ビニールハウスに潅水制御機器を導入する際の費用

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自動潅水制御機器の登場により、ビニールハウス栽培における潅水作業は効率化が大きく進んでいます。設定しておくだけで自動的に潅水してくれるため、作業の手間が大幅に省けるからです。上手く使うことで、規模拡大や収益アップにもつながりますね。

しかし、実際に潅水設備を導入するとしたら、どれくらいの費用が必要なのでしょうか。

今回は、ビニールハウス1棟に潅水設備を導入する際に必要な費用の目安について紹介します。また「低コスト技術」として、農林水産省にも取り上げられている潅水設備についても紹介します。

潅水設備に興味があって、新しく導入したいという方に最適です。

目次

1.ビニールハウス栽培で必要な潅水設備

2.潅水設備の導入に必要な費用の目安

3.製品の紹介

4.まとめ

1. ビニールハウス栽培で必要な潅水設備

潅水設備を導入する費用を紹介する前に、まずは潅水設備にはどのような資材があるのか、整理していきましょう。一般的にビニールハウス栽培には、養液土耕栽培と養液栽培の2種類があります。養液土耕栽培とは潅水と施肥を同時に行う栽培方法で、土に植えた作物に的確なタイミングと量による施肥潅水を行います。

一方で養液栽培は、土の代わりにロックウールやココピートといった培地を用います。水耕栽培も養液栽培の1つの方法です。土壌病害などを防ぎ、効率化を高めるメリットがありますが、人工培地などが必要な分、設備投資が大きいというデメリットもあります。

養液栽培は必要な資材が多く費用がかさむため、今回はよりシンプルな養液土耕栽培を導入する際の費用について整理したいと思います。

養液土耕栽培に必要な潅水設備を挙げると、以下のようになります。

・原水装置(井戸水ポンプ、原水タンク、濾過装置、フィルター)

・潅水ポンプ

・潅水チューブ

・液肥混入器

・制御装置(センサー、電磁弁、コントローラー)

・その他(バルブ、塩ビパイプなど)

それぞれの潅水設備について説明していきます。

まずは水源から取水する必要があります。取水に必要なのは井戸水ポンプです。水道水を使う場合は必要ありませんが、ビニールハウス栽培では井戸や農業用水を水源として用いることが多いため、井戸水ポンプとしました。農業用水を水源として使う場合は、農業用水用のポンプを使います。

取水された水は一旦原水タンクに貯水されます。小さなものは100L、大きなものだと5,000L以上のものがありますが、ハウス1棟を管理する場合は1,000L以上のものを選びましょう。

原水タンクに貯水された水は、灌水ポンプを通して液肥混入器に送られます。灌水ポンプは栽培面積に応じた流量を目安に選びましょう。

液肥混入器に送水する際には、目詰まり防止のための潅水設備も必要です。一度目詰まりを起こしてしまうと、解消には手間と費用がかかるだけでなく、作物の生育に大きな影響が出てしまいますからね。フィルターや濾過装置を設置して、定期的にメンテナンスしましょう。また、原水に鉄やマンガンなどの詰まりの原因となる物質が多く含まれている場合は、水質改善機器が必要になる場合もあります。原水については、潅水設備を導入する前に水質調査をしておくことをおすすめします。

さて、原水装置を通過した水は液肥混入器で液肥と混ざります。そして、潅水チューブを通って作物に与えられます。このとき、潅水のオンオフや系統の変更のためにバルブや電磁弁、流量計が必要となってきます。さらに、それらの動作を制御するコントローラーを取り付けます。

コントローラーにはいくつかの種類があります。

・タイマー制御式:タイマーで潅水開始時刻と潅水時間を設定する

・日射比例制御式:積算日射量を目安に潅水を制御する

・多系統制御式:1台の潅水装置で2つ以上の多系統を順番に制御する

・AI制御式:土壌水分やハウス内の気温、湿度などのデータを基に潅水を制御する

これらの他に、各機器を接続する部品が必要です。

以上が、養液土耕栽培に必要な潅水設備です。

2. 潅水設備の導入に必要な費用の目安

養液土耕栽培に必要な潅水設備を踏まえたうえで、導入する際の費用について紹介します。

基本的に、ハウス1棟に潅水設備を導入する場合は、30万~100万円の費用が必要です。費用の幅が大きいのは、メーカーや製品ごとに価格が異なるためです。一般的な目安としては、50万円前後と認識しておけばよいでしょう。

また、ビニールハウスの規模によっても多少変わってきます。例えば、奥行が50mのビニールハウスと100mのビニールハウスでは、潅水チューブの長さや原水タンクの容量、潅水ポンプの水圧などが違います。

ただし、今回紹介した50万円前後という費用は、水源がすでに確保されている場合の費用です。新しく井戸を掘る場合は別途費用がかかってきますので、そこは注意しておきましょう。浅井戸と深井戸によって工事費・設備費等異なりますが、潅水設備を合わせて100万円程度が必要となるでしょう。

3. 製品の紹介

ビニールハウス1棟に潅水設備を導入する際の費用が分かったところで、具体的な製品を紹介したいと思います。今回紹介するのは農林水産省のホームページに「農業用温室の設置コスト低減に向けた取組」として紹介されているものです。取り上げられている十数個の中から、3つピックアップして紹介します。潅水設備一式ではなく潅水制御装置がメインですが、あくまで参考になればと思います。

・株式会社ソフトウェア研究所「自動潅水装置「EBスプリンクラー」」

https://www.swl.co.jp/product/

電源がない場所でも利用できる潅水制御装置です。日射量や土壌水分量に応じて自動で潅水してくれる点が魅力で、少量多潅水による管理を可能にします。他にもタイマーや手動による潅水も可能で、原水と2つの養液を混ぜた養液土耕栽培にも対応しています。ソーラーパネルからの給電も可能で、電源のない場所でも使用することができます。価格は、圃場に電源がある場合は60万円~、ソーラーパネルを使用する場合は85万円~となっています。

・渡辺パイプ株式会社グリーン事業部「ウルトラエースK」

https://www.sedia-green.co.jp/product/facility/utak.html

日射比例制御ができる潅水制御機器です。クラウドシステムに潅水データの蓄積ができたり、PC・スマホからの遠隔操作ができたりすることもポイント。ビニールハウスに行く回数が減るため、省力化につながる製品です。価格は制御する系統の数によって異なり、4系統だと22万円、8系統だと40万円となっています。どちらの系統数でも、一般的な製品に比べると20%ほど価格が抑えられています。

・JAいわてグループ「うぃずOne」

https://www.jaiwate.or.jp/shin-iwate/wp-content/uploads/2020/06/jiko-kaikaku1810.pdf

こちらは養液栽培向けに開発された製品で、液肥混入器・コントローラー・潅水資材・肥料・栽培槽・培土がセットになっています。電気工事不要、自主施工可能などによって施工費・ランニングコストの低減を実現しています。価格は10aあたり150万円程度ですが、初期投資の必要な養液栽培としてはお得な価格です。

4. まとめ

ビニールハウス1棟に潅水設備を導入する際の目安となる費用を紹介しました。ビニールハウスの大きさや栽培する作物・方法によって幅はありますが、50万円という金額が1つの目安と考えておくとよいでしょう。

最先端の機器を導入する場合はもっと多くの費用が必要ですが、自分のやりたい規模やワークライフバランスを考えて、自分に合ったものを選びましょう。 潅水設備を導入する際は、必ずメーカーや先輩農家さんに相談してみましょうね。

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