きゅうり栽培の潅水方法を生育ステージ別に解説

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日本では年間(平成30年度)およそ55万トンものきゅうりが生産されているそうです。

主要な生産地は、宮崎県(1位)、群馬県(2位)、埼玉県(3位)、福島県(4位)、千葉県(5位)の5県で、これらの地域ではビニールハウスを中心とした施設栽培が行われています。この記事では、きゅうり栽培向けの潅水方法について解説していきます。

目次

1.きゅうり栽培について

2.少量多潅水を用いた実証事例

3.きゅうり栽培に適した潅水制御装置

3.各生育ステージにおける潅水方法

4.まとめ

1.きゅうり栽培について

きゅうりは、果実成分のおよそ95%が水分で占められている農作物です。

栽培の歴史は古く、西アジアでは3000年前から栽培されていた記録があります。

その後、ローマ帝国には紀元前3〜2世紀頃に伝わり、紀元前1世紀頃には、ギリシャ、ローマ、小アジア、北アフリカで栽培されるようになったようです。

その後、紀元前122年、ヨーロッパからシルクロードを経由して後の中国となる漢の武帝へ伝わり、6世紀頃までに一般に普及したとされています。

インドを経由して中国・華南に伝播した華南系、シルクロードを経由して中国・華北に定着した華北系があり、日本には紀元前10世紀前、華南系が遣唐使によって伝えられたようです。

当時は、水分を多く含むというその特性から夏場の水分補強としての役割も担っていました。

本格的な栽培が始まったのは昭和初期ごろで、第二次世界大戦が終わるころになると、生食用の普及拡大からビニールハウス等の施設を利用した栽培が増えたそうです。

現在、日本の市場に流通するきゅうりの9割は、適度な長さ(約20㎝)とほどよい肉質が特徴な「白いぼ」という品種です。

発芽地温は25℃~30℃で生育適温が20℃~25℃。植え付け株間50cm程度を適正に「弱酸性から中性の土壌を好む」といわれています。

野菜としての栄養素はあまり多く含みませんが、サラダや漬け物、添え物など、その鮮やかな色味で、私たちの食卓にみずみずしさと彩りを与えてくれています。

1)きゅうりの栽培方法

きゅうりの種蒔きには、ポット蒔きと箱蒔きの2つの方法があります。

ポット蒔きは、育苗用土が入った農業用ポットの中心に直径3㎝程度のくぼみを作り(指で掘るように)、2~3粒の種を間隔を空けて蒔く方法です。

箱まきは、育苗用土が入った育苗箱に棒状の溝を8㎝間隔でつくり(指で線を引くように)、1.5~2㎝間隔で1粒ずつ蒔く方法です。

育苗については、本葉が3~4枚になるまで適切な間引きを行うのが一般的で、土壌づくりについては、定植2週間前を目安に苦土石灰を全面散布して、1週間前に堆肥・元肥を施すのが良いとされています。

成型する畝は平畝(畝高さ5~20㎝程度)で、畝幅は1条植えが90㎝程度、2条植えが120㎝程度が適正といわれています。

定植後は、病害虫(べと病、褐斑病、つる枯れ病、炭疽病、うどんこ病、ダニ類、アブラムシ等)を防除するための農薬散布や追肥、水やり等をメインにした管理作業を行います。

一般的には、春植え・夏収穫の夏野菜として知られていますが、時期をずらして栽培すれば秋まで収穫できるそうです。

2)きゅうり栽培のポイント

きゅうり栽培のポイントは「土壌づくり」・「病害虫の防除」・「追肥と水」の3つです。

土壌づくりは、苦土石灰・堆肥・化成肥料等を元肥に、十分な耕耘作業を行うのが良いとされています。定植直後は、地温の高さがその後の生育に大きな影響を及ぼしますので、黒マルチを使用する場合には、早めの準備を心がけてください。

病害虫の防除は、殺虫や殺菌を用途とする農薬の散布作業を中心に行います。農薬が入るパッケージやボトルには、散布回数の限度や散布の期限等が記載されていますのでこれを厳守の上、作業を進めてください。

追肥と水の量は、収穫を開始した段階から少しずつ増やしていきます。この時期は、とにかく「肥料と水を切らさない」ことが重要になります。

追肥は、収穫開始以降10日に1回を目安に、化成肥料を1株当たり大さじ1杯程度を施します。水やりは、少量多潅水による潅水作業が有効だそうです。

3)少量多潅水による潅水作業

きゅうりの施設栽培では、「少量多潅水」による水やり作業が効果的といわれています。

少量多潅水とは、少量の水を時間をかけながら回数を重ねて与える潅水方法で、農作物のストレスを最小限に抑える効果から収量の向上等が期待できます。

2.少量多潅水を用いた実証事例

「ゼロアグリ(ZeRo.agri)」を使用したきゅうりの実証実験(佐賀県)

ゼロアグリ(ZeRo.agri)は、農作物に必要な水分量をAIが算出して潅水や施肥作業を自動で制御するAI搭載型の潅水施肥システムです。

土壌の保水力は粘土質か砂質かによって異なるという性質の元、48時間の準備潅水を行った後、AIシステムが圃場の土壌条件を認識して土壌水分量を一定に保つように潅水を制御します。きゅうりを対象にした実証実験では、前年比120%を上回る収量を実現しました。

・AI潅水施肥ロボット ゼロアグリ

https://www.zero-agri.jp/

3.きゅうり栽培に適した潅水制御装置

きゅうり栽培の少量多潅水では、「点滴潅水」と呼ばれる方法が用いられます。

点滴潅水とは、点滴のようなゆっくりとした水やり作業を行う方法で、灌水チューブを地表に設置するタイプと地中に埋没するタイプの2つの製品のいずれかを使用します。

また、「肥料と水を切らさない」という栽培上の特性から、潅水と施肥を同時に行う液肥混入機を利用する農家も多くいます。

液肥混入機で有名なのは、株式会社サンホープが販売するドサトロンで、配管されたパイプに流れる水量を動力源とします。

・液肥混入機ドサトロン

https://www.sunhope.com/products/dosatron.html

4.各生育ステージにおける潅水方法

定植前

きゅうりの苗は、根を土の奥深くまで張らせる必要があります。

そのため、定植前の土壌については、表面が乾いた状態の方が良いとされています。

成型した畝には、定植1週間前を目安に1度だけ十分な水やり作業を行います。

苗の根を畝の奥深くまで張るためには、ある程度潅水を制限したほうが良いそうです。

定植後

定植後は、苗の活着を目的に水やり作業を行います。かけすぎに注意しながら株元に潅水するのがコツだそうです。

苗は5~7日程度で活着しますので、その後は定植前と同様、潅水を制限しながら2週間程度を目安に十分に根を張らせていきます。

活着後は、3日に1回程度を目安に潅水作業を進めてください。

収穫期

収穫期は、株の負担が大きくなり蒸散量が上昇しますので、水不足を起こさぬよう少量多潅水による潅水作業を行います。

尚、当社の遠隔潅水制御システム「SenSprout Pro 潅水制御システム」を使用すれば、インターネットを使って、ビニールハウスへ行かなくても少量多潅水を行うことができます。液肥混入機ドサトロンとの併用も可能ですので、気軽にお問い合わせください。

5.まとめ

きゅうりは、農家や一般消費者が自食用として栽培することも多い農作物です。

当社の「SenSprout Pro 潅水制御システム」は、大規模農業やビニールハウス等の施設園芸はもとより、家庭菜園でも使用できる装置になっています。

ぜひ、この記事を参考にきゅうりの栽培にチャレンジしてみてください。

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