潅水設備を導入してしばらくすると、「潅水チューブにゴミが溜まって詰まってしまった」という経験はありませんか?
潅水設備は、あらかじめ潅水予約を設定しておけば簡単に作物へ水をあげられる便利な装置です。
しかし、使い始めてしばらくすると、潅水チューブに目詰まりを起こして潅水できなくなってしまいます。
そこで今回は、潅水チューブの目詰まり防止対策についてご紹介します。また、目詰まり防止に役立つ製品もあわせて紹介します。
目次
なぜ潅水チューブに目詰まりが発生するのか
目詰まり対策その①:フィルターを付ける
目詰まり対策その②:目詰まりしにくい製品を選ぶ
目詰まりあ対策その③:液肥は濃度を守って使う
目詰まり対策その④:定期的なメンテナンス
まとめ
なぜ潅水チューブに目詰まりが発生するのか
潅水チューブに目詰まりが発生すると、作物に均一に水をあげられなくなります。
その結果、水不足によって作物が枯れてしまったり、生育の遅れによって作業効率が下がったりといった問題が発生します。
では、どうして潅水チューブに目詰まりが発生するのでしょうか?
その原因はpHや栄養成分、土壌粒子などさまざまです。
目詰まりの主な原因について、以下にまとめてみました。
pH | pHが高いとミネラル成分が沈殿しやすく、ドリッパーの目詰まりリスクが高まる |
砂などの浮遊固形物 | 量が多くなると目詰まりが発生。水圧低下による潅水トラブルの原因にもなる。 |
シルト・粘土 | 量が多くなると目詰まりが発生。 |
カルシウム・鉄などの養分 | 濃度が高いとチューブ内で沈殿が起こる。ディスクフィルターのろ過では除去しにくい。 |
藻類 | 増殖すると目詰まりの原因となる。 |
化成肥料 | 作物に直接施用する化学肥料を液肥として使用すると、残渣が発生して目詰まりの原因となります。 |
このように、潅水チューブに目詰まりが発生する原因は多岐にわたります。
潅水設備はビニールハウスの中にあることが多く、砂やシルトなどの土壌粒子が入ってしまうことは避けられません。
地下水や川の水、畑地灌漑用パイプラインの水をタンクに溜めていると、藻類などの微生物が発生することもあります。
また、液肥の濃度が高すぎると、溶けきれなかった成分が沈殿してしまい、目詰まりの原因となります。
しかし、灌水チューブの目詰まりは、きちんと対策を立てることで防ぐことができます。
ここからは、目詰まり対策を4つご紹介します。
目詰まり対策その①:フィルターを付ける
1つ目の対策は、潅水装置にフィルターを付けることです。
フィルターを付けることで、土壌粒子や小さなゴミを取り除くことができます。
一般的に、潅水装置の目詰まり防止のためには、130μm以上のゴミを除去できる120メッシュのフィルターを通すことが基本です。
また、地下水や川から水を汲み上げるときに予め粗目のフィルターでゴミを取り除いておいて、潅水するときにより細かいフィルターでゴミを取り除くという、2段階のろ過をする方法もあります。
これにより、潅水チューブの目詰まりを防げるだけでなく、エンジンポンプの吸水口も守ることができます。
ここで、フィルターの例として、住化農業資材株式会社の製品を1つご紹介します。
〇SNZファインフィルター50/80
特殊繊維と旋回流によってフィルター内の水流が分散されることで、ろ過面へのゴミ付着を軽減し、ろ過面積を有効活用します。
特殊繊維は2種類あり、120メッシュの製品だけでなく、なんと200メッシュの目が非常に細かい製品もあります。
また、ろ過面に付着したゴミも、底面に付いている排泥バルブを開いて通水するだけで簡単に掃除できます。
このように、住化農業のSNZファインフィルター50/80は、細かいゴミまで除去でき、お手入れも簡単なフィルターです。
