株式会社 RUSH FARM 永利 侑太朗様

株式会社RUSH FARM(ラッシュファーム)について

葉物野菜の栽培がとても盛んな福岡県。

その地で、栽培だけでなく未来の農業を考えた取組として、スマート農業実証プロジェクトで作業履歴入力による効率化アプリを作成し、自社圃場で実証試験中の株式会社RUSH FARMの永利取締役にお話を聞きました.

国を動かし農業を変えていくそのような意気込みをお持ちの永利取締役には貴重な展望を聞くことができました。

株式会社 RUSH FARM(ラッシュファーム)

取締役 永利 侑太朗様

https://www.maff.go.jp/kyusyu/portal/toprunner/1811_rushu.html

Q、農業法人をいつ立ち上げられましたかお聞かせください。

A、2012年の3月に設立しました。今年で創業10年目になります。

Q、永利取締役が農業を始められた、背景やきっかけ・理由についてお聞かせください。

A、私はニュージーランドの高校に3年間通っていて、その時はワイナリーを経営したいと思っていました。そのためニュージーランドでワイナリー経営の修行先・働き先を探していたのですが、その年が猛暑でブドウが不作だったため、人材募集している企業はありませんでした。最後に行った日本人が経営されているワイナリーでも、猛暑でブドウは作れていませんでした。

そのため、渋々日本に帰ってきて、酒造免許を取るための学校に通う学費を稼ごうと思い、アルバイトを始めました。加えて家の仕事の手伝いもしました。給料なしで働いたんですけど、結構大変でした。そのときはサラダ菜を作っていて、農協へ出荷しているだけの個人農家でした。ただ、車の至る所に領収書があったりと、経営管理的にも雑だと感じました。ただ、売上や数字が書いてあるものを見つけたとき「こんなに売り上げがあるのか」と驚きました。詳しく計算してみると、採算性は微妙でしたけどね。

そうやって家族助けるつもりで農業を始めたのが1つのきっかけです。自分のわがままで海外まで行かせてもらって、お世話になったと感じていたため、日中は実家を手伝い、夕方はアルバイトに行く生活を1年間していました。そのあとは2年間農大に通って、そのまま就農しました。

Q、主要栽培作物についてお聞かせください。

A、水菜と小松菜、ちんげんさい、きゅうり、なす、リーフレタスです。今年からスイートコーン、オクラ、ほうれん草を試験的にスポットで始めました。相場が崩れる時期や収益性が高そうな時期だけ植えていきます。この中で、ビニールハウスで栽培しているのは、水菜、小松菜、ちんげんさい、きゅうり、なす、ほうれん草です。

Q、栽培面積についてお聞かせください。

A、ビニールハウスが約4.5ha、露地栽培が15haです。年によっては、露地栽培は20haになります。稲の裏作で土地を借りることがあるからです。ハウスの頭数は、パイプハウスが116棟、台風のときは潰れてしまいますが細いパイプでビニールを剥がせるハウスが26棟あります。あとは屋根型ハウスと丸屋根のテントハウスがあります。

Q、農業生産法人以外で、他事業を行ってらっしゃいますか?

A、ライムの加工を少しやっています。去年までは仕入れたものを加工していましたが、ライムは植えてから3年目で収穫できるため、今年からは自分たちで作ったものを使って6次化を行っています。

ライムは佐賀県上峰町で栽培しています。その町はふるさと納税に出す地域の特産品を作ろうとがんばっています。その一環として「儲かる農業上峰塾」という塾があり、その塾に私の母が行ったことがきっかけで、ライムの加工品を作ろうとなり、現在のライム栽培の始まりとなりました。

最初は他の作物での自社商品で考えていましたが、漬物やケーキなど、ありきたりなものしか発想できませんでした。その土俵でプロと競争しても勝てないので、まずは商品をゼロから生み出すことを考え、ライムに注目しました。一昨年までは百貨店の祭事で販売していましたが、コロナで祭事がゼロになったので、今はネットで販売しています。今年からはライムを仕入れなくて良くなったので、6次化に切り替えていて助かりました。

Q、永利取締役が今、販売・人材・生産管理の中で最も気になられる面はどれかお聞かせください。

A、人材育成と生産管理です。

RUSH FARMの人材育成について

Q、従業員数(社員・アルバイト・研修生)に分けてお聞かせください。

A、全員で30名です。技能実習生が20名、アルバイト・パートさんが4名、社員が6名です。

Q、従業員様の平均年齢についてお聞かせください。

A、社員の平均年齢は30歳くらいです。ベトナム人の実習生を入れると20代半ばです。

Q、平均勤続年数はどれくらいかお聞かせください。

A、設立して9年なので、平均すると3年ですね。一番長い人は5年です。

Q、人材育成について何か実施されていることはありますか?

A、人材育成はうまくいっていないと思います。良い人材はいるけど、育成しているという感覚はありません。

Q、人材育成について、どこがうまくいっていないと感じますか?

A、私自身、他力本願な部分があるところです。社員が入社して、経験を積んで勝手に育っていく感覚です。ある程度のスキームを作って、研修などで積み上げていける体制にしたいですね。今いる人材は「私のところで働いてほしい」と私からお願いした人しかいません。だから割と会社に馴染んで成長していると思います。でも、これから誰も知らない方が入社するときは、今のままでは難しいと思っています。

Q、現在人材募集はされていますか?

A、今はしていません。

Q、過去に人材を募集するときは、どのような方法を使われていましたか?

