ピーマン栽培における潅水作業のポイントと注意点

LINEで送る
Pocket

ピーマンは、ビタミンCやカロテンなど美容や健康に効果がある栄養を多く含む人気の農作物です。この記事では、ピーマン栽培における潅水作業のポイントと注意点について解説していきます。

目次

1. 日本のピーマン栽培

2.ピーマン栽培の手順

3.潅水作業のポイントと注意点

4.まとめ

1.日本のピーマン栽培

1)ピーマン栽培の歴史

ピーマンはナス科トウガラシ属に属する果菜類の野菜です。

原産は熱帯アメリカで、アメリカ大陸を発見したコロンブスがスペインに持ち帰ったことをきっかけに栽培が始まったと言われています。

日本に伝わったのは、南蛮貿易が栄えた16世紀頃で、伝わった当初は現在のトウガラシに近いものでしたが、明治時代を迎える頃になると、辛みの無い品種が持ち込まれるようになります。

日本でピーマン栽培が普及したのは、高度経済成長期を迎えた1960年代以降で、当時はまだトウガラシの一品種として数えられていましたが、1964年の農林統計からはトウガラシとは別にその名が記載されるようになります。

現在の主な生産地は、茨城県、宮崎県、高知県、鹿児島県、岩手県の5県で、日本で生産されるピーマンの約4割を茨城県と宮崎県の2県で生産しています。

参考

2020年度都道府県別ピーマン生産量ランキング

1位:茨城県(3万2500トン)

2位:宮崎県(2万6800トン)

3位:高知県(1万3000トン)

4位:鹿児島県(1万1800トン)

5位:岩手県(8230トン)

2)日本で栽培されている品種の一例

シシ型

・京みどり

濃い緑色をした縦長の品種。豊産性が高く家庭菜園にも向いている。ツヤツヤとした表面が特長。

・エース

やや長めの形をした品種。収穫量が多いことで有名。シャキシャキとした食感が特長。

・京まつり

濃い深緑色をした品種。秀シワやヘコみが起きにくく秀品率が高い。ハウス栽培にも向いている。

・ニューエース

家庭菜園向けの極早生品種。少しだけ大きく横に広がった形が特長。品質・味ともに良好。

・さらら

宮崎県で多く栽培されている品種。ビタミンCが多く苦味が少ない。栄養機能食品にも登録されている。

・京波

耐暑性に優れた品種。乾燥や病気に強い?家庭菜園で多く栽培されているが市場での流通は少ない。

・京ひかり

全国で栽培できる品種。成長中に起こる黒あざが発生しにくい。「兵庫県認定食品」の認証も受けている。

・伊勢ピーマン

中型サイズの品種。果揃いが良く気温の変化にも強いため家庭菜園に向いている。

・赤ピーマン

緑色のピーマンを完熟させたもの。パプリカとは異なる。収穫適期は開花から60日後程度。

・浜ニュークリーム

クリーム色をした品種。青臭さや苦味が少ないためサラダなど生食にも向いている。育て方は通常のピーマンと同じ。

・浜クロピー

濃い黒紫色をした品種。直売所など産地では販売しているが市場には流通していない。炒めると深緑色に変色する。

・ホワイトピーマン

白色の品種。甘みある食感が特長で生のまま食べてもおいしい。大きさは一般的なピーマンと同じ。

・カラーピーマン

赤やオレンジ、黄色などカラフルな色が特長の品種。カラフルな外観と噛み応えある食感が食卓を彩る。

ホルン型

・こどもピーマン

甘味種の品種。苦味成分が通常の10分の1程度しか含まれていないためピーマンが苦手な子どもでも安心して食べられる。

・よさこいハニー

高知県で栽培されている品種。ししとうとパプリカを交配したもの。大きなトウガラシのような形をしている。

ベル型

・サラダピーマン

白色、オレンジ色、赤色、黄色、紫色などカラフルな色が特長の品種。パプリカと似ているがそれとは異なる。サラダなど生食に向いている。

・ちぐさ

半世紀前から存在する古い品種。果肉が肉厚で噛み応えがある。やや大き目のサイズが特長。

2.ピーマン栽培の手順

種まき・育苗管理

(1)苗箱に土を入れ、深さ1センチの溝を8センチ間隙で堀り、種を5ミリ間隔で条まきする。

(2)5ミリ程度の高さで覆土して水やりをする。

(3)苗箱をトンネル型のビニールハウスに入れ保温する(25~30℃位)

(4)発芽したら夜間のみビニールハウスの温度が25℃程度を保つように管理する。

(5)発芽後に芽が込んできたら1~2センチ間隔で間引く。

(6)本葉が2枚生えたらポット(10.5~12cm)に移植して、夜温のみ20℃程度を保つように管理する。

(7)定植適期は本葉13~14枚、一番花が咲き始めた頃。

土づくり・定植

(1)定植2週間以上前に苦土石灰を約150グラム(1平方メートル当たり)施して深く耕す。

(2)定植1週間前に化成肥料を約150グラム(1平方メートル当たり)、過リン酸石灰を約30グラム(1平方メートル当たり)、堆肥を3~4キログラム(1平方メートル当たり)を施して再度耕す。

(3)幅70センチの平高畝をつくる。

(4)黒色のマルチシートで畝を覆う。

(5)畝の中心に株間50センチの穴を掘る。

(6)苗を植えたポットに水をたっぷり含ませる。

(7)ポットから苗を抜き掘った穴に植える。

(8)支柱を立てて誘引する。

(9)根元に水やりをする。

栽培管理

(1)主枝1本と一番花の下から出た側枝2本を残し3本立てに整枝する。

(2)定植2~3週間後にマルチシートをめくり土と混ぜるよう軽く耕してから1回目の追肥を行う。(化成肥料を両側の肩部に)

(3)マルチシートを元に戻す。

(4)その後2~3週間おきに追肥を行う。

(5)アブラムシ、ヨトウムシ、タバコガ、モザイク病などの病害虫の発生に注意する。

(6)モザイク病などウイルス性の病気に罹ってしまった場合は他に感染しないよう抜き取って廃棄する。

収穫作業

(1)実が多く着果し過ぎた場合は若採りして株の負担を軽くする。

(2)収穫適期は開花後25日前後。

(3)赤ピーマンなどカラフルな品種は開花後55~60日前後まで待つ。

(4)枝が折れやすいためハサミを使用して収穫する。

3.潅水作業のポイントと注意点

ピーマンは乾燥にも多湿にも弱い農作物です。

そのため、種まき・育苗・定植の時期には十分な潅水が必要ですが、その後は朝夕2回と土の表面が乾いてきたタイミングで株元に潅水を行えば基本的に問題はありません。

しかし、潅水時に泥の跳ね返りがあると病害虫の発生を招いてしまう恐れがありますので、水の勢いには十分に注意しましょう。

なお、日本のピーマン生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置を利用している生産者もいます。

潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けの設備とハウス栽培向けの設備の2種類があります。

潅水制御装置の中には、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムなどインターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるシステムもありますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

SenSprout Pro潅水制御システム

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

4.まとめ

ピーマンは、私たちの食卓を彩る人気の野菜です。ピーマン栽培にチャレンジする際には、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

Tags: | | | | | | | |