潅水ポンプ、潅水チューブの目詰まり防止に大いに役立つ製品でしょう。
目詰まり対策その②:目詰まりしにくい製品を選ぶ
潅水チューブを購入するときに、目詰まりしにくい製品を購入することも1つの手段です。
目詰まり防止のため、各農業資材メーカーから、目詰まりしにくい潅水チューブが多数販売されています。
ただし、いくら目詰まりしにくいからといって、長い間メンテナスをしないと、さすがに目詰まりが発生します。
あくまで「メンテナンスの間隔が通常の潅水チューブより長い」程度のことと思っておきましょう。
では、目詰まりしにくい潅水チューブを1つご紹介します。
セフティ潅水チューブレーザー孔
タキロンシーアイという、建築資材や農業資材を提供しているメーカーの製品です。
高度なプラスチック技術と高い形成技術が特徴で、国内トップクラスのシェアを誇る農業用フィルムなど、農業資材の分野でも活躍しています。
そんなタキロンシーアイのセフティ潅水チューブと特徴は、「円形の孔」です。
セフティ潅水チューブは、特殊なレーザー技術によって、チューブの横に「孔」と呼ばれる小さな穴が開いています。
この孔の形が「真円」なのです。
孔の形が真円であると、均一に散水できるので、目詰まりが発生しにくくなっています。
もし孔が楕円形だと、一部にゴミなどが溜まってしまい、目詰まりが発生します。
また、セフティ潅水チューブは、厚み、孔ピッチ、色なども選べるので、栽培する作物やご自身の好みの色にカスタマイズできることも嬉しいポイントです。
目詰まり対策その③:液肥は濃度を守って使う
3つ目の対策は、液肥の濃度を守って使うことです。
液肥の濃度が高いと、水に溶けきれなかった養分が沈殿してしまい、目詰まりの原因となります。
よく発生するのが、カルシウムが沈殿して起こる目詰まりです。
どうしても濃度が下がらない場合は、イオン交換樹脂を使って濃度を下げる処理をしましょう。
また、pHを低めに管理することで、ある程度沈殿を防ぐこともできます。 pHを下げる方法としては、リン酸溶液や硝酸を用いる方法があります。
目詰まり対策その④:定期的なメンテナンスを行う
潅水チューブの目詰まりを防ぐ一番の対策は、定期的にメンテナンスをすることです。
どれだけ液肥を上手く使っても、どれだけ目詰まりのしにくい製品を使っても、一番大切なことは「定期的なメンテナンス」です。
潅水は作物を作るうえで非常に大切な作業ですので、それを支える潅水設備は定期的に点検しましょう。
例えば、フィルターがあれば、水に付着している土やゴミをフィルターで留めることができますし、潅水ポンプを高水圧で通水することで、潅水チューブ内に溜まったゴミを洗い流すことも可能です。
また、潅水チューブ内を掃除する専用のブラシがあります。
潅水・散水チューブの目詰まりが取れるブラシ
たわしやスポンジのメーカーであるアイセン工業の製品です。
中心から360°にブラシが広がっており、潅水チューブの中を通すだけで、汚れが落ちる仕組みになっています。
使い方は簡単で、潅水チューブの中にブラシを押し込んで水を流すだけ。
あとは水圧でブラシが潅水チューブの中を移動し、汚れを落としてくれます。
1回だけでなく、2回3回と繰り返し通すことで、より効果を得られるでしょう。
潅水チューブのメンテナンスにおすすめのアイテムです。
まとめ
潅水チューブが目詰まりを起こしてしまうと、作業効率の低下や目詰まり解消作業など、従来の農作業に大きく影響が出てしまいます。
目詰まりを起こさないため最も大切なことは、定期的なメンテナンスです。
目詰まりしにくい製品やフィルターの設置なども必要ですが、あくまで「メンテナンスの頻度を減らせる」程度です。それだけでも十分作業効率は上がりますが、やはり、日頃からしっかり管理することを忘れないようにしましょう。