潅水ホースの種類と使い方!目的に応じた効果アップ

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ビニールハウスで作物を育てるとき、露地栽培とは異なり潅水が必ず必要となります。そのため、潅水設備は作業の効率化という点で非常に重要です。

潅水設備を導入することで、水やりの時間を設定してボタンを押すだけですべての作物に水をあげることができるため、人の負担を削減し、効率よく作物を育てることができます。

そんな潅水設備の中でも、潅水ホースは用途別に種類が分かれています。

育てる作物や用途に合った潅水ホースを選ぶことで、農業生産においてより大きな効果を得られます。

今回は、潅水ホースの種類と使い方についてご紹介します。

効果を十分に発揮するために、用途別の種類と使い方をしっかりと抑えましょう。

目次

1. 潅水ホースが必要なわけ

2. 潅水ホースの素材

3. 潅水ホースの種類

4. 潅水ホースの使い方

5. 潅水ホースの手入れの仕方

6. 潅水ホースのメーカーと商品例

7. 潅水ホースが購入できる場所

8. まとめ

1. 潅水ホースが必要なわけ

農作物の成長において必要な要素の一つである水。水を適切な量を均一に撒くことは、農業において、収穫量の安定と品質の安定には欠かせません。また、湿害や病害虫の発生防止にも水の量とムラなく均一に散水することは重要になります。そこで活用したいのが潅水専用の農業用ホースです。

潅水ホースには散水孔と呼ばれる、水が放出される孔が空いており、その孔の大きさや配列、孔の位置等によって、散水幅や使い方が異なります。また、潅水ホースによっては、水圧によって散水幅を調整できるタイプもあります。

2.潅水ホースの素材

潅水ホースの紹介をする前に、まずは潅水ホースの素材についてご紹介します。

潅水ホースの素材には、主にポリ塩化ビニルとポリエチレンが使用されています。

ポリ塩化ビニルは非常に安価な合成樹脂であり、水道管や電線被覆などに使われています。非常に軽い素材で耐久性が高く、燃えにくいという特徴があります。金属管のように、錆びたり腐食したりといった心配もありません。

