かんしょ(さつまいも)栽培における潅水作業の注意点

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かんしょ(さつまいも)は、食物繊維やカリウム、ビタミンE、ビタミンB1など豊富な栄養素を含む人気の農作物です。この記事では、かんしょ(さつまいも)栽培における潅水作業の注意点について解説していきます。

目次

1.日本のかんしょ(さつまいも)栽培

2.かんしょ(さつまいも)栽培のポイント

3.潅水作業の注意点

4.まとめ

1.日本のかんしょ(さつまいも)栽培

1)かんしょ(さつまいも)栽培の歴史

かんしょ(さつまいも)は、は、ヒルガオ科サツマイモ属に属する根菜類の野菜です。

原産は、中央アメリカ・メキシコ中央部・グアテマラに位置する熱帯地域で、紀元前3000年頃の時代にはすでに食用としての栽培が始まっていたと言われています。

日本で栽培が始まったのは、中国→琉球(沖縄)→薩摩(鹿児島)ルートで伝わった西暦1600年頃で、伝わってしばらくは水はけの良い火山灰土壌を持つ九州南部(鹿児島・宮崎)でのみ栽培されていました。

しかし、痩せ地など農作物が育ちにくい環境でも栽培できる特性に目を付けた江戸幕府八代将軍・徳川吉宗(在職:1716年~1745年)が凶作時の救荒作物として儒学者の青木昆陽に試作を命じたことをきっかけに東日本でも栽培されるようになります。

現在の主な生産地は、鹿児島県、茨城県、千葉県、宮崎県、徳島県の5県で、日本で生産されるかんしょ(さつまいも)の5割以上を鹿児島県、茨城県の2県で生産している状況です。

・参考

都道府県別生産量ランキング

1位:鹿児島県(27万8300トン)

2位:茨城県(17万3600トン)

3位:千葉県(9万9800トン)

4位:宮崎県(9万300トン)

5位:徳島県(2万8000トン)

※農林水産省「2018年作物統計」参照

ちなみに、名称は薩摩の芋を意味する「さつまいも」を使用するのが一般的ですが、正式な農業統計や作況調査では中国の植物名で甘味のある芋を意味する「かんしょ(甘藷)」と表記することが多いようです。

2)日本で栽培されている主な品種

・黄金千貫(2019年国内生産シェア率22.1%)

九州農業試験場で育成した品種。乾燥した温かい場所で収穫したものが黄金色になっていたことからこの名が付いた。芋焼酎の原料としても有名。

・紅はるか(2019年国内生産シェア率15.4%)

2010年3月に品種登録された新しい品種。糖度が高く焼き芋や蒸し芋に向いているのが特徴。収穫2~3週間後が食べ頃。

・紅あずま(2019年国内生産シェア率13.0%)

関東で人気の高い品種。紫色が入った濃い赤色の表皮か特徴。果肉の色が黄色で繊維質が少なく甘味がある。

・高系14号(2019年国内生産シェア率10.5%)

高知県の農事試験場で育成した品種。肥大性に優れ、早掘りできる事で有名。貯蔵性が高く加工品にも使用される。

・シロユタカ(2019年国内生産シェア率9.4%)

でんぷんの原料用として開発した品種。白色の表皮が特長で甘味が少ない。「豊かな収穫を呼ぶ白いいも」という願いからこの名が付いた。

2.かんしょ(さつまいも)栽培のポイント

苗の準備と植え付け

(1)植え付け2週間前に苦土石灰を1平方メートル当たり約100グラム施してよく耕す。(pH値が6.0以上ある場合は行わない)

(2)植え付け1週間前に堆肥を1平方メートル当たり約2キログラム、米ぬかを1平方メートル当たり約100グラム、チッ素分の少ない専用肥料を1平方メートル当たり約100グラム施す。

(3)痩せた土壌を好むため肥料のやり過ぎに注意する。

(4)幅50センチ高さ20〜30センチの高畝を整形する。

(5)苗を準備する。

(6)ウィルスフリー苗と呼ばれるポット苗を購入して大きめの鉢に植え替えて準備する方法もあるが、市販されている苗を購入するのが一般的。

(7)茎が太く、節が7~8つあるものを選ぶ。

(8)畝に苗を30センチ間隔で並べる。

(9)各節の葉が外に出るよう根から2~3節を土中に埋め込んで植え付ける。(切り口に近い根から2~3節ところが最も塊根を付けやすいため)

(10)塊根の数が多くなる「水平植え」、活着しやすい「斜め植え」、塊根が大きくなる「垂直植え」の3つの方法がある。

(11)一般的なのは「水平植え」。

(12)「水平植え」の場合は深さ5~10センチの溝を掘る。

(13)水やりを十分に行う。

(14)生育初期の地温確保や雑草、病害虫の発生に不安がある場合にはマルチ栽培を取り入れる。

栽培管理

(1)つるが繁茂して畑全体を覆うまでは(植え付け後1か月後程度)は除草作業をしっかり行う。

(2)追肥は基本的に行わない。

収穫作業・貯蔵

(1)つるを鎌で刈り取る。

(2)つる刈り機と呼ばれる専用の機械を使用するとラク。

(3)マルチ栽培の場合はマルチシートを剥がす。

(4)株の周囲をスコップや専用の鍬で掘り起こし手で引き抜く。

(5)堀取り機と呼ばれる専用の機械を使用するとラク。

(6)堀取り機には歩行型と乗用型の2種類がある。

(7)収穫した後は泥を落とし3~5日程度陰干しする。(甘みが増すため)

(8)貯蔵の適温は13~15℃。

(9)5℃以下になると低温障害を起こすため、冷蔵庫を使用した貯蔵は避ける。

3.潅水作業の注意点

かんしょ(さつまいも)は乾燥に強く水はけの良い土壌を好む農作物です。

そのため、植え付け直後の時期は十分な潅水作業を行う必要がありますが、その後は潅水作業を行う必要は基本的にありません。

しかし、砂地栽培を対象に行った農業研究では土壌水分の変化が収量や品質に大きな影響を及ぼすことが分かっています。

この研究は、土壌の保水性を表す数値である土壌pFの値の変化に着目したもので、定植からの日数に応じた土壌pFの管理が収量や品質の向上に大きく関係することを示す重要なデータを報告しています。

砂地栽培における土壌pFの適正値

・定植から40日(1.5~1.8)

・定植から41~80日(1.8~2.0)

・定植から81~120日(2.0~2.5)

高収量・高品質なかんしょ(さつまいも)栽培を実現する大きなヒントになる可能性があるかもしれませんので、関心のある方はこれらのデータを参考に栽培を行ってみるのもおもしろいかと思います。

・参考資料

「砂地畑における土壌水分の推移がサツマイモの収量 および品質に及ぼす影響」

http://www.unity-design.jp/blog/wp-content/uploads/2016/05/1301650219918f61553c2b1f4bea77b8.pdf

なお、当社が開発したSenSprout Proセンサーシステムを使用すれば、PCやスマートフォンを利用して、土壌に含まれる水分量や地表面の温度を遠隔から測定・記録することができるようになります。

土壌水分の変化を通知するアラーム機能やデータをグラフ化する機能も備えていますので興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

SenSprout Proセンサーシステム

4.まとめ

かんしょ(さつまいも)は、私たち日本人の食生活に深く根付いた農作物です。最近では東京などの大都市に焼き芋の専門店がオープンするなど、ダイエットや健康への関心が高い若者を中心にその人気が再燃しています。かんしょ(さつまいも)栽培にチャレジする際には、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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