。

Q、松山社長が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?

A、販売と人材育成ですね。特に販売は重要だと考えています。

Q、その理由をおしえてください?

A、私が「間違いないだろう」と思って始めたのが契約販売でした。うちの販売先は、カット野菜などの業務用と外食産業がメインです。理由は、安定的に需要があるからです。価格も数量も安定していたから計算しやすく、私としてはやりやすかったのです。でも、ここ1,2年のコロナで、状況が変わりました。お店は開けられないので、都市圏を中心に外食産業からの需要が激減しました。九州に出せればいいのですが、関東や関西といった市場規模の大きな地域で食べてもらわないと捌けません。だから、販売に関しては頭を悩ませていますね。

有限会社松山ファームの販売方針について

Q、有限会社松山ファームの主な販売先を教えて下さい。

A、大手のハンバーガー屋とカット野菜の工場が主な販売先です。大量に引き取ってくれるところがメインですね。量販店さんに直接卸しているのは5%もありません。量販店さんは、仕入れ量と販売価格が売れ具合によって左右されます。高値で売って売れ残ったら、次の日は発注ゼロということも普通にあります。だから契約として成り立ちません。量販店さんもうまく調整されているのでしょうけど、本当は価格を決めて販売できれば楽ですね。でも、それは経済的に許されません。量販店さんも、市場から仕入れていた方が直販より楽ですし。

Q、有限会社松山ファームは直販されていますか?

A、業務用と外食産業が多いので、直販はありません。

Q、販売面で苦労されている点はございますか?

A、余剰分の処分です。決まった量を供給しようと思うと、ある程度余るように作らないといけません。その余剰分を、市場に出せればいいのですが、品質面でなかなかうまくいきません。

Q、販売面で工夫されている点はございますか?       

A、大型トンネルを導入して、ある程度の規模で品質が一定になるようにしています。だから、「松山ファームに頼めば欠品はない」という信頼関係をお客さんと築くことができました。なんだかんだ言っても、人が扱うものですからね。うまいこと自分たちの言い分ばかり言わず、相手の気持ちにならないといけません。だから、私たちは適正利益を心がけて販売しています。

有限会社松山ファームの人材育成について

Q、有限会社松山ファームで働く方の平均勤続年数を教えて下さい。

A、10年を超えるくらいです。

Q、有限会社松山ファームの従業員の年齢を教えて下さい。

A、30代後半から40代です。

Q、人材育成はうまくいっていますか?

A、難しいですね。永遠のテーマです。

Q、うまくいっていないのはどのようなことですか?

A、農業における1年間の仕事は基本的に決まっています。私たちは分業しているつもりですが、お互いの意思疎通がうまくいかないこともあります。例えば、肥料を撒いたかどうか忘れたりすることなどです。私(社長)を通してだと上手くコミュニケーションをとれるのに、社員同士だと上手くいきません。コミュニケーションをとれる人が、今の若い人には少ないように思います。何か問題が起きたときには社長に報告しなければなりませんが、普段のコミュニケーションは社員同士でとってもらわないといけません。

Q、現在、有限会社松山ファームでは人材募集はどのような方法でされていますか?

A、4月に農大を卒業した人が来るので、そこで募集は終わりですね。

人材募集に関しては、最初は農大の募集にエントリーして、現場を見に来てもらってから採用しました。それから農大の先生たちと仲良くなって、人を紹介してもらっています。例えば、自衛官を途中で辞めた人を紹介されて採用したこともありますね。

Q、過去の採用面での苦労されていることはありますか?

A、農場自体は大きいですが、手仕事が中心なので、やっていることはとても細かいのです。だから、きめ細やかな仕事ができる女性が欲しいのですが、露地栽培で女性を採用しようと思ってもなかなか来てくれません。だから今は研修生に頼っているのが現状です。

松山社長が目指す農業の未来

Q、有限会社松山ファームの今後の展開について教えて下さい。

A、今まではレタスをメインに生産していましたが、コロナ禍でニーズも変わったと感じます。お店の業態もテイクアウトが増えて、外食産業がそこまで伸びない時代がくると思っています。だから新しい品目を入れないと、利益を出すことが難しくなると思います。候補はいくつかあるので、少しずつ始めていこうと思います。

Q、松山社長が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。

A、農業を良くしていくためには、経営者をたくさん作ることが大切です。私自身もまともな経営者かと言われると微妙なところですが、農業でまともな経営者はほとんどいないと感じています。「この作物を作ればいくらになるから、自分の給料がいくらになる」と計算できないといけません。日本の農業は、販売という一番大切なことを人任せにしています。定植や防除の段階では、販売価格がわかりませんよね。でも、最後の最後、収穫する頃になってはじめて、高いか安いかがわかります。これでは経営として成り立ちません。それが、私たちが業務用をメインに販売しようと思った1つの要因ですね。普通は売値の変化を見据えて、最低このラインで売らないと成り立たないことを計算する必要があります。だから、自分の作っている作物に勝手に値段が付いていると、普通の感覚の人だとハッと思うはずです。それで農業をするのは、博打のようなものですね。だから経営者を育てて、数字を理解できる農業者を増やす必要があると思います。

あとは、自分とは違う作物を作る人と仲良くなって、グループを組むといいと思います。「あそこのグループに頼めばなんでも揃うよね」となると、買い手としては楽ですよね。売り手としても、1つの作物で儲けるより、全体から少しずつ、確実に利益が上がる商売を始めてもいいと思います。

Q、松山社長から若手農家へひとことお願いします。

A、まずは自分で売ることを覚えることが重要です。自分で価格を付けて、自分で売る。販売は農業の中で1番大切です。作物をお金に換えることを覚えていかないと、「高かった、安かった」と、ずっと一緒のことを繰り返すだけです。販売を覚えないと、作業者で終わってしまいます。だから私は、現場で作業をしていません。社長のやることは、もっと他にありますから。

インタビューを終えて

青果仲卸を営む中、夏の雇用確保という課題解決のために農業進出。しかし、農地が点在することとなり、採算が取れないという問題が発生

解決策として、諫早エリアに畑を集中させ、価格が安定しない青果市場から、安定供給・価格・品質を望む業務用加工品や外食産業へと流通をシフトさせた貴重なお話を聞くことができました。 現在、コロナ過という新しい課題に直面しておりますが、松山社長は必ず解決され新しい道を見つけられることでしょう。

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