株式会社KARATSU TACHIBANA 代表取締役 上野 勉様

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株式会社KARATSU TACHIBANAについて

株式会社KARATSU TACHIBANAの代表取締役でもあり、全国農業青年クラブ連絡協議会の副会長でもある上野 勉様。温州みかんの代表的な品種である「上野早生」を生み出した発祥の家系である過去と未来を繋ぐ生産者の申し子と言われています。
そんな上野社長にインタビューさせていただきました。

株式会社KARATSU TACHIBANA
代表取締役 上野 勉様

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAの創立は何年ですか?

A、創立は2019年の1月です。今期で3期目になります。

Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。

A、両親と私の3人が役員、社員が2人、パートさんが3人です。

Q、上野社長が農業を始められたきっかけを教えて下さい。

A、実家がみかん農家で、私で3代目になります。幼いころから畑で遊んでいました。農業を始めた理由は2つです。1つは両親が農業に対してネガティブなことを言ったことがなく、すばらしい職業だと幼いころから教えてくれたことです。2つ目は、祖父が私を周りの方に紹介するときに、「孫」ではなく「跡取り」として紹介していたことです。こうしたことで、自然と自分の中でみかん農家になることを刷り込まれました。だから小学生の頃から私はみかん農家になると思っていました。

Q、上野社長の経歴を教えて下さい。

A、地元の高校を卒業した後に、長崎県の島原半島にあるみかんの研究所、現在の農研機構で2年間研修を受けてから、実家の上野農園に就農しました。研修は全寮制で、全国のみかん農家の跡取りと共に生活しました。

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAの栽培作物を教えて下さい。

A、施設柑橘を栽培していて、メインはビニールハウスのみかん・レモン・デコポンです。

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAの栽培面積を教えて下さい。

A、ビニールハウスの面積が4ha、露地栽培が0.5ha、計4.5haです。園地数(ビニールハウスの棟数)は32園地です。

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAが農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。

A、ありません。

Q上野社長が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?

A、生産管理と人材育成です。

Q、その理由をおしえてください。

A、昨年から全国の農家さんを訪問させてもらっている中で、とてもレベルの高い柑橘を栽培されている方々に出会いました。その高いレベルを、いかに我々の園地で再現できるか考えているため、生産管理が気になっています。また、今後規模拡大をしていくうえで人材を増やしていく必要があるので、人材育成も気がかりです。

販売はJAさんにお願いしているので、そこまで心配していません。

株式会社KARATSU TACHIBANAの人材育成について

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAの平均勤続年数はどのくらいですか?

A、社員2人の勤続年数は2年と3年です。

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAの従業員の年齢はおいくつですか?

A、26歳と35歳です。

Q、人材育成は上手く行っていますか?

A、上手くいっている部分もありますし、上手くいっていない部分もあります。

Q、その理由をおしえてください。

A、上手くいっている部分は、離職者がいないことです。社員の2人は最初に雇用した方と、その次に雇用した方です。反対に上手くいっていない部分は、作業ばかりで植物のことを勉強する時間がとれないことです。その時間をどう作るかが、今1番課題に感じていることです。この課題を解決するために、少ない時間の中でどのように効率化して時間を生むか、常に社員と考えています。我々は作業することが仕事ではなくて、より効率を上げる方法を考えることが仕事だという認識を持っています。

Q、人材募集は行っていますか?

A、しています。

Q、人材募集はどのような方法で行っていますか?

A、ハローワークに求人を出しているのと、周りの方に「人材を募集しています」と常に声を掛けるようにしています。現在の社員2人は縁故で採用したためです。農業系の求人サイトは使っていません。

Q、人材採用で苦労されている点について教えて下さい。

A、「農業がしたい」という思いを持った人に入ってきてほしいです。そんな人とどう知り合うかが、今苦労していることです。

株式会社KARATSU TACHIBANAの農業生産について

Q、農業生産において最も苦労された点について教えて下さい。

A、弊社は施設柑橘栽培を営んでいるので、統合環境制御技術に取り組んでいます。しかし、施設柑橘栽培で環境制御を取り入れた前例が全くない中で、トマトやきゅうりの事例を聞いて、私の栽培方法に合わせて柑橘に変換する作業に苦労しました。

Q、どのようにして解決されたか教えて下さい。

A、環境制御技術はトマト農家さんや果菜類の農家さんに、みかんの栽培は地域の篤農家(とくのうか)さんに聞きました。そこで得た知識を前提に自分たちなりに仮説をもって、解決に取り組んでいるところです。

Q、農業生産において独自で工夫されていることはありますか?

A、今まで感覚的な言葉で伝えていたことを、いかに科学的に伝えるかということに気を付けています。そして、社員との共通言語を持つようにしています。このきっかけは、篤農家さんと話す機会が多かったからです。篤農家さんの多くは、ニュアンスや感覚的な言葉を使います。これをいかにして社員に伝えるか、悩んだ時期がありました。私はみかん農家だからわかりますが、みかん農家ではない社員には感覚的な言葉だと伝わりませんからね。農業者以外にもわかる言葉に変換するべきだと思いながら、改善していきました。

Q、現在、農業生産において困っていることはありますか?

A、1つ目は水管理で、地下部の見えないものをどう可視化するかということです。

2つ目は、みかんは年に1回しか栽培できず、結果が出るまでに時間がかかることです。だから試験区を作って、試験の回数を増やして解決しようとしています。弊社だけではなくて、地域や他県で同じような考え方を持っている人たちと情報共有して、みんなで試験して知見を集める取り組みをしています。

株式会社KARATSU TACHIBANAの販売戦略について

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAの販売先はどちらですか?

