いちご栽培における潅水作業のコツと注意点

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いちごはケーキやお菓子にも使われる人気の果物です。この記事では、いちご栽培における潅水作業のコツと注意点について解説していきます。

目次

1.日本のいちご栽培

2.日本で栽培されている品種の一例

3.いちご栽培のポイント

4.潅水作業のコツと注意点

5.まとめ

1.日本のいちご栽培

いちごはバラ科オランダイチゴ属に属する果実的野菜のひとつです。

元々はヨーロッパおよびアジアの各地域に自生していた野生種で、狩猟採集社会が形成されていた有史以前の時代には、すでに食べられていたと考えられています。

日本で栽培されている品種の祖先は、南アメリカ原産のチリ種と北アメリカ原産のバージニア種を交雑してつくられたもので、私たち人間の体に必要な栄養も多く含むことが分かっています。

参考(1)

可食部100グラム当たりに含まれる栄養素の量

・エネルギー(34キロカロリー)

・たんぱく質(0.9グラム)

・炭水化物(8.5グラム)

・カリウム(170ミリグラム)

・カルシウム(17ミリグラム)

・マグネシウム(13ミリグラム)

・鉄(0.3ミリグラム)

・ビタミンB1(0.03ミリグラム)

・ビタミンB2(0.02ミリグラム)

・葉酸(90マイクログラム)

・ビタミンC(62ミリグラム)

・食物繊維(1.4グラム)

現在の主な生産地は、栃木県、福岡県、熊本県、長崎県、静岡県、愛知県の6県で、国内生産量の約半分をこの6県で生産しています。

参考(2)

2020年度都道府県別生産ランキング

1位:栃木県(2万2700トン)

2位:福岡県(1万6400トン)

3位:熊本県(1万2200トン)

4位:長崎県(1万500トン)

5位:静岡県(1万400トン)

5位:愛知県(1万400トン)

2.日本で栽培されている品種の一例

・とちおとめ

栃木県農業試験場が育成した品種。1996に品種登録された。栃木県産いちごの大半を占める。

・あまおう

福岡県農業試験場が育成した品種。2005年に品種登録された。「あまおう」という名前は登録商標用のブランド名で、正式には「福岡S6号」という。

・紅ほっぺ

静岡県農業試験場が育成した品種。2002年に品種登録された。静岡県産いちごの中でトップの生産量を誇る。

・ゆうべに

熊本県農業研究センターが育成した品種。2015年に品種登録された。「ゆうべに」という名前は登録商標用のブランド名で、正式には「熊本VS03」という。

・ゆめのか

愛知県農業総合試験場が育成した品種。2007年に品種登録された。愛知県で生まれた品種だが長崎県の主要品種でもある。

・章姫(あきひめ)

静岡県のいちご農家が育成した品種。1992年に品種登録された。紅ほっぺの種子親でもある。

・初恋の香り(白いちご)

山梨県の種苗会社と福島県の育種者が共同開発した品種。2009年に「和田初こい」という名前で品種登録された。白いちごの先駆け。

3.いちご栽培のポイント

土耕栽培

土づくり

(1)定植の3週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約100グラム施して深く耕す。

(2)定植の1週間前に化成肥料を1平方メートル当たり約100グラム、堆肥を1平方メートル当たり約3キログラム施し再びよく耕す。

(3)幅60センチ(1条植)・120センチ(2条植)、高さ10~15センチの畝を整形する。

定植・栽培管理

(1)種苗店やホームセンターで販売されている苗を購入する。

(2)整形した畝に定植用の穴をやや浅めに掘る。株間30センチが目安。2条植の場合は列間も30センチにする。

(3)苗に水をたっぷり含ませる。

(4)ポットから苗を抜き、掘った穴に植える。

(5)水やりをして上から軽く押さえる。

(6)株の生育状態を確認し、必要であれば1~2回に分けて追肥する。1回目は根が活着した11月頃。2回目は冬越しした2月中旬頃。

(7)肥料を施し過ぎると根の活着が悪くなるので注意する。

(8)凍害を防ぐため農業用のビニールや寒冷紗、不織布を被せ保温する。(露地栽培のみ)

