ビニールハウスで作物を育てるとき、露地栽培とは異なり潅水が必ず必要となります。そのため、潅水設備は作業の効率化という点で非常に重要です。
潅水設備を導入することで、水やりの時間を設定してボタンを押すだけですべての作物に水をあげることができるため、人の負担を削減し、効率よく作物を育てることができます。
そんな潅水設備の中でも、潅水ホースは用途別に種類が分かれています。
育てる作物や用途に合った潅水ホースを選ぶことで、農業生産においてより大きな効果を得られます。
今回は、潅水ホースの種類と使い方についてご紹介します。
効果を十分に発揮するために、用途別の種類と使い方をしっかりと抑えましょう。

目次
1.潅水ホースの素材
2.潅水ホースの種類
3.潅水ホースの使い方
4.まとめ
1.潅水ホースの素材
潅水ホースの紹介をする前に、まずは潅水ホースの素材についてご紹介します。
潅水ホースの素材には、主にポリ塩化ビニルとポリエチレンが使用されています。
ポリ塩化ビニルは非常に安価な合成樹脂であり、水道管や電線被覆などに使われています。非常に軽い素材で耐久性が高く、燃えにくいという特徴があります。金属管のように、錆びたり腐食したりといった心配もありません。
一方で熱に弱く、65℃以上になると表面が伸びて曲がってしまいます。そのため、太陽光を浴び続けるなど、熱を帯び続ける状況に長時間置いておくと危険です。
また、5℃以下の低温になると衝撃に弱くなり、割れやすくなります。
ポリ塩化ビニル製の潅水ホースを購入するときは、気温への耐性に注意しておきましょう。
ポリエチレンも安価な合成樹脂で、ビニール袋などの包装材や電線被覆に使われています。
耐久性が高く、吸水性がほとんどないため防水性に優れています。また、低温時でも強度が落ちないこともポリエチレンの長所です。
一方で、ポリ塩化ビニル同様熱に弱いため、太陽光を長時間浴びる環境に置かないようにしましょう。
2.潅水ホースの種類
潅水ホースは、大きく分けると用途別に3種類です。
それぞれの潅水ホースの特徴について、詳しく見ていきましょう。
地表潅水用
地表潅水とは、地面の上に潅水ホースを設置して潅水する方法です。
露地栽培やビニールハウス栽培で用いられる潅水方法の中で最も一般的で、多くの野菜や花卉、または育苗に用いられます。
一般的に畝の間に潅水ホースを設置し、両サイドの畝に向かって散水します。
畝全体に水が行き届くよう、ムラなく潅水できることが求められます。また、潅水によって畝の土が跳ね返って作物にかかってしまうと、作物の生育に影響が出てしまいます。
そのため、潅水による水の跳ね返りが少ないことも、地表潅水用の潅水ホースに求められる点です。
そして、地表潅水には噴霧散水と水平散水の2種類があります。
噴霧潅水とは、霧状のごく小さい水を撒く方法です。
水滴1粒1粒が非常に小さいため、水による土の跳ね返りを防止できます。また、潅水だけでなく、夏季の冷房、湿度調整、薬剤散布などにも用いられます。
次に、水平散水とは水を水平に散水する方法で、主に株元への潅水を目的としています。
畝全体を潅水したい場合や、マルチの下に潅水ホースを通して潅水したい場合に使われます。

点滴潅水用
点滴潅水はイスラエルで生まれた技術で、時間をかけてゆっくりと潅水する方法です。
作物の株元に確実に水を与えるため、以下のメリットがあります。
・水の利用効率が高い
・土からの蒸発が少なく、ハウス内が多湿になりにくい
・葉や枝を濡らさず土の跳ね返りもないため、病虫害を防止できる
・生育にムラが少ない
また、潅水と同時に、作物に必要な栄養分も施すことができます。
ビニールハウスでのいちごやトマト栽培によく用いられる潅水方法です。
頭上潅水用
頭上潅水とは、ビニールハウスの天井に潅水ホースを設置して、ハウス内全体を潅水する方法です。
以前は土の跳ね返りや大量の水を使うことによる水の無駄使い、水が大量に落ちた部分の凍結などの問題が発生していました。
しかし、最近は霧状の細かい散水ができる製品や、以前より使用する水量が少ない製品など、改良が進んでいます。
中でも、住化農業資材株式会社の「ミストエースSナイアガラ」は、独自技術を用いた画期的な頭上潅水用ホースとして注目を集めています。
野菜や花卉、果樹の生育に用いられるだけでなく、育苗やハウス内の温度・湿度管理など、幅広い用途があります。
3.潅水ホースの使い方
潅水ホースの使い方は、育てる作物や使う場所によってさまざまです。
ここからは、潅水ホースが具体的にどんな使い方をされているのか見ていきましょう。
ビニールハウス栽培
潅水ホースがよく使われる場面として、ビニールハウスがあります。
ビニールハウス栽培は天候の影響を受けにくく、潅水ホースを使って水やりをコントロールすることで、効率的に作物を育てられます。
また、育苗はビニールハウス内で行われることが多く、大規模な育苗施設の場合は噴霧散水用などの潅水ホースが使われます。
潅水方法も、地表潅水・点滴潅水・頭上潅水の3種類を作物や用途に応じて使います。
湛水タンクやタイマーなどの潅水制御装置に潅水ホースを接続し、バルブや装置に付いているボタンで水の管理をします。

露地栽培
潅水ホースは、露地栽培でも使われます。
大規模農園など作物をたくさん栽培しているところでは、潅水ホースを使うことで、作業効率を大幅に上げられます。
主に使われる潅水方法は、地表潅水と点滴潅水です。
潅水には、近くのため池や水路、河川からポンプでくみ上げた水を、ろ過装置を通して利用します。
また、スプリンクラーを使った潅水も見られます。
ビニールハウス内の環境制御や生育促進
地表潅水の噴霧散水やビニールハウスで使われる頭上潅水は、環境制御や生育促進を目的として使われることもあります。
特にビニールハウスは天候の影響を受けにくい分、ビニールハウス内の温度や湿度を丁寧に管理する必要があります。
夏季であれば室温、冬季であれば湿度管理に特に注意が必要です。
室温が上がりすぎたり、湿度が下がりすぎたりしたときには、潅水を行うことでハウス内を作物にとって好ましい環境に整えることができます。
また、定植後の活着促進や葉水潅水、葉面散布にも有効であるなど、作物の生育を促す効果もあります。
農業以外の使い方
潅水ホースは、農業以外にも使われています。
例えば、道路の中央分離帯に植えられている花や木への水やりです。
地中に潅水ホースが埋まっており、自動で定期的に潅水が行なわれます。
そのため、猛暑が続いても枯れる心配がありません。
4.まとめ
今回は潅水ホースの種類と使い方についてご紹介しました。
潅水ホースを選ぶときは、目的に応じた適切なものを選ぶことが重要です。
自分が育てたい作物に合った潅水ホース、または使い方に応じた潅水ホースを選べば、日々の農作業が少し楽になります。
また、潅水ホースは、おいしい作物をたくさん作るときの心強い味方となります。
潅水ホースの種類や使い方を抑えて、農業をより楽しくしましょう。