じゃがいも栽培における潅水作業の注意点

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じゃがいもは、私たち日本人の食生活に深く関係する重要な農作物です。この記事では、じゃがいも栽培における潅水作業の注意点について解説していきます。

目次

1.日本のじゃがいも栽培

2.じゃがいも栽培のポイント

3.潅水作業の注意点

4.まとめ

1.日本のじゃがいも栽培

1)じゃがいも栽培の歴史

じゃがいもは、南米アメリカ大陸の西側を縦断するアンデス山脈の高原地帯を原産とする穀物の一種です。

発祥は、アンデス山中のペルー南部とボリビア西部にまたがるチチカカ湖の湖畔で、世界遺産として有名な空中都市マチュ・ピチュを築いたインカ帝国の時代には、すでに主食としての栽培が開始されていたといわれています。

ヨーロッパに伝わったのは、スペインがインカ帝国に侵攻した西暦1530年頃で、伝わった当初は、宮殿に飾られる花など、観賞用の植物として親しまれていましたが、深刻な食料飢饉に悩まされていたドイツのフリードリヒ大王が食用としての栽培を奨励したことをきっかけに、ヨーロッパ全土での栽培がスタートしていきます。

日本に伝わったのは、インドネシアのジャカルタを拠点にしていたオランダ人が長崎に持ち込んだ1600年頃のことです。伝わってしばらくはヨーロッパ同様、観賞用の植物として親しまれていました。その後、北海道開拓が本格的にはじまった明治時代を迎えると、アンデス山脈の高原地帯を原産とする特性が北海道の気候・風土にうまく適合し、食用としての栽培が徐々に増加しました。

洋食の普及と共に、日本の家庭料理に取り入れられるようになると、九州や関東、東北を中心に、その栽培域が全国へと広がっていきました。しかし、広大な土地資源を有する北海道の様な大規模栽培を行う生産者は少なく、日本で生産されているじゃがいものおよそ8割が北海道で生産されている状況です。

参考

2020年じゃがいも生産ランキング

1位:北海道 173万2000トン(78.6%)

2位:鹿児島県 8万5400トン(3.9%)

3位:長崎県 8万4600トン(3.8%)

4位:茨城県 4万2100トン(1.9%)

5位:千葉県 2万8100トン(1.3%)

2)日本で栽培されているじゃがいも品種

日本では、主に以下の品種が栽培されています。

・男爵

ホクホクとした食感が特長の品種。コロッケやポテトサラダに向いているが、新芽が出るくぼみが深いため中心空洞ができやすい。

・メークィーン

細い長い楕円のような形をした品種。デンプン質が少ないため煮崩れが起こりにくい。

・キタアカリ

ホクホクとした食感と香りが特長の品種。耐湿性があるため水田からの転作に向いている。

・とうや

早生・大粒・多収穫が特長の比較的新しい品種。他の品種と比べてデンプン質が少ないため、ホクホクとした食感はあまり感じないがカロリーは低い。

・ベニアカリ

表皮が赤い種。栽培が簡単で男爵よりも多い収量が見込める。コロッケやお好み焼きなど、すりおろして使用する料理に向いている。

・インカの目覚め

6〜8度の糖度を誇る独特の風味が特長の品種。極早生だが収量が少ないのという難点がある。

・シンシア

フランスで育成された卵形の品種。中早生で芽が出にくいため長期間の貯蔵性にも耐えられる。

・北海こがね

メークインのような細い長い楕円のような形をした品種。油で揚げても変色が少ないためフライドポテトやポテトチップスで使用されることもある。

2.じゃがいも栽培のポイント

1)種芋の準備・芋切り

(1)一般的に種芋は大きいほど初期生育が良く、茎数が増え、数が多くなるといわれている。

(2)頂芽が優勢である頂部に目が必ず入るよう切り分ける。

(3)1片の大きさは40~60gに。

(4)腐敗を予防するために風通しのよい日陰で2~3日乾かす。

(5)切り口に石灰をつけるのも有効。

2)植え付け

(1)冷涼な気候を好むため、2月下旬~4月上旬に植え付ける。

(2)浅植えの方が出芽が早いが、乾燥畑では逆効果になる場合もある。

(3)種芋の腐敗を防ぐため切り口を下向きに。

(4)覆土は5~6cmを目安に。

(5)マルチ栽培の場合は8~10cmを目安に。

(6)畝幅は50~80cm程度。

(7)株間は30cm程度を目安に。

3)芽かき・土寄せ

(1)芽かきは植え付け後、芽が出てきてから。

(2)大きめの芽を2~3本程度残して、他の芽は根元からかき取る。

(3)畝と畝の間を耕す中耕作業で雑草の発生を防ぐ。

(4)中耕作業には、土壌水分を適度に保ち、肥料の分解を助け、根の発達を促進する効果もある。

(5)土寄せ作業で生育不良や変色を防ぐ。

(6)土寄せ作業は、畝の形の断面がカマボコ型になるよう、10cm以上の高さまで土をかぶせ、山と谷の差が20~25cm程度になるようにする。

4)収穫・貯蔵

(1)収穫は、出芽後80~100日くらいが目安。

(2)収穫作業は、茎葉が半分以上枯れた頃、土壌が乾燥している晴天の日に行う。

(3)掘り起こし後は、半日程度天日で乾かして付着している菌を殺菌、防除する。

(4)貯蔵は、5℃前後の風通しのよい日陰で。

(5)腐敗を防ぐため、収穫コンテナを重ねて保存したり、じゃがいもを袋に入れて保存したりしない。

3.潅水作業の注意点

じゃがいもは乾燥に強く湿気に弱い農作物です。そのため潅水作業は、自然の雨のみを基本に、降雨が極端に少ない時だけ行うようにしてください。

日本のじゃがいも生産者の中には、農作物の水やり作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用した潅水作業を行う生産者がいます。

潅水制御装置は、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで吸い上げた水を運ぶ「パイプ」、水源に含まれたゴミや汚れを除去する「ろ過フィルター」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」や「スプリンクラー」等で構成された農業用の設備で、露地栽培向けの装置とハウス栽培向けの装置の2種類があります。

潅水制御装置の中には、じゃがいも栽培に適した自然の雨に近い「散水潅水」と呼ばれる潅水作業を実行できる装置もありますので、干ばつなど降雨が極端に少ない場合には導入を検討してみるのもひとつの方法でしょう。

製品例

スミサンスイR露地ワイド

・露地栽培専用の潅水チューブ。

・最大10mの散水幅。

・100m先までムラ無く潅水。

・耐久性に優れた特殊黒色ポリエチレン製。

・敷設・収納・移動が簡単にできる専用の巻取機も用紙。

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/spray/sumi_sansui_r_roji_wide/

D-NET(Dネット)

・潅水制御先進国イスラエルのネタフィム社が開発した露地栽培向けのスプリンクラー。

・独自開発した3Dアーム・インパクトスプリンクラーDネットを使用して最大限の散水効果を発揮する。

https://www.netafim.jp/products-and-solutions/product-offering/sprinklers/d-net/

なお、当社が開発した「SenSprout Pro潅水制御システム」を使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

4.まとめ

じゃがいもは初心者でも栽培できる人気の農作物です。じゃがいも栽培で潅水作業を行う際には、ぜひこの記事を参考にしてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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