ブドウ栽培における潅水作業のポイントと注意点

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ブドウは爽やかな甘味とみずみずしい果汁が特徴の果物です。この記事では、ブドウ栽培における潅水作業のポイントと注意点について解説していきます。

目次

1.日本のブドウ栽培

2.ブドウ栽培の手順

3.潅水作業のポイントと注意点

4.まとめ

1.日本のブドウ栽培

1)ブドウ栽培の歴史

ブドウはブドウ科ブドウ属に属する果物です。

原産は西アジアと北アメリカで、「紀元前8000年の時代にはすでに食用として栽培がはじまっていた」といわれています。

日本に伝わったのは奈良時代の頃で、「東大寺の大仏造立に奔走した仏教僧である行基が、山梨県甲州市勝沼町にある柏尾山大善寺に行脚した際に栽培をはじめた」とする説が有力なようです。

注目すべきポイントは、私たち人間の健康に必要な栄養を多く含む点で、疲労回復や動脈硬化の予防、花粉症の緩和などの効果が確認されています。

※参考1

可食部100グラム当たりに含まれる栄養素の量

・エネルギー(59キロカロリー)

・水分(83.5グラム)

・たんぱく質(0.4グラム)

・脂質(0.1グラム)

・炭水化物(15.7グラム)

・灰分(0.3グラム)

・飽和脂肪酸(0.01グラム)

・不飽和脂肪酸(0.01グラム)

・食物繊維(0.5グラム)

・カロテン(21マイクログラム)

・ビタミンE(0.3ミリグラム)

・ビタミンB1(0.04ミリグラム)

・ビタミンB2(0.01ミリグラム)

・ナイアシン(0.1ミリグラム)

・ビタミンB6(0.04ミリグラム)

・葉酸(4マイクログラム)

・パントテン酸(0.1ミリグラム)

・ビタミンC(2ミリグラム)

・ナトリウム(1ミリグラム)

・カリウム(130ミリグラム)

・カルシウム(6ミリグラム)

・マグネシウム(6ミリグラム)

・リン(15ミリグラム)

・鉄(0.1ミリグラム)

現在の主な生産地は、山梨県、長野県、山形県、岡山県、福岡県で、国内生産量の約6割をこの5県で生産しています。

※参考2

2019年度都道府県別生産量ランキング

1位:山梨県(3万6900トン)

2位:長野県(3万1700トン)

3位:山形県(1万6400トン)

4位:岡山県(1万5800トン)

5位:福岡県(7640トン)

2)日本で栽培されているブドウの種類

黒色系

日本で最も多く生産されている種類。巨峰、紫玉、ピオーネ、藤稔、ブラックビート、高墨、ウインク、オーロラブラック、ブラックオリンピアなどの品種がある。

赤色系

皮全体が赤色になる種類。デラウェア、紅アレキ、ロザリオ・ロッソ、シナノスマイル、サニールージュ、サニードルチェ、紫苑、竜宝、安芸クイーン、紅伊豆などの品種がある。

黄緑色系

皮全体が黄緑色になる種類。シャインマスカット、白峰、瀬戸ジャイアンツ、ロザリオ・ビアンコ、黄玉、甲斐美嶺、翠峰、ナイアガラなどの品種がある。

2.ブドウ栽培の手順

圃場の準備・苗木の定植

(1)排水が悪い場合は、明渠や暗渠などをして対策する。

(2)秋頃になったら苗木を購入し、一晩水に浸け、給水させた後、仮植えする。

(3)10~11月または3月~4月になったら定植する。

(4)定植場所に直径0.8~1.5メートル、深さ30センチ位の穴を掘り、堆肥や苦土石灰、熔成リン肥料を入れて、よくかき混ぜる。

(5)苗木の接ぎ木部のテープを取り除き、接ぎ木部を15センチ以上地上に出して植え付ける。

(6)植え付け後は、苗木の太さに応じて30~50センチ程度に剪定し、支柱に固定する。

(7)水やりをする。

若木の管理

(1)(1年目)先端部の最も旺盛な新梢を支柱に誘引し、第1主枝候補として生育を促して管理する。

(2)(1年目)樹勢が強い場合は、副梢を利用して第2主枝候補を伸長させる。

(3)(2年目)2月中旬~3月上旬の時期になったら、発芽を促進するための芽傷を入れる。(芽の先5~10ミリ・深さ2ミリ・幅5~10ミリ)

(4)(2年目)主枝先端から発生した新梢を養成し、副梢を残す。(1~2枚)

(5)(2年目)樹形に応じて剪定を行い、棚面に主枝や結果母枝を誘引する。

(6)(3年目)2年目と同様の管理をしながら、主枝は伸長させ樹冠を拡大し、目標とする樹形が完成するように努める。

整枝・剪定

(1)厳冬期の整枝・剪定は避け、2月までには終わらせるようにする。

(2)長梢剪定を行う場合は、樹勢や枝の状態を観察し、結果母枝数や切り返し程度を調整する。

(3)短梢剪定を行う場合は、結果母枝の1~2芽を残して剪定するようにする。

(4)芽座がない場合は、前後の芽座の結果母枝を利用して新梢数を確保する。

新梢管理

(1)展葉が2~3枚生えたら不定芽・副芽を取り除く。

(2)展葉が6~8枚生えたら、特に強い新梢と弱い新梢を取り除く。

(3)花振い防止や果粒肥大促進のため、開花前の時期に入ったら、新梢の先端5ミリ程度を手でつまんで取り除く。

(4)新梢の長さが目標を超えたら先端を摘心していく。

(5)各節から伸長した副梢の葉は、1~2枚残して切除する。

(6)副梢から発生した二次副梢は基部から切除する。

果房管理

(1)形の良い果房を1房残し、それ以外の果房は穂梗の基から切除する。

(2)葉数10枚以下の弱い新梢は、すべての花穂を切除し空枝にする。

(3)花穂整形前の時期に入ったら、目標とする着房数よりも5割程度多い花穂を残すようにし、少しずつ調整していくようにする。

(4)副穂を切除して、主穂の房先3.5~4.0センチの花蕾のみ残し、他の花蕾は切除する。

(5)花穂先端が異常な場合は、副穂や上段の支梗を花穂整形して使用する。

摘粒・袋かけ

(1)目標果房重、目標果粒重に応じて着粒数を設定する。

(2)内向き果、小粒、奇形果、傷・さび果をハサミで間引き、適正な着粒数に調整する。

(3)晩腐病などを防ぐため、摘粒・摘房が終わったら、速やかに袋がけをする。

(4)日焼けの被害が多い場合には、傘かけも併用する。

収穫作業

(1)糖度18%以上・pH3.3以上になったら収穫適期。

(2)収穫作業は、早朝の気温が低い時間帯に行うようにする。

(3)手が果粒に触れないように丁寧に収穫する。

3.潅水作業のポイントと注意点

ブドウは過湿に弱い農作物です。

そのため、「夏の時期は朝夕2回」、「冬の時期は週1~2回」のペースで潅水作業を行っていけば基本的に問題はありません。

しかし、夏の時期に水分が不足すると、葉が傷み枯れてしまう可能性がありますので、水切れには十分に注意してください。

なお、日本のブドウを栽培する生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者がいます。

潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けとハウス栽培向けの2つがあります。

潅水制御装置の中にはブドウ栽培に適した資材も数多くありますので、ぜひ導入を検討してみてください。

また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。

家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

SenSprout Pro潅水制御システム

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

4.まとめ

ブドウは子どもから大人まで幅広い世代の人に親しまれる人気の果物です。

ブドウ栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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