株式会社KOMATSU FLOWERについて
約10年前にお父様がお亡くなりになり、農作業に追われる日々が続いた後、2019年に法人化して現在は3年目。今では正社員2名 パート10名を雇用する農業法人へと成長された、株式会社KOMATSU FLOWERの小松代表取締役にお話をお伺いいたしました。
株式会社KOMATSU FLOWER
代表取締役社長 小松 大作様
Q、株式会社KOMATSU FLOWERの創立は何年ですか?
A、会社の創立は令和元年8月1日です。その前は50年ほど家族経営の農家でした。祖父が始めたので、私が3代目です。
Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。
A、正社員が2名、パートが10名です。
Q、小松社長が農業を始められたきっかけを教えて下さい。
A、家が農業をしていたので、高校の進路を決める頃から「将来は農業を継ぐだろう」と思っていました。「継げ」と言われた記憶はありません。トルコギキョウを始めたきっかけは、高校時代に言われた父のアドバイアスです。当時輪菊とストックを作っていましたが「おそらく将来的にはトルコギキョウが良くなると思うから、高校を卒業したらトルコギキョウを勉強できる久留米の試験場に行ったらどうだ」と言われました。それがきっかけでトルコギキョウを勉強して、メインの作物にしました。
Q、小松社長の経歴を教えて下さい。
A、唐津の農業高校を卒業後、久留米の農業関係の短期学校に2年間行って、20歳で親元就農しました。
Q、株式会社KOMATSU FLOWERの栽培作物を教えて下さい。
A、トルコギキョウです。コロナの影響で単価は下がっていますが、量を出荷しているので売上は伸びています。ただ、婚礼・お葬式向けの品種を栽培しているので、中止や延期の影響は受けています。
Q、株式会社KOMATSU FLOWERの栽培面積を教えて下さい。
A、ビニールハウスが40棟、面積が2500坪(0.8ha)です。露地栽培は3000坪(1ha)で、ほとんどがユーカリです。あとはアカシア(ミモザ)も作っています。
Q、株式会社KOMATSU FLOWERが農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。
A、農作業支援と加工品の製造をしています。農作業支援では、近隣のトルコギキョウ農家さんに、うちのスタッフが作業に行っています。まだまだ割合は少ないですが、3年ほどやらせてもらっています。標高が高いところの農家さんなので、作業時期が被りません。標高600mほどの場所で、会社のある場所より気温が8度ほど低いのです。
加工品は、ハーバリウムやドライフラワーを作っています。
Q、小松社長が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?
A、人材育成と生産管理です。
株式会社KOMATSU FLOWERの人材育成について
Q、株式会社KOMATSU FLOWERの平均勤続年数はどのくらいですか?
A、2~3年です。
Q、株式会社KOMATSU FLOWERの従業員の平均年齢はいくつくらいですか?
A、40歳です。
Q、人材育成は上手く行っていますか?
A、うまくいっていること、うまくいっていないこと、両方あります。
Q、その理由をおしえてください。
A、社員・パートさんが自主的に動き始めるのを見ると、私が日々伝えていることが少し伝わったのかなと思いますね。例えば、新しい規格表を作ると会議で決まると「誰が作るの」となりますよね。でも言ってないのに、自宅に持ち帰って作ってきてくれました。LINEで「これでいいですか」と確認の連絡がきたときはありがたかったですね。ビニールハウスの作業でも現場の主任が、みんなが働きやすいようにするにはどうすればいいか相談にきました。それで決まったことは、自分たちで形にしようとしてくれます。
上手くいっていない場合はだいたい経営者に問題があると思います。現場が上手く回っている時に余計な情報を入れたり、経営者目線の話をしたりして現場を混乱させています。私も選別作業の人たちが新しいやり方を始めたときに今までのやり方を入れようとして、混乱させてしまったことがありました。もう少し客観的に見て、現場のリーダーに確認するように話せばよかったと思っています。だから最近は、少し我慢するように意識しています。
うちはチームワークが良いと思います。妻によく言われるのは、私がいないときが1番雰囲気いいと。でも1人2人はピリッとする人がいないと、会社が成り立つのは難しいです。どこかでシビアな場面があるので、そのときは私が出ればいいと思っています。個人面談で、そんな話をすることも増えています。今年の7月から来始めた人に「仕事はどうですか」と聞くと「思ったより大変だけど楽しいです」と言ってくれました。だから「これからいろんなことを覚えていく中で、今まで優しくしてくれている人も優しさを持ってシビアな話をすることもあります。そこはしっかり受け止めてください」と話すようにしています。そうやって社長が呼び水を与えることで、注意する人が悪者にならないような雰囲気作りをしています。1個の商品を作るのにいろんな現場の人が関わっているから、それに対して意見があるのは当然です。だから聞く側が耳を傾けて、言われたことを修正していくようにしないといけません。
他にも妻によく言われているのが、父が亡くなった当時の60代以上の年齢層の人は、私がいるから来ているのではなくて、母がいるから来てもらっているということです。振り返ると、12年前に父が亡くなるときまでは私と両親の家族経営で、農繁期だけ今10年以上来ているパートさんとあと2人パートさんに来てもらっていました。父が亡くなった翌年に、今の10年以上来ているパートさんに「年間の雇用になってほしいです」とお願いしたら、あと1年待ってほしいと言われました。当時私は29歳で、信用もなかったのでしょうね。でも1年後に年間雇用になってくれて、今でも来てくれています。その人は仕事を自分事のように考えてくれる人です。
父が亡くなったとき、作業から逃れられないと思いました。当時父は56歳、母は53歳、私は29歳でした。母も泣く暇もないくらい作業しました。売上は父が亡くなった年が過去最高でしたが、それから3年は500万円ほど下がりました。母とパートさんでなんとか食い止めて、つないでいました。このままだと死ぬまで仕事のために仕事をすることになると感じました。なんとかしたいけど、やり方がわからない。そんな時に平田さん(株式会社クラベル・ジャパン 代表取締役社長 平田 憲市郎様)に同友会に来ないかと声をかけられました。父が亡くなる前も同じことを言われていましたが、その時は時間がないから行く暇がないと言っていました。でも父が亡くなって3年目くらいに、母とパートさんにお願いして行かせてもらいました。すると考え方が180度変わり、そこから毎年1000万円くらい売上が伸びました。現場を客観的に見るようになって、品目の見直しや売り方を変えたことが良かったのでしょう。面積は変えなかったので、生産性が伸びました。それからデータを基に話ができるように、数字を見るようになりました。
Q、人材募集は行っていますか?