A、知り合いに紹介してもらっていました。農業経験はないけど、この人ならこの作業に向いているだろうと予測して引き抜いていました。今いるメンバーはすべて農業経験者ゼロのメンバーだけですね。

Q、採用面で苦労されているところがあればお聞かせください。

A、会社の中身がしっかりしていなくて、普通の会社がどうしているのかも分からないので、最初は普通の会社に合わせて会社の体制や文化を作ろうとしていました。でも今は、自分たちのカラーでいいのかなと考えています。例えば、休みは週1日なのですが、勤務時間は1日5時間です。最初は週休2日の8時間労働にしていましたが、実際に植物を相手にすると大変でした。だから今の出勤時間が合っていると思います。「変わっているな」とは思われますが、仕事は回っています。その代わり、あまり社員数を増やさないようにして、従業員さんへの給料の還元率を上げたいと思っています。

農業生産における苦労と工夫について

Q、農業生産している中で過去一番苦労した点についてお聞かせください。

A、葉物類なので、夏場の水管理ですね。私であれば可能だが、他の社員やアルバイト・パートに感覚で任せると、そこの感覚をつかむまでにものすごい時間がかかります。やはり、潅水には熟練度が必要ですね。そこのハードルを下げたい。5年勤務している柴田という社員が、やっとできるようになったところです。

Q、それはどのようにして解決されたかお聞かせください。

A、時間と経験ですね。もし柴田がいなくて新しい社員さんを入れるとなったら、真っ先にセンスプラウトの潅水制御装置に頼りたいです。

Q、農業生産において、独自で工夫されているところがあればお聞かせください。

A、生産から販売まで、自社のパッケージでやっていることですね。クレームも私たちに直接届くので、改善がしやすいです。生産から販売まで自社でやろうと思ったのは、やっている人が周りにあまりいなかったことです。最初のうちは営業も自分でやっていました。今では良いものを出荷することが一番の営業になっています。やっぱりどこかで知らない方が我々の野菜を見られていて、そこから声がかかることもありますね。だから卸売市場も良い営業媒体だと思っています。良いものを作っていれば、新たなお客さんに見つかるってことはありますね。

Q、現在、農業生産において課題があればお聞かせください。

A、収穫からパッケージまでの作業にものすごいウエイトがあることですね。どうにかして楽にしたいです。置くと自動的に流れていって、その上で下葉を取ったり、根切りしたり、パッケージしたりできる機械はありますが、私たちが思っている商品にはなりません。フィルムに包まれると、長方形になるんですね。水菜や小松菜は葉っぱが扇形になっているので、扇形のパッケージの方がキレイに見えます。だから手詰めになります。今は圃場で収穫してそのままパックしています。以前は鎌で切ってかごに入れて、内職の方に任せていました。でも漬物みたいに自重でつぶれたりとか、水菜とか泥が隙間に入ってしまったりとかしていました。今は収穫して、すぐにそのまま切る形となったため、商品がキレイに出荷することができるようになりました。スピード面を考えても、機械より手作業の方が早いと思います。

永利取締役が目指す農業の未来

Q、今後の展開について考られていることがあればお聞かせください。

A、品質の高いものを多品目、安定的に作っていくことを目標にしています。買い手のニーズに合わせるというよりも、定番野菜を作ることですね。定番野菜を安定して出荷できれば、物流も若干は変わるのかなと考えています。

必ず使われる野菜、買い手のニーズが高い野菜だと、競争は激しいが確実に買い手は買ってくれます。だからわざわざ遠くに足を運ばなくても、近くのお客さんを相手にできます。物流や営業にかかるコストを削れば、自分たちでやれるところはもっとあると思いますね。単品の野菜だとスポットでしか買ってくれないため、多品目の野菜を出荷できると、通年供給や商談もしやすいです。ブランド力が付けばなおさら楽になり、売り場から提案できるのは強いと感じています。

送り込みがあると、どうしても安い方に流れていくので、一定の売り場を抑えさせていただき、ある程度の品目の野菜を出荷できる状態にしておく必要があるかなと思っています。

Q、社長が考えられる今後の農業のあるべき姿をお聞かせください。

A、地元貢献ですね。地元貢献が私たちの仕事でできることだと思います。仕事を作ること、しっかり稼ぐこと、健康に気を配ること、地元に魅力が出るような取り組みを自分たちでやっていくことが大切だと思います。

Q、スマート農業のプロジェクトついてもお聞かせください。

A、2014年から株式会社サンフォーユーと一緒に作り始めている「AICA(アイカ)」というシステムを2021年3月1日から公開させてもらいました。「AICA」

は木村社長が経営している株式会社サンフォーユーが販売しています。

株式会社サンフォーユー AICA

http://www.sunforyou.jp/aica/index.html

当初は「Agryell(アグリエール) 」というサービスを作ったのですが、改善されたものが「AICA(アイカ)」になります。システムの内容は農業日誌ですね。

「どこでどの肥料を何kgやったか」という報告を、紙で書くのか、市場に出回っているシステムを使うのか、自社でも検討してきました。ただ、入力したくないという空気が従業員の中にあったので、入力が面倒でないシステム、「AICA(アイカ)」を作ることになりました。「AICA(アイカ)」は月額利用料、年払いもあるサブスクリプションで利用できます。

農業日誌を手間と感じている農業法人はぜひ問い合わせしてみてください。

インタビューを終えて

革新(Renovation)、役に立つ(Useful)、笑顔(Smile)、幸せ(Happy)、この頭文字を社名にしたのが、株式会社RUSH FARMです。

スマート農業への取り組み(革新)、地域社会への貢献(役立つ)、ご挨拶させていただいた従業員様の(笑顔)、株式会社RUSH FARMにの将来には幸せな未来がある思わせるインタビューとなりました。SenSprout Proセンサの導入も決めていただき、今後とも両社にて農業の新しい形を作り上げていきます。

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