自動潅水が普及しなかったら日本農業の未来はどうなるのか?

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今でこそ、自動潅水は当たり前になりました。しかし、もし潅水が自動化されなかった場合、日本農業はどうなるのか考えたことはありますか?

自動潅水は、潅水にかかる時間を大幅に減らすことで、品質の安定化や規模拡大、収益アップにつながるという効果があります。今回は、自動潅水がなかったとしたら、日本の農業はどうなるかについて、考えたいと思います。自動潅水によるメリットを、改めて考えるいい機会になるでしょう。

目次

1. 日本のビニールハウス栽培の現状

2. 自動潅水が普及しなかった場合に起こり得ること

3. 自動潅水による省力化の効果とは

4. まとめ

1. 日本のビニールハウス栽培の現状

自動潅水がなかった場合の日本農業を考える前に、まずは日本のビニールハウス栽培の現状を抑えておきましょう。

農林水産省のデータによると、2018年の野菜・果樹・花卉の農業産出額は、ビニールハウス栽培と露地栽培を合わせて農業産出額全体の約4割を占めます。消費者ニーズも高く、ビニールハウス栽培による周年安定供給は重要であるとされています。

しかし、高齢化による農家数・栽培面積の減少は進んでいます。1985年には20万戸あった農家数も、2018年には16万6千戸まで減少。栽培面積も1999年の約53,000haをピークに減少を続け、2018年には約42,000haとなりました。ただし、1戸あたりの平均施設面積は20aから変化がありません。

一方で、野菜・果樹・花卉(かき)は新規就農者にとって人気の高い作目となっています。2018年に新規就農した人のうち、なんと85%が野菜・果樹・花卉を選択しました。野菜だけに注目してみると、新規就農者の約56%が野菜を選択しているということになります。経営者自らが工夫を凝らすことで、高付加価値化しやすいことが理由の1つです。これはビニールハウス栽培と露地栽培を合わせた数値ではありますが、新規就農者にとって野菜を生産することが人気であるといえます。

また、大規模な栽培面積をもつ経営体ほど、規模拡大が進んでいるというデータもあります。自動潅水などの最先端の機器を導入することで品質の安定と省力化を実現し、規模拡大を実現しているのでしょう。

スマート農業の普及状況を見てみると、2018年では複合環境制御ができるビニールハウスは全体の2.7%、養液栽培を導入しているのは4.6%です。自動潅水の普及状況についてはデータがありませんでしたが、まだまだ普及している途中といった状況でしょう。ただ、スマート農業全般に関しては、確実に広がりを見せています。

国としてもスマート農業を後押ししており、「強い農業・担い手づくり交付金」などの補助金や、全国10ヶ所にモデル拠点を整備するなど、取り組みを進めています。モデル拠点では、スマート農業によって収量アップや省力化を目指すとともに、データの蓄積を行っています。さらに、ここで得られたデータを発信し、全国の農家に拡大しようとしています。

このように、ビニールハウス栽培は課題を抱えつつも、自動潅水などのスマート農業を導入することで課題解決を図ろうとしています。また、新規就農者確保という点で、とても重要な役割を果たしています。

2. 自動潅水が普及しなかった場合に起こり得ること

では、もしも潅水が自動化されなかったらどうなるかについて、考えてみましょう。自動潅水のメリットは、省力化とムラのない潅水による品質の安定化です。この効果がいかに重要か、考えるきっかけになります。

1)野菜・果樹・花卉(かき)農家の減少が加速

2020年度の農業従事者の平均年齢は67.8歳です。ここ5年で新規就農者が増加しているとはいえ、依然として農業従事者の高齢化は進み、農業人口は減少しています。つまり、離農者数>新規就農者数という状況が長らく続いているということです。この傾向は、この先も続いていくでしょう。

もし自動潅水がなかった場合、この流れは加速すると考えられます。

手動で潅水をする場合、1日の作業の半分以上を潅水に割かれてしまいます。特に、夏は春や秋に比べて潅水の回数が増えるので、暑い中で長い時間潅水作業に取り組む必要があります。これでは、「農業=キツイ」というイメージは払拭されないでしょう。さらに、規模を拡大することも難しく、収益アップも厳しいと考えられます。「農業=稼げない」というイメージも残り、新規就農者が現在のように増えることもないでしょう。

つまり、離農者の増加と新規就農者の減少で、農家数の減少・農業人口の減少が今以上に進むと考えられます。

2)技術が継承されない

自動制御潅水機器は、土壌水分量や生育に関するデータを蓄積することができるので、新規就農者でも潅水のタイミングを理解できるというメリットがあります。もし自動潅水がなかったら、今までのように勘や経験頼りの農業のままでしょう。すると、新規就農者は経験を積むまで品質・収量が安定せず、収入が不安定になります。せっかく満を持して新規就農したのに、収入が得られず離農してしまうということも増えるでしょう。また、職人気質で近寄りがたい農家では後継者が見つからず、農地が耕作放棄されることも増加すると考えられます。栽培の難しい作物や生産農家の少ない貴重な作物が姿を消してしまうこともあるかもしれません。

3)食料自給率の低下

農家数と農業人口が減り、技術が継承されないとすると、結果として食料自給率の低下に結びつきます。2018年の日本の食料自給率は、カロリーベースで37%、生産額ベースで66%です。どちらも先進国の中では低い水準です。農林水産省は、2030年までにカロリーベースで45%、生産額ベースで75%の食料自給率を達成することを目標としています。そのためには自動潅水をはじめとするスマート農業の導入が不可欠でしょう。もし潅水が自動化されなかったら、食料自給率は低下の一途をたどると考えられます。

3. 自動潅水による省力化の効果とは

以上のように考えてみると、これからの日本にとって、自動潅水などのスマート農業は必要不可欠であるといえます。では最後に、潅水が自動化されることで実際にどれくらい作業時間が削られるのか、見ていきましょう。

例として、センスプラウトの潅水制御装置を見てみます。センスプラウトの潅水制御装置は、スマホやパソコンから潅水時間を予約することで、ビニールハウスに行かなくても潅水できるのが特徴です。自宅や出先にいても、設定時刻になると自動的に潅水が始まるのです。これに土壌水分センサーをあわせることで、最適な潅水量を実現します。さらに、データの蓄積や共有ができるため、ノウハウが蓄積して、新規就農者でも早く知識を得られるようになっています。

この潅水制御装置をアスパラガスのビニールハウスに導入した事例を見ると、潅水時間が劇的に減少しています。アスパラガス栽培には、たくさんの水と肥料が必要です。そのため、春秋は月に30時間、夏は60時間を潅水に割かれていました。しかし、センスプラウトの潅水制御装置を導入することで、月々の潅水時間はわずか数分にまで減少しました。

ベビーリーフの農業法人、(株)果実堂でも同様の効果が見られています。700棟のビニールハウスのうち40棟に導入しただけで、年間で1000時間の労働時間を削減できています。また、社員同士でデータを共有することで、生産の安定化にもつながっています。

このように、自動潅水によって作業時間の多くを削減できることがわかりました。作物によって削減時間にバラつきはありますが、手動潅水に比べると大きな減少が見込めるといえます。

4. まとめ

今回は、もし自動潅水がなかったら、日本農業はどうなるかということについて考察してみました。こうして考えてみると、自動潅水などのスマート農業は、高齢化や農業人口の減少といった農業界の課題を解決するために、とても重要であるといえます。また、「農業=カッコイイ」というイメージも湧いてくるでしょう。これからの日本農業には、スマート農業のさらなる普及が必要です。

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