一方で熱に弱く、65℃以上になると表面が伸びて曲がってしまいます。そのため、太陽光を浴び続けるなど、熱を帯び続ける状況に長時間置いておくと危険です。

また、5℃以下の低温になると衝撃に弱くなり、割れやすくなります。

ポリ塩化ビニル製の潅水ホースを購入するときは、気温への耐性に注意しておきましょう。

ポリエチレンも安価な合成樹脂で、ビニール袋などの包装材や電線被覆に使われています。

耐久性が高く、吸水性がほとんどないため防水性に優れています。また、低温時でも強度が落ちないこともポリエチレンの長所です。

一方で、ポリ塩化ビニル同様熱に弱いため、太陽光を長時間浴びる環境に置かないようにしましょう。

3.潅水ホースの種類

潅水ホースは、大きく分けると用途別に3種類です。

それぞれの潅水ホースの特徴について、詳しく見ていきましょう。

地表潅水用

地表潅水とは、地面の上に潅水ホースを設置して潅水する方法です。

露地栽培やビニールハウス栽培で用いられる潅水方法の中で最も一般的で、多くの野菜や花卉、または育苗に用いられます。

一般的に畝の間に潅水ホースを設置し、両サイドの畝に向かって散水します。

畝全体に水が行き届くよう、ムラなく潅水できることが求められます。また、潅水によって畝の土が跳ね返って作物にかかってしまうと、作物の生育に影響が出てしまいます。

そのため、潅水による水の跳ね返りが少ないことも、地表潅水用の潅水ホースに求められる点です。

そして、地表潅水には噴霧散水と水平散水の2種類があります。

噴霧潅水とは、霧状のごく小さい水を撒く方法です。

水滴1粒1粒が非常に小さいため、水による土の跳ね返りを防止できます。また、潅水だけでなく、夏季の冷房、湿度調整、薬剤散布などにも用いられます。

次に、水平散水とは水を水平に散水する方法で、主に株元への潅水を目的としています。

畝全体を潅水したい場合や、マルチの下に潅水ホースを通して潅水したい場合に使われます。

点滴潅水用

点滴潅水はイスラエルで生まれた技術で、時間をかけてゆっくりと潅水する方法です。

作物の株元に確実に水を与えるため、以下のメリットがあります。

・水の利用効率が高い

・土からの蒸発が少なく、ハウス内が多湿になりにくい

・葉や枝を濡らさず土の跳ね返りもないため、病虫害を防止できる

・生育にムラが少ない

また、潅水と同時に、作物に必要な栄養分も施すことができます。

ビニールハウスでのいちごやトマト栽培によく用いられる潅水方法です。

頭上潅水用

頭上潅水とは、ビニールハウスの天井に潅水ホースを設置して、ハウス内全体を潅水する方法です。

以前は土の跳ね返りや大量の水を使うことによる水の無駄使い、水が大量に落ちた部分の凍結などの問題が発生していました。

しかし、最近は霧状の細かい散水ができる製品や、以前より使用する水量が少ない製品など、改良が進んでいます。

中でも、住化農業資材株式会社の「ミストエースSナイアガラ」は、独自技術を用いた画期的な頭上潅水用ホースとして注目を集めています。

野菜や花卉、果樹の生育に用いられるだけでなく、育苗やハウス内の温度・湿度管理など、幅広い用途があります。

4.潅水ホースの使い方

潅水ホースの使い方は、育てる作物や使う場所によってさまざまです。

ここからは、潅水ホースが具体的にどんな使い方をされているのか見ていきましょう。

ビニールハウス栽培

潅水ホースがよく使われる場面として、ビニールハウスがあります。

ビニールハウス栽培は天候の影響を受けにくく、潅水ホースを使って水やりをコントロールすることで、効率的に作物を育てられます。

また、育苗はビニールハウス内で行われることが多く、大規模な育苗施設の場合は噴霧散水用などの潅水ホースが使われます。

潅水方法も、地表潅水・点滴潅水・頭上潅水の3種類を作物や用途に応じて使います。

湛水タンクやタイマーなどの潅水制御装置に潅水ホースを接続し、バルブや装置に付いているボタンで水の管理をします。

露地栽培

潅水ホースは、露地栽培でも使われます。

大規模農園など作物をたくさん栽培しているところでは、潅水ホースを使うことで、作業効率を大幅に上げられます。

主に使われる潅水方法は、地表潅水と点滴潅水です。

潅水には、近くのため池や水路、河川からポンプでくみ上げた水を、ろ過装置を通して利用します。

また、スプリンクラーを使った潅水も見られます。

ビニールハウス内の環境制御や生育促進

地表潅水の噴霧散水やビニールハウスで使われる頭上潅水は、環境制御や生育促進を目的として使われることもあります。

特にビニールハウスは天候の影響を受けにくい分、ビニールハウス内の温度や湿度を丁寧に管理する必要があります。

夏季であれば室温、冬季であれば湿度管理に特に注意が必要です。

室温が上がりすぎたり、湿度が下がりすぎたりしたときには、潅水を行うことでハウス内を作物にとって好ましい環境に整えることができます。

また、定植後の活着促進や葉水潅水、葉面散布にも有効であるなど、作物の生育を促す効果もあります。

農業以外の使い方

潅水ホースは、農業以外にも使われています。例えば、道路の中央分離帯に植えられている花や木への水やりです。地中に潅水ホースが埋まっており、自動で定期的に潅水が行なわれます。そのため、猛暑が続いても枯れる心配がありません。

また、潅水ホースはビニールハウス内の湿度保持にも活用できます。ミスト上に散水できるホースを頭上に設置することで、ビニールハウス内が乾燥している時に散水することで湿度を上げる役割を果たします。

5. 潅水ホースの手入れの仕方

潅水システムの導入サービスを利用して、ビニールハウス栽培や露地栽培を大規模に行う場合には、システムもそれなりに大規模になります。

このような場合には、潅水システムの導入サービス内にメンテナンスサービスが組み込まれていることもありますが、そうでなくともメンテナンス内容を事前に把握しておくことが重要です。

