目次
1. 農業用水分センサーとは
2. 農業用水分センサーが必要な理由
3. 新規就農者向けの農業用水分センサー情報
4. 水分センサーを活用した強い農業
1. 農業用水分センサーとは
土壌水分センサーとは、その名の通り、土壌の含水量を測定することができるセンサーのことです。潅水装置に付属して購入やリースができる場合は、水分センサーが測定した土壌含水分を潅水量に反映させることができます。
潅水装置の付属とは別に売られているタイプは、水分センサーだけを持ち運んで好きな場所へ取り付けたり、複数の圃場で使ったりすることが可能です。
また、メンテナンスフリーで長時間連続使用できるタイプや土壌含水分だけでなく、土中の導電率(EC)、温度、誘電率、蒸散量などが同時に測定できるタイプもあります。
ここでは、新規就農者向けにおすすめする農業用水分センサーの最新情報を販売元や各メーカーの強みも合わせてご紹介します。
2. 農業用水分センサーが必要な理由
はじめに、農業用水分センサーが必要な理由についてご紹介します。
農作物の生育に欠かせない環境要因の一つに「水」があることはみなさんご存知でしょう。根から吸収された水は、養分と混ざり、植物の体内を巡ります。葉の裏に多く分布している「気孔」と呼ばれる穴から、水蒸気となった水は放出されます。この水蒸気となって水を放出する作用を「蒸散」と言い、植物はこの作用によって栄養を体内に巡らせることで成長します。つまり、農業用水分センサーは農作物の生育に欠かせない「水」が土壌中に十分含まれているかを可視化するために重要な役割を担います。
環境問題悪化に伴う異常気象
もちろん、これまで水分センサーを使わずとも農作物を栽培することができていました。しかし、近年の環境問題悪化に伴う異常気象により、九州北部豪雨や大型台風の上陸、局地的な大雨など、農業の現場はこれまで以上に「天水」へ意識を向けなければいけません。
基本的には露地栽培が天水の影響を受けますが、近年の豪雨ではビニールハウスも浸水被害が相次いでいますので注意が必要です。
気象庁の発表によると、天気予報の精度も年々向上しています。2019年1月時点の降水の有無の的中率は約87%、最高気温の予報誤差は約1.5℃と高精度になっています。今後も予報精度が高まり、地域・時間ともにピンポイントで天気が分かるようになってくるのではないでしょうか?そうなると、天気予報と農業用水分センサーを活用して、より的確な潅水を行うことが可能になります。
圃場の傾斜による潅水ムラをなくす
また、日本列島は山が多いこともあり、傾斜がかかった圃場も少なくありません。一般的には、整地する際に平に慣らしますが雨で土が流れたりすると圃場に小さく傾斜がかかってしまう場合があります。その場合、チューブを使って潅水したとしても、高いところと低いところでは潅水ムラができてしまいます。潅水ムラをなくすためにも、日々の観察や持ち運べる水分センサーを使ってこまめに土壌水分をチェックすることが大切です。
3. 新規就農者向けの農業用水分センサー情報
ここからご紹介するのは、新規就農者向けの農業用水分センサーの最新情報です。販売元や各メーカーの強みも合わせてご紹介しますので、ぜひ参考にされてください。
【サブサブタイトル】竹村電気製作所 土壌水分測定器
https://www.monotaro.com/g/00256298/
簡易土壌水分センサーとしてご紹介するのは竹村電気製作所の土壌水分測定器です。持ち運びもできるので、複数圃場を持つ予定がある方が初めに購入する手軽な水分センサーとしておすすめです。操作が簡単で、相対的な水分量を測定するには十分な機能が備わっています。モノタロウのオンラインショップでも購入できます。
■仕様
・寸法(mm):62×24×148
・質量(g):140
・電源:006P型電池(9V)×1個(テスト用付属)
・測定方式:電気抵抗式
・測定範囲(%):12.1~58.0
・機能:平均値表示・湿度自動補正・ユーザーズレンジ
ARP 水分センサー WD-5 USBモデル
http://www.arp-id.co.jp/hp/sensor_WD3WD5/service.html
