水分センサーの中には、土壌に含まれる水分量だけではなく、肥料や塩分濃度を示すEC値(電気伝導度)を計測できる製品もあります。この記事では、水分センサーを使用したEC値の計測と土壌づくりにおける作物別の基準値を紹介します。
目次
1.EC値(電気伝導度)とは
2.水分センサーを使用したEC値の計測
3.作物別の基準値
4.まとめ
1.EC値(電気伝導度)とは
EC値とは、土壌中に含まれる肥料成分や塩分濃度を示したものです。
EC値が0.3㎳/㎝以下を示す場合は施肥量を増やし、1.0㎳/㎝以上を示す場合は施肥量を減らすのが良いとされています。
2.水分センサーを使用したEC値の計測
水分センサーの中には、土壌に含まれる水分値だけでなくEC値を計測する製品もあります。
使用方法は、メーカーや製品によって異なりますが、センサー部を傷つけないように埋没して使用するのは共通です。
埋没する深さは、キャベツやレタス等の葉物類が約10cm程度、トマトやなす等の果菜類が約20cm程度で、センサー部と土壌の間に隙間をつくらないように使用することがポイントです。
埋没後は、土壌の表面を強い力で押し付けたり、固めたりしないよう十分に注意してください。
3.作物別の基準値
農林水産省では、農作物の土壌づくりに必要な基準値を示した資料を「土壌づくりの手引き」として公開しています。
「土壌づくりの手引き」には、土壌づくりに必要な成分や条件の基準値が作物別に記載されています。以下は、その内容の一部となります。
1)きゅうり
・土壌EC値(㎳/㎝):砂土0.3~0.5/砂壌土0.5~0.6/腐植質植土0.8~1.0
・作土の厚さ(㎝):30以上
・有効根群域の深さ(㎝):40以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):55以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:5.7~7.2
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):220~280
・置換性苦土(㎎/100g):30~40
・置換性カリ(㎎/100g):30~40
・有効態りん酸(㎎/100g):20~35
2)トマト
・土壌EC値(㎳/㎝):砂土0.4~0.5/腐植質植壌土0.8~1.0
・作土の厚さ(㎝):25以上
・有効根群域の深さ(㎝):40以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~0.7
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):240~280
・置換性苦土(㎎/100g):30~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~40
・有効態りん酸(㎎/100g):20~30
3)いちご
・土壌EC値(㎳/㎝):促成0.3~0.7
・作土の厚さ(㎝):20以上
・有効根群域の深さ(㎝):30以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):60以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~6.5
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):200~250
・置換性苦土(㎎/100g):30~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~40
・有効態りん酸(㎎/100g):30~50
4)キャベツ
・土壌EC値(㎳/㎝):0.4~0.5
・作土の厚さ(㎝):25以上
・有効根群域の深さ(㎝):30以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂壌土~粘質壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~7.0
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):220~280
・置換性苦土(㎎/100g):30~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~30
・有効態りん酸(㎎/100g):20~30
5)レタス
・土壌EC値(㎳/㎝):0.4~0.5
・作土の厚さ(㎝):25以上
・有効根群域の深さ(㎝):40以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~7.0
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):200~220
・置換性苦土(㎎/100g):30~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~30
・有効態りん酸(㎎/100g):20~40
6)玉ねぎ
・土壌EC値(㎳/㎝):0.4~0.5
・作土の厚さ(㎝):25以上
・有効根群域の深さ(㎝):30以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂土~砂壌土(早出し)壌土~植土(貯蔵用)
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~6.5
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):220~250
・置換性苦土(㎎/100g):30~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~30
・有効態りん酸(㎎/100g):30~50
7)アスパラガス
・土壌EC値(㎳/㎝):生育前期0.5~0.6/生育後期0.4
・作土の厚さ(㎝):40以上
・有効根群域の深さ(㎝):150以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂土~壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~6.7
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):220~280
・置換性苦土(㎎/100g):30~50
・置換性カリ(㎎/100g):20~30
・有効態りん酸(㎎/100g):20~30
8)かぼちゃ
・土壌EC値(㎳/㎝):0.4~0.7
・作土の厚さ(㎝):25以上
・有効根群域の深さ(㎝):40以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~6.5
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):300~400
・置換性苦土(㎎/100g):40~50
・置換性カリ(㎎/100g):30~40
・有効態りん酸(㎎/100g):15~20
9)なす
・土壌EC値(㎳/㎝):0.5~0.8
・作土の厚さ(㎝):25以上
・有効根群域の深さ(㎝):30以上
・密度(㎜):20以下
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~7.0
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):200~300
・置換性苦土(㎎/100g):20~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~30
・有効態りん酸(㎎/100g):15~30
10)ブロッコリー
・土壌EC値(㎳/㎝):0.4~0.8
・作土の厚さ(㎝):25以上
・有効根群域の深さ(㎝):40以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:壌土~植壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:5.5~6.5
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):200~300
・置換性苦土(㎎/100g):30~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~30
・有効態りん酸(㎎/100g):10~20
11)じゃがいも
・土壌EC値(㎳/㎝):0.4~0.7
・作土の厚さ(㎝):30以上
・有効根群域の深さ(㎝):40以上
・密度(㎜):17以下
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):15以上
・PH値:6.0~6.5
・腐植(%):4以上
・置換性石灰(㎎/100g):150~400
・置換性苦土(㎎/100g):25~45
・置換性カリ(㎎/100g):15~30
・有効態りん酸(㎎/100g):10~30
12)かんしょ(早掘り)
・土壌EC値(㎳/㎝):0.2~0.5
・作土の厚さ(㎝):30以上
・有効根群域の深さ(㎝):40以上
・密度(㎜):5~10
・作土の土性:砂壌土~壌土
・孔隙率(%):50以上
・陽イオン交換容量(me):5~10
・PH値:5.0~6.0
・腐植(%):1.5~3.0
・置換性石灰(㎎/100g):100~200
・置換性苦土(㎎/100g):20~40
・置換性カリ(㎎/100g):20~30
・有効態りん酸(㎎/100g):5~10
※出典|農林水産省「作物別土づくりの基準値と改善対策(野菜)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/ktebiki1.pdf
4. まとめ
高品質・高収益な農業生産を実現するためには、農作物の成長を促す有効な成分を適正に施した土壌づくりが重要になってきます。水分センサーを利用し、水分値だけでなくEC値も参考に土壌づくりを進めてみてください。