この具体的なメンテナンス内容は、①季節に合わせた潅水タイマーの設定 ②タイマーの動作確認 ③排水溝、ドレンホース周りの清掃の3つがメインです。

それぞれどのようなことをするのかご紹介し、潅水ホースの手入れの重要性をお伝えします。

①季節に合わせた潅水タイマーの設定

潅水システムはIT技術の発達によって、潅水時間を事前に設定しておけば、どこにいても遠隔で潅水できるようになりました。

近年では、この潅水予約設定をスマートフォン一つで行えるようになり、難しい取扱説明書を読み解く必要もありません。

そのため潅水タイマーは、自分でもメンテナンス・設定することができます。

また、AIなどを利用する自動潅水システムを導入すれば、これまで潅水頻度によっては1日に何時間もかかっていた潅水も、自動的にこまめに潅水することができるようになりました。

夏は頻度を高め、冬は潅水頻度を少なくするのが一般的ですが、栽培環境や栽培作物によっても異なりますので、自分の農場に合ったメンテナンス・設定を行ってください。

②タイマーの動作確認

タイマーの動作確認とは、設定した時間に散水されているかどうかを目視することでできます。

もし、設定した時間に潅水されない、ずれた時間に潅水されるなどの問題があった場合は、設備やシステムに不具合があります。

どこに不具合があるかが分からない場合は、無理せずメーカーに問い合わせましょう。

また、いつも通り散水されなかった場合は、ホースに穴が開いているかホースがねじれている等のホースに問題がないかを確認しましょう。

ホースに不具合がなかったら、設備やシステムに不具合がありますので、こちらもメーカーへ問い合わせることをお勧めします。

③排水溝、ドレンホース周りの清掃

ドレンホースとは、潅水設備やエアコンなどを稼働している時に、設備の中に溜まった排水を外の排水溝に届けるホースのことです。

常に水に触れていて、屋外に設置されたホースは、腐食したり苔が生えたりしてしまいます。

また、最初にご紹介したように伸び放題になった植物がホースに巻き付いてしまい、思わぬトラブルを引き起こすことがあります。

そのため、ドレンホース周りは年に数回清掃することをお勧めします。

④潅水ホースの手入れの重要性

潅水ホースを手入れするのは、ホースに穴が空いたり、腐敗したりすることを防止し、長期的に使えるようにするためです。特に、農業機械や潅水装置などは初期投資が比較的高く、複数台導入すると投資回収するには数年かかる場合があります。

管理やメンテナンスを怠った場合、潅水ホースの経年劣化・腐敗により水漏れが起き、修理やホースの交換などに余計に費用がかさんでしまうことがあります。

また、潅水機器のメンテナンスを怠った圃場では、植物が伸び放題になったり枯死したり、害虫の発生や根詰まりが起きたりします。

特にこの伸び放題になった植物による妨害を防ぐことは、メンテナンスの最も重要なポイントです。成長の激しい植物では、隣地への伸長、潅水装置の電線・コードへの巻き付きなど、思わぬトラブルを引き起こします。

6. 潅水ホースのメーカーと商品例

1.ミストエースSナイアガラ54/63/72

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/side_overhead/mist_ace_s_naiagara/

特徴

・潅水の常識を覆す画期的な技術と設置方法

・単棟ハウスと連棟ハウス両方で使用可

・霧状散水で作物全体を潅水(ハウス両サイドから)

・水稲育苗ほか各種育苗にも使用可 ・特殊ポリエチレン製による高耐性

2.ネオドリップいいね01L/006L

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/horizontal/neo_drip_iine/

特徴

・マルチ栽培向けの潅水チューブ

・チューブに仕切りを設けた二重管構造

・点滴チューブと散水チューブ両方の良さを併せ持つ

・散水開始時間までのタイムラグが短い

・炭酸ガス(CO2)の局所施用にも使用可

施設栽培向け

3.スミサンスイ-M/M-03

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/spray/sumi_sansui_m/

特徴

・長尺ながらも均一な散布を実現

・霧状散布による全面潅水

・圧力調整機能付き(地表・点滴・頭上いずれも可)