次にご紹介する水分センサーはARPのWDシリーズです。コストと性能を向上させたユーザビリティの優れた製品です。土壌の体積含水率・温度・電気伝導度を高精度に測定することができます。また、USBモデルでは、パソコンに水分センサーの先を繋げることができ、専用のソフトウェアを使用することでデータの可視化・蓄積が可能です。
今後は海水レベルの塩分濃度を測定できるような改良や、バッテリーを内蔵させて給電が不要なタイプも登場する予定とのことです。
■仕様
・外形・重量(センサー本体):107.5mm(長さ)×26mm(幅)×13.9mm(厚み)
・重量:240g
・ケーブル長さ:3m
・消費電流:計測時:42.1mA(typ)、スタンバイ時:9.1mA(typ)
・防水性能:IPX8相当(水深1m、1時間水没)
・体積含水率 測定範囲:0%(空気中)~100%(水溶液)
・電気電動度 測定範囲:0mS/cm~7mS/cm
・温度 測定範囲:-30℃~+69.9℃
・加速度 測定範囲:各軸±2G
センスプラウト 水分センサー
センスプラウトの農業用水分センサーは、同社の潅水制御装置を連携させることで、土壌水分量に応じた完全自動潅水を実現します。水分センサーは1時間ごとに深さごとの土壌水分を検知し、10%以上の誤差が検出された場合はメールで通知する機能が備わっています。経験と勘で行っている農業ですが、経験の浅いオペレーターや新規就農者でも高精度の作業を可能にします。また、土壌の体積含水率を均一にすることは、生育ムラをなくし、規格にあった農作物の収穫に繋げます。
■仕様
▼水分センサー
・電源電圧:単三アルカリ電池2本
・電池寿命:最大1年間 (周囲の温度や使用状況による)
・土壌水分の誤差:±10%
・通信方式、距離:IEEE802.15.4g(920MHz)、見通し距離150m ※通信距離は目安です。
▼水分センサーゲートウェイ
・電源電圧:DC5V (AC100V/230V DC5V/ACアダプタ内蔵)
・消費電力:15W
・通信:3Gデータ通信モジュール内蔵
・通信方式 (センサー側):IEEE802.15.4g(920MHz)、見通し距離150m ※通信距離は目安です
・寸法:236mm(W)×160mm(D)×120mm(H)
ゼロアグリ 水分センサー
ゼロアグリの農業用水分センサーは土壌水分量、EC値、地温を10分おきに計測し、蓄積することができます。潅水量や施肥量は株ごとに確認できるので、栽培方法の可視化にも繋がります。また、蓄積した土壌水分量と日射量を使って作物の蒸散量を算出し、必要な時に必要な量だけ潅水できる少量多潅水が実現します。
■仕様
・センサータイプ:RS485
・最大チャンネル数:6
・最大延長距離:400m以内
nippo 日射比例式潅水コントローラ 潅水NAVI
https://www.nippo-co.com/products/nogyo/kansui/kansui.html
最後にご紹介するのはニッポーの日射比例式潅水コントローラ 潅水NAVIに搭載できる水分センサーです。毎日の天気を見ながら潅水のタイミングを決めている、離れたビニールハウスの潅水に時間がかかっている、生育向上を目指しているなどをお考えの方にはお勧めの農業用水分センサーです。日射比例式潅水なので、搭載できる日射センサーが潅水制御しますが、土壌に設置した水分センサーが、同時に土壌水分量もデータとして蓄積できます。
■仕様
・電源電圧:AC100Vまたは200V(50/60Hz)※定格の90~110%以内
・消費電力:60VA以下
・温度動作時:0~+50℃
・温度保存時:-10~+50℃
・湿度動作時:85%RH以下
・湿度保存時:90%RT以下(氷結・結露しないこと)
・データ収集:ハウス環境モニタソフト「Eye-FARM」またはクラウドサービス「EyeFarm Cloud」
4. 水分センサーを活用した強い農業
これから、環境変化により今まで通りの農業ができなくなったり、個性あふれる新規就農者の登場で食味だけでは戦えない時代が来たり、と予想する人もいます。また、販路もJA出荷ではなく、EC販売の加速も考えられるでしょう。そうなると、強い農業のためには、農作業だけでなく、ブランディングや農業経営が重要になってきます。農業用水分センサーの活用は、潅水効率の向上や品質の安定に繋がりますので、ぜひ、新規就農時からの導入をご検討ください。