スイカ栽培における潅水作業の注意点

スイカは、カリウムやリコピンなど美容効果やダイエット効果がある栄養素を多く含む人気の農作物です。この記事では、スイカ栽培における潅水作業の注意点について解説していきます。

目次

1.日本のスイカ栽培

2.スイカ栽培のポイント

3.潅水作業の注意点

4.まとめ

1.日本のスイカ栽培

1)スイカ栽培の歴史

スイカはウリ科スイカ属に属する果菜類の野菜です。

原産は南アフリカの砂漠地域で、エジプトで発見された紀元前3000年頃の古代遺跡の壁画には、栽培種特有の楕円形の形をしたスイカの絵が描かれていたそうです。

スイカ栽培が日本に伝わったのは、室町時代以降で、「西暦1579年(天正7年)にポルトガル人が持ち込んだ説」と「1648年~1652年(慶安年間)に隠元禅師が中国大陸から持ち帰った説」の2つの説がありますが、正確なルートを示す重要な証拠はまだ発見されていません。

しかし、平安時代後期を生きた鳥羽僧正が書いた「鳥獣戯画」の中に、スイカのような果実を持ったウサギが描かれていることから、「当時の中国の王朝である唐との交流が盛んだった平安時代にはすでに伝わっていた」と考える研究者もいるようです。

現在の主な生産地は、熊本県、千葉県、山形県、鳥取県、新潟県、長野県、茨城県、石川県、愛知県、秋田県で、それぞれの地域に合わせた様々な品種が栽培されています。

・参考

2021年都道府県別生産量ランキング

1位:熊本県(4万9900トン)

2位:千葉県(3万7800トン)

3位:山形県(2万8500トン)

4位:鳥取県(1万8100トン)

5位:新潟県(1万7600トン)

2)日本で栽培されている品種の一例

・大玉スイカ

日本で最も多く栽培されている重さ平均3~5キログラムの品種。縞王や富士光、早生日章、甘泉、祭ばやしなど様々な種類がある。シャキシャキとした食感と甘みが特徴。

・小玉スイカ

重さ平均1.5~3キログラムの小形の品種。紅小玉、ひとりじめ、姫甘泉など様々な種類がある。表皮が薄いため可食部分が多い。

・黄色スイカ

果肉が黄色の品種。おつきさま(大玉)、おおとり(小玉)、ひまわり(小玉)など様々な種類がある。かつては糖度が低いものが多かったが、最近は糖度が高いものが多い。

・マダーボール

ラグビーボールのような形をした小形の品種。重姫まくら、紅まくら、黒美人など様々な種類がある。

・でんすけスイカ

表皮が深緑色の品種。高級スイカとして贈答用にもされる。出荷時期は7月上旬~8月中旬頃。

・太陽スイカ

表皮が黄色の大玉品種。愛娘ひなた(球形)や金のたまご(小玉・楕円形)などの類似品種もある。他の品種と比較して糖度が高いのが特徴。

・入善ジャンボスイカ

富山県の入善町で生産されている楕円形の特大品種。重さ平均15~20キログラム。入善スイカやたわらスイカとも呼ばれる。

・種なしすいか

第二次大戦後の日本で開発された種のない品種。通常のスイカと比較して甘味が少なく、栽培も難しい。しかし最近では糖度が高い品種も開発されている。

2.スイカ栽培のポイント

種まき・育苗管理

(1)農業用ポット(9~12センチ)に土を入れ、直径4~5センチ・深さ1センチ位の穴を掘り、種を3~4粒撒いて覆土する。

(2)水やりを行う。

(3)種をまいた農業用ポットをトンネル型のビニールハウスに入れ保温する。(25~30℃)

(4)本葉が1~2枚生えたら2本に間引きする。

(5)本葉が2~3枚生えたら1本立ちにする。

(6)本葉が4~5枚生えたら定植適期。(種まき後35日程度)

土づくり・定植作業

(1)連作すると土壌病害の一種であるつる割病の発生を招くため、4~5年の輪作を心がけるか接ぎ木栽培を検討する。

(2)定植2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約100グラム施してよく耕す。

(3)定植1週間前に40センチ四方の穴(深さ約30センチ)を掘り、堆肥を約2キログラム入れる。

(4)掘り上げた土にチッ素分の少ない化成肥料を約50グラム混ぜ、掘った穴に戻す。

(5)周りの土を集めて、幅60センチ・高さ10センチの畝をつくる。

(6)畝全体を黒色のマルチシートで覆う。

(7)苗が植えられたポットに水をたっぷり含ませる。

(8)ポットから苗を抜き、掘り上げた土を戻した場所に定植する。

(9)定植した株ひとつひとつにホットキャップを被せ保温する。(晩霜の防止)

(10)暖かい時期になってきたら、ホットキャップの上部に穴を開ける。

栽培管理

(1)本葉が5~6枚生えたら親づると第1子づるを摘み取り、第2子づる、第3子づる、第4づる、第5子づるの4本が残るよう整枝する。

(2)子づる同士が絡み合わないよう、成長に合わせて配置を変える。

(3)孫づるは全て摘み取る。

(4)第2子づる~第5子づるの第2雌花が開花したら人口受粉を行う。

(5)人口受粉は雌花が開花する朝9時頃までに行う。

(6)果実が卵位の大きさに成長したら、長卵形のものを2果残し摘果する。

(7)1回目の追肥は子づるが50cm位に伸びた頃。

(8)2回目の追肥は果実が卵位の大きさに成長した頃。

(9)1回の追肥量は1株当たり約50グラム。

(10)つる割病、つる枯病、べと(ベト)病、アブラムシ、ハダニ等の病害虫に注意する。

(11)つる割病は治す方法がないため、発生したら他に伝染しないよう、抜き取って処分する。

収穫作業

(1)開花後30日過ぎたら、日陰にあった果実に日が当たるよう配置を変える。

(2)大玉は開花後45~50日、小玉は開花後35~40日が収穫適期。

(3)「手のひらで叩いた時に鈍い音がする」・「着果節の巻きひげが半分枯れる」などの物理的方法で収穫時期を判断するのも有り。

3.潅水作業の注意点

スイカは乾燥に強い農作物です。

そのため、自然の雨が定期的に降ってくる環境であれば、潅水作業を行う必要はありません。しかし、猛暑や干ばつなど乾燥した状態が長く続く場合には、潅水作業を行う必要があります。

その際は、春から夏までの時期は朝1回を目安に、真夏の時期は朝夕1回ずつ計2回を目安に、土の表面や内部が乾いてきたタイミングで行うようにしましょう。

なお、日本のスイカ生産者の中には、農作物の水やり作業を省力化するための手段として、潅水制御装置を利用した潅水作業を行う生産者がいます。

潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで吸い上げた水を運ぶ「パイプ」、水源に含まれたゴミや汚れを除去する「ろ過フィルター」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」や「スプリンクラー」等で構成された農業用の設備で、露地栽培向けの装置とハウス栽培向けの装置の2種類があります。

潅水制御装置の中には、潅水の時間やタイミングを制御するタイマーなど、スイカ栽培に適した製品も数多くありますので、興味のある方はぜひ導入を検討してみてください。

また、当社が開発した「SenSprout Pro潅水制御システム」を使用すれば、インターネットを利用して潅水量を遠隔から制御できるようになります。

家庭菜園から大規模農業まで幅広く使用できる製品になっていますので、お気軽にお問い合わせください。

SenSprout Pro潅水制御システム

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

4.まとめ

スイカは日本の夏を代表する野菜です。スイカ栽培にチャレンジする際には、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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