A、JA唐津に販売しています。

Q、株式会社KARATSU TACHIBANAは直販されていますか?

A、はい。昨年から食べチョクさんに登録して、通信販売を始めました。昨年は夏レモンを出品したことで、かなり売れました。私はおいしければ売れると思っていましたが、手にとってもらわないと売れないということに気づきました。おそらくみかんやデコポンを出品していたら、ここまで売れなかったと思います。棚に同じようなものが100個以上並んでいるようなものなので、弊社のみかん・デコポンを手に取ってもらえる確率は低いでしょう。でも、夏レモンは競合がいなかったので手に取ってもらいやすく、結果としてよく売れました。

Q、販売戦略において苦労されていることはありますか?

A、商談の資料にどんな情報を載せればいいのか、経験がないので苦労しました。あとは、陳列棚の価格が設定されているときに、いくらで納品すれば設定価格になるのか、仲卸さんたちの粗利の計算方法がわからず苦労しました。

Q、販売戦略において工夫されていることはありますか?

A、業界のこと・現場のことを知るようにしています。例えば、スーパーに行って商品の品質や値段を見て、必要であれば市場に1週間立って物の流れを見るようにしています。農場の情報はみなさん見ていますが、その先の流通に関しては、農業者でも見たことある人は少ないと思います。私も見たことがなかったので、市場に行ってバイヤーさんの仕事を知ることから始めました。

上野社長が目指す農業の未来

Q、上野社長が副会長を務める4Hクラブの概要について教えて下さい。

A、4Hクラブの概要正式名称は全国農業青年クラブ連絡協議会といいます。全国に市町村多いんいでクラブがあって、よりよい日本・よりよい農村を作るために、以下の4つの信条を掲げて活動しています。

・ハンド(Hand):腕を磨く

・ヘッド(Head):物事を科学的に考える

・ハート(Heart):友情に富む心を育む

・ヘルス(Health):健康にすごす

Q、4Hクラブの活動について教えて下さい。

A、全国大会として事例発表会をしていますが、コロナ禍で集まることが難しい状況です。そのため、昨年は初めてオンラインで開催しました。今年はいかにオンラインでみんなと上手く交流するか、みんなで挑戦しようと思っています。

Q、今後の展開について考えていることを教えて下さい。

A、弊社では10年ビジョンを掲げていて、その中には観光農園や都市近郊での生産などが含まれています。中でも我々のビジョンの本質は、若くて農業や植物に興味のある人たちが力を出せる職場を作るということです。私は3年前、佐賀大学農学部の夜間コースに通っていました。そこで学生と話していると、若い人は農業に魅力を感じて働きたいと思っているけど、農業界には働ける場所がないことに気づきました。作業員として働く場所はありますが、社会をよりよくするため、よりよい栽培技術を考えるための場所はあまりないと思います。農業界で働きたくても、実際は行政の普及員や民間の種苗会社に就職してしまいます。だから私は「ラボ」を作りたいと思っています。生産現場と大学の研究室のようなところが近い距離で意見を出し合って、日本の農業の発展を目指すようなラボです。その集団の中に、弊社を位置付けたいと考えています。作業としての農業ではなく、他の関わり方もできる会社にしていきたいです。研究開発は企業にとっては当たり前ですが、農業にはその考えがあまりありません。大学などに研究予算を払えるような農業法人になりたいですね。

Q、上野社長が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。

A、今後の農業のテーマは「持続可能な農業」だと思います。私たちは施設栽培なので、燃料として重油を使います。でもエネルギー問題があるから、人間が電気をやめてロウソクで生活するようになるかというと、そんなことはありません。今あるものの中でいかに効率よく作るかということが求められていると、私は思っています。だから、重油の使用量に対して、どれだけ植物を生産できるか考えるようにしています。今後の農業では、生産効率の良さが求められるのではないかと思っています。これは、オランダでの経験がきっかけです。オランダは水資源が貴重な国です。3年前オランダに行ったとき、「水1Lでどれだけのトマトを作ったか」という話をされました。この流れは、いずれ日本にもやってくると思います。

Q、上野社長から若手農家へひとことお願いします。

A、農業は大変な部分もありますが、やったことに対して植物が応えてくれる、やりがいのある仕事だと思います。今後、間違いなく農業は日本の花形産業になると思いますし、我々もしていこうと思っています。意欲がある方は、ぜひ農業に関係のある職業に就いていただければいいなと思います。今は農業法人がインターンシップの情報を公開しています。農業をしたいと思ったら、インターンシップに参加してみてはどうでしょうか。また、地方の方は近所の農家さんに話を聞いてみてください。まずは人の話を聞いてみることから始めるのがいいと思います。

インタビューを終えて

温州みかんといえば、かつて果物作付面積・出荷量ともに果物ナンバーワンの品種でした。

しかし、現在ではその落ち込みも激しく面積に至ってはピーク時の1/4になっています。

そんな中、いち早く環境制御を取り入れ、試行錯誤しながらみかんの収量を上げ、ハウスみかん生産に活路を見出した上野社長。

『日本の農業には未来しかない!』その言葉には、自身の経験と若手生産者とのつながりから感じた確かな手ごたえがあってこそだと思います。 若手生産者を代表する存在として今後の活躍にも注目です。