(9)いちごは、5℃以下の寒さに一定時間あたらないと花芽分化しないので、暖め過ぎに注意する。

(10)被せた農業用のビニールや寒冷紗、不織布を剥がす。

(11)黒色のマルチシートで畝全体を覆う。

わき芽

(12)暖かい時期に入り、葉がたくさん生えてきたら、古い葉と枯れた葉をこまめに取り除く。(葉かき)

(13)うどんこ病、灰色かび病、アブラムシ、ハダニなどの病害虫に注意する。

受粉・収穫作業

(1)開花から3~4日後の晴天の午前中に授粉させる。

(2)受粉は、柔らかい筆などを使用して、雄しべと雌しべをまんべんなく撫でるようにして行う。

(3)野鳥の被害が心配な場合は防鳥ネットを使用する。(露地栽培のみ)

(4)果実全体が真っ赤に色づいたら収穫する。

(5)親株から垂れている細長い茎(ランナー)の先にできた子株を切り取り、次の年の苗に利用する。

高設栽培(養液栽培)

設備の準備

(1)ハウス内に高さ1メートル程度の栽培ベンチを設置する。

(2)培養土、ピートモス、ヤシガラ、ロックウールなどを使用した専用の培地をセットする。

(3)水やり作業や施肥作業を実行する潅水制御装置など養液栽培に必要な設備を整える。

定植・栽培管理

(1)定植用の穴をやや浅めに掘る。株間は23~26センチ程度を目安に。(※平段方式の場合)

(2)苗に水をたっぷり含ませる。

(3)ポットから苗を抜き、掘った穴に植える。

(4)株元に潅水する。

(5)定植後3~5日は活着を促進させるため、十分な水分を与える。

(6)草に勢いを与え過ぎないよう、ハウス内の温度管理に気を付ける。

(7)頂花房の蕾が出たら、栽培ベンチをマルチシートで被覆する。

(8)第2花房の花芽分化を確認したら10日に1回のペースで追肥する。

(9)天井ビニールを被覆する。

(10)ハウス内の温度が高温になり過ぎないように注意する。

(11)古い葉や枯れた葉を取り除く。(葉かき)

(12)発根促進剤を使用して新葉の発生を促す。

受粉・収穫作業

(1)受粉は、柔らかい筆などを使用して、雄しべと雌しべをまんべんなく撫でるようにして行う。

(2)果実全体が真っ赤に色づいたら収穫する。

(3)親株から垂れている細長い茎(ランナー)の先にできた子株を切り取り、次の年の苗に利用する。

4.潅水作業のコツと注意点

いちごは、水はけが良い場所を好む農作物です。そのため、育苗期など定植する前の時期は十分な水分を必要としますが、その後は土が乾いてきたタイミングで潅水作業を行っていけば基本的に問題はありません。

しかし、気温が氷点下まで下がる冬の時期に乾燥した状態が長く続くと、回復ができないレベルまで株が弱ってしまう可能性が出てきますので十分に注意して下さい。

なお、日本のいちごを栽培する生産者の中には、少量多潅水と呼ばれる潅水方法を用いて水やり作業を行っている生産者がいます。

少量多潅水とは、少量の水を時間をかけて少しずつ与える潅水方法のことで、農作物のストレスを軽減する効果や病害虫の発生を抑える効果、収量を増やす効果などがあると言われています。

当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して潅水の量を遠隔から制御できるようになりますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。

SenSprout Pro潅水制御システム

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

5.まとめ

いちごは、子どもからお年寄りまで幅広い世代の人達に愛される人気の果物です。いちご栽培にチャレンジする際には、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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