A、しています。
Q、人材募集はどのような方法で行っていますか?
A、前は口コミと紹介でしたが、去年からハローワークに出しています。7月からハローワークを通して2名のパートさんが来てくれるようになりました。
Q、人材採用で苦労されている点について教えて下さい。
A、採用の間口を広げると、会社の雰囲気に合わない人を採用してしまうことがあります。するとスタッフがよくない感情を持って全体の雰囲気が悪くなり、辞めてもらうところまで考えないといけません。今までは誰かの紹介で人を入れていたので、会社の雰囲気に極端に合わない人はいませんでした。
これを改善するために、面接の方法を変えました。今までは私1人で面接していましたが、妻と社員の3人で面接するようにしました。3人相手の面接だと相手側もかわいそうなので、妻と社員は同じ部屋の少し離れた場所から見てもらうという感じです。
株式会社KOMATSU FLOWERの生産管理について
Q、農業生産している中で、一番苦労した点は何ですか?
A、トルコギキョウの連作障害です。
Q、それはどのように解決されましたか?
A、連作障害には病気と肥料過多という2つのポイントがあります。作物は好きな肥料ばかり吸収するので、土の中の養分が偏ってしまいます。すると病気が発生しやすくなります。トルコギキョウの場合は青枯れですね。過去に6年連続でトルコギキョウを作付けした場所は、9割ほどが枯れてしまいました。それまで連作障害の対策は太陽消毒のみで、農薬は使いませんでした。こだわりがあったわけではなく、他の方法を知りませんでした。でも、それからは青枯れに効く農薬を使って消毒するようにしました。すると青枯れが起こることもなくなりました。農薬を使うことで、土の中をリセットできていると捉えています。今では農薬を散布した後に有効菌を定期的に入れて、土の環境作りをしています。もちろん土壌診断も毎年します。土の中は引き算ではなく足し算、足りない養分を加えるという考えです。そうやってトータルで養分のバランスがとれるようにしています。
Q、農業生産において独自で工夫されているところはどのような点ですか?
A、製造業という観点で、仕事を細分化しています。これのメリットが3つあって、作業指示がしやすいこと、作業時間の目安がわかること、トレーサビリティが追いかけられることです。うちでは、作業終わりに「誰が1時間当たりどれくらい作業したか」を、LINEで報告するようにしています。これで作業の目安時間がわかるので、新規の方が来たときは具体的な数字をお伝えできます。「この時間でできるのが当たり前になるようにしましょう」と数年前にやり始めて、だんだんと形になってきました。同じように選花場でも「誰がどの品種をどれくらいの時間で選花したか」を記録しています。記録することで、例えば市場からクレームがきたときに、ちゃんと注意できます。誰が選花したか確証が持てないと、人の話はあまり入ってきませんよね。でも、選花したのは自分で間違いないという状況だと、人の話を素直に聞きやすくなります。それで再発防止につなげています。
最初は私の伝え方が悪いこともあって、不満の声もありました。ノルマに感じるから辞めたいという方もいました。でも1度、1時間ほどかけてじっくり説明するとみんな理解してくれて、なんとか定着しました。
Q、現在、農業生産において困っていることはありますか?
A、中山間地域なので、まとまった土地が手に入らないことです。
小松代表取締役が目指す農業の未来
Q、今後の展開について考えていることを教えて下さい。
A、他の中山間地域と同じように、この地域も人が減って耕作放棄地が増えています。今後は地域が寂れて、農業がやりにくい環境になることがわかっているので、そうなる前に、耕作放棄地で利益が出せるようにしたいです。それが地域の景観維持と雇用の創出につながります。具体的には、地形のハンデが少ないユーカリなどの切り枝の栽培を増やしていこうと考えています。地域の景観や雇用を維持しつつ、会社の拡大につなげたいですね。
Q、小松社長が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。
A、おそらく個人農家さんはほとんどが淘汰されるでしょう。ある程度大規模化を図っているところしか、存在できなくなると思います。悠々自適にスローライフが楽しめる農業をしたい方もいます。それはお金があれば可能です。ただ、現実はなかなかそうはいきません。だから農業でも1つの企業が個人農家さんをサポートする体制が必要だと思います。私の地元にも農家の方がたくさんいるので、バックアップできるような会社でありたいと思っています。大それたことなのは承知しています。
インタビューを終えて
小松社長は、生産性の向上に熱心に取り組まれ、同じ面積で出荷量を大幅増加させることに成功されました。
生産性向上するためには、機械化や工程管理や分析など作業改善の取組が重要です。
しかし、小松社長のお話をお伺いしている中で、その仕組みを実行する「人」に対して、丁寧に時間をかけて納得するまで話をすることに力を入れられた結果、会社と従業員が共に成長していったのだと感じました。これからのさらなる飛躍を期待しております。