・目詰まりの軽減

・特殊ポリエチレン製による高耐性

露地栽培向け

4.スミサンスイR露地ワイド

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/spray/sumi_sansui_r_roji_wide/

特徴

・10m以上の飛び幅

・省力化に特化した機能性

・潅水孔を新たなパターンで配列

・長尺ながらも均一な散布を実現 ・特殊ポリエチレン製による高耐性

マルチ栽培向け

5.スミサンスイNEWマルチ60 100/100-03

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/horizontal/sumi_sansui_new_multi/

特徴

・花木やイチゴの栽培に適した孔間隔

・マルチ下の潅水に最適な水平散水

・葉への飛散防止(病気予防)

・マルチなし栽培にも使用可

・幅広い作物に対応(葉菜類や根菜類、イチゴやメロンなど)

イチゴ・スイカ/メロン向け

6.スミチューブ果菜イチゴ・スイカ/メロン

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/horizontal/sumi_tube_kasai/

特徴

・イチゴやスイカ、メロン、果菜類に特化

・孔径やピッチなど作物別の仕様を展開

・優れた均一性

・目詰まりの軽減

・マルチの破損を防止

果樹栽培向け

7.スミサンスイR横とび

https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/horizontal/sumi_sansui_r_yokotobi/

特徴

・リンゴやモモ等の果樹栽培に特化

・最大3mの散水幅

・圧力調整による散水幅の変更(1m~3m)

・マルチ下潅水にも使用可

・特殊ポリエチレン製による高耐性

点滴潅水タイプ

8.ストリームライン80

https://www.sumika-agrotech.com/product/pdf/kansui_streamline_80.pdf

特徴

・作物の根のみに潅水する点滴タイプ

・優れた節水性

・葉への飛散防止(病気予防)

・目詰まりの軽減

・土中の通気性が良好で肥料分の吸収が早い

7. 潅水ホースが購入できる場所

潅水機器や潅水資材をオンラインショップで購入するには、主に、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの「大手ECモール / 出店型」と、農機具メーカーの「自社オンラインショップ」があります。オンラインショップの歴史は、「大手ECモール / 出店型」から始まりますが、現代ではオンライン決済機能や宅配システムなどのインフラが整い、農業界問わず「自社オンラインショップ」が増えてきています。

自社オンラインショップ

1. Nihon Nougyou System / 日本農業システム

https://www.nou.co.jp/shop/default.aspx

アイアグリ株式会社が運営するオンラインショップで、潅水資材は潅水チューブや潅水チューブ継手部品、エバフロー・キリコ、サンホープ、関連資材、スミサンスイ本体を販売しています。もちろん、潅水機器や潅水資材以外にも、農業用薬品や肥料、種子、農業書籍などの購入も可能です。

2. KOMERI.com / コメリドットコム

https://www.komeri.com/

「KOMERI.com」では、潅水資材として、潅水チューブや潅水部材、ローリー本体、ローリー部材、大型容器が取り扱われています。また、潅水機器・資材の他に、農薬や肥料、畑作果樹畜産資材も取り扱っています。

3. MonotaRO/ モノタロウ

https://www.monotaro.com/

事業者向けの現場で使えるネットストアとしてリリースされた「モノタロウ」は、年間売上1500億円規模で、売上成長率20%、営業利益成長率23%、さらに時価総額1.1兆円と、あの楽天の時価総額1.3兆円に肉薄するほど、絶好調の企業です。

8.まとめ

今回は潅水ホースの種類と使い方についてご紹介しました。

潅水ホースを選ぶときは、目的に応じた適切なものを選ぶことが重要です。

自分が育てたい作物に合った潅水ホース、または使い方に応じた潅水ホースを選べば、日々の農作業が少し楽になります。

また、潅水ホースは、おいしい作物をたくさん作るときの心強い味方となります。

潅水ホースの種類や使い方を抑えて、農業をより楽しくしましょう。

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