代表的な潅水機器・資材の比較と作物別の選び方

LINEで送る
Pocket

目次

1. 代表的な潅水機器・資材の比較

2. 作物別の潅水機器・資材の選び方

3. 規模に応じた潅水機器・資材の選び方

1. 代表的な潅水機器・資材の比較

最近では潅水装置を使った農業が一般的になり、水やり操作も自動のタイプや遠隔で簡単操作できるタイプなど年々進化してきました。ここでは、これから潅水装置を導入したい、潅水装置を最新のものに切り替えたい方向けに、代表的な機器・資材をご紹介します。

また、作物別や栽培規模別に選ぶことも重要ですので、潅水機器を選ぶ際のポイントとともに対応する潅水資材をご紹介します。

始めに、代表的な潅水機器・資材には下記があります。

・潅水制御装置

・操作盤

・電磁弁

・ろ過装置

・排水管

・潅水ホース

それぞれについて、比較できるように他社製品を取り上げていきます。

(1) 潅水制御装置

潅水制御装置とはその名の通り、潅水量やタイミングを制御する、潅水システム全体の心臓のような役割を持っています。センスプラウトの灌水制御装置は1台で4系統の電磁弁を個別制御することができ、遠隔で潅水の管理や設定が可能です。

専用の土壌水分センサーと連携させることでより水分量をチェックしながら遠隔で潅水制御が可能になります。一方、ゼロアグリの潅水制御装置は、1台で最大6系統の電磁弁を個別管理し、土壌水分と日射量から正確な潅水量とタイミングを割り出します。料金プランも異なりますので、ご自身に合ったプランを確認してください。

(2) 操作盤

操作盤とは、潅水時間や潅水量、電源操作を行う機器で、装置全体の働きを決めるものになります。先ほどご紹介したセンスプラウトとゼロアグリでは、操作盤の役割をスマートフォンやパソコンで代行することができるため、いつでもどこでも潅水制御が可能です。時期や作物の生育ステージに応じて潅水の設計を変更する必要があるため、重要な機器の一つです。

(3) 電磁弁

電磁弁は、地下や近くの農業用水路から水を吸い上げてろ過装置に流す時の動力となり、吸い上げる量も調整する役割があります。特に見ておくべきポイントは、製品の電圧や消費電力です。センスプラウトは電源電圧:AC100V又は AC200V、消費電力:15W、ゼロアグリは使用電圧:AC100V、消費電力:最大20Wと異なります。電磁弁の種類によってはろ過装置が一緒になったタイプもあります。

(4) ろ過装置

ろ過装置はその名の通り、水をきれいにするために排水管との間に設置する装置です。農業用水路は砂や草、ゴミなどの混入物があるので、作物の病虫害対策や圃場を清潔に保つことにも繋がります。オンラインショップで購入できるろ過装置は住化農業資材やサンホープの製品が代表的です。どれもフィルタータイプで定期的にフィルターの掃除、交換が必要です。

(5) 配水管、潅水ホース

配水管はろ過装置を通った水を圃場へ分配する役割があります。潅水ホースは、配水管に繋ぎ、さらに畝の間や土壌の中、株間などへ設置して、作物に水やりをする資材になります。配水管や潅水ホースもオンラインショップで購入できるものが多いですが、ろ過装置、配水管、潅水ホースは口径のサイズが同じかどうかを必ず確かめましょう。

また、配水管や潅水ホースはジョイント部分の手入れを行うことで、長期的に使用することができます。詳しい手入れ方法は下記を参考にしてください。

他にもスプリンクラーのノズルなど、潅水方法によって、ジョイントを交換することで対応します。

2. 作物別の潅水機器・資材の選び方

次にご紹介するのは、作物別の潅水機器・資材の選び方です。潅水機器・資材は、作物とその栽培方法によって選びます。潅水制御システムの中でも、特に潅水ホースが異なりますので、下記の切り口からホースを中心にご紹介します。

  1. 露地栽培の野菜(葉菜類、根菜類)
  2. ビニールハウス栽培の野菜
  3. マルチ栽培の野菜(葉菜類、根菜類、果菜類)
  4. 果樹栽培

(1) 露地栽培の野菜(葉菜類、根菜類)

露地栽培では、地表潅水が一般的な方法です。潅水機器・資材を選ぶ時のポイントとして、①ホースが高耐性素材であるかと②収納がしやすいかが重要になります。散水幅や精密な散水ができるかは、栽培方法や作物に限らず重要ですが、この2点は屋外で機器・資材を使用するため、選ぶときにチェックしたいポイントです。①の高耐性素材とは特殊ポリエチレンや加工が施されたもので、雨風にあたっても老朽化しない素材を選びましょう。②については、冬になると資材は収納するので、施工や収納がしやすいタイプを選びましょう。

(2) ビニールハウス栽培の野菜

ビニールハウスでは、葉物野菜の他にアスパラガスも栽培されます。ビニールハウスで用いられる潅水方法には、地表潅水、点滴潅水、頭上潅水があります。畝間にホースを設置して潅水する地表潅水や点滴潅水では、水が出る孔が開いたホースを用い、水圧によって潅水幅を調整します。頭上潅水は、ビニールハウスの高所にホースを設置するので、固定するための資材が必要になります。また、地表潅水のホースと違いミスト状に潅水を行うので、孔が細かいホースを選びます。

(3) マルチ栽培の野菜(葉菜類、根菜類、果菜類)

マルチ栽培では、マルチの下にホースを通して水平潅水を行います。散水時の葉への土はね防止にも繋がり、水が低く横方向に飛ぶように散水孔が設置されたホースを選びましょう。マルチ用ホースの代表的な製品は、「スミサンスイNEWマルチ60/100/100-03」で、散水孔のピッチも細かく設計され、高精度の散水ができます。

(4) 果樹栽培

果樹栽培では、潅水ホースが果樹の種類によって異なり、リンゴやモモに特化した「スミサンスイR横とび」やナシやブドウに特化した「ミストエース20果樹」などがあります。どちらも1~3mの散水幅があることが特徴で、ナシやブドウ用は果樹棚でホースを吊り上げられるように専用のハンガーを設置します。また、こちらも屋外で使用するので、特殊ポリエチレンなどの高耐性素材のタイプがおすすめです。

3. 規模に応じた潅水機器・資材の選び方

最後に規模に応じた潅水機器・資材の選び方についてです。まず、潅水制御装置は、複数のハウスを一括管理したい場合は、センスプラウトやゼロアグリのように電磁弁の系統が多いタイプが有効です。一方、育苗などで管理したい場所が一箇所の場合はサンホープのタイマー式潅水制御装置でもいいでしょう。また、1つの圃場面積が広くなくても圃場が点在している農家の方も多いと思います。そのような場合、潅水時間の度に圃場への移動時間がかかってしまいますので、遠隔で操作できる灌水制御装置の導入で効率化を図ることができます。潅水機器・資材の導入にはコストがかかりますので、全て自動が良いとも限らず、状況に応じて最適なものを選んでみてください。

Tags: | | | | | | | | | | | |