A-noker株式会社 安東 浩太郎様

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A-noker株式会社について

有明海に面し、引力が見える町と言われる佐賀県の太良町で、森を切り開き新たに農場を作り、新しい農業の形を実践してたどり着いたアスパラガス『森のアスパラ』。

その栽培へのこだわり、販売方法へのこだわりについて、A-noker株式会社の代表取締役である安東 浩太郎様にお話を伺いました。

代表取締役 安東 浩太郎様

A-noker株式会社

Q、A-noker株式会社の創立は何年ですか?

A、平成25年4月に個人事業として始めて、平成30年12月3日に会社を設立しました。

Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。

A、正社員1人と、パートが5人です。あとは「おてつたび」というマッチングサイトを通して1人、手伝いに来ています。これから繁忙期なので2~3人増やす予定です。6~9時の収穫作業だけ手伝ってもらうので、オンライン授業が主流になった学生さんとうまくマッチしています。収穫が終わって授業に出てもらうといった、新しい働き方ができています。

Q、安東社長が農業を始められたきっかけを教えて下さい。

A、元々私は大阪でサラリーマンをしていましたが、結婚を機に佐賀県移住してきました。太良町は「月の引力が見える町」というように、有明海の干満差が8mもあって、まさに月の引力を実感できる町です。自然も豊かで食べ物もおいしい。海と山が近いから、海産物・農産物ともに豊富です。また、畜産も盛んですね。そんな太良町の魅力に惹かれて「ここに住みたい」と思いました。住むためには仕事が必要ですよね。サラリーマンの仕事は少ないし、公務員はいっぱい。でも、農地はこれから空くと聞いて「農業はチャンスがあるかも」と思いました。それで農業法人や農協で勉強して、アスパラガスにたどり着きました。

でも太良町に知り合いがおらず、農業経験もなかったので、農地の取得などを含めて農家になるまで3年かかりました。

Q、安東社長の経歴を教えて下さい。

A、福岡の大学を卒業後、大阪で8年間不動産の仕事をしていました。それから佐賀県の吉野ケ里にある農業法人に2年勤めました。60haほど農地がある農業法人で、米麦、キャベツを生産していました。ここでの経験は経営の勉強になりました。そして太良町で1年間農協の契約社員をして、農地が見つかったため就農しました。

Q、A-nokerの栽培作物を教えて下さい。

A、グリーンアスパラガスです。

Q、A-nokerの栽培面積を教えて下さい。

A、栽培面積は55aで、ビニールハウスは20棟あります。元々みかん山だったところを、町の補助金を利用して切り開きました。雲仙普賢岳が見えて、景色が良いですね。

Q、A-nokerが農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。

A、特にありません。梱包をAnd Farmers株式会社委託して出荷しています。

And Farmers株式会社とは、佐賀県武雄市にある会社で、観光農園、直売所、物流拠点となる会社です。農地を2万平米購入する予定で、そこに年中できる観光農園と直売所をつくります。また、野菜を集めて出荷する物流拠点としての役割も果たします。私のアスパラガスの販路には高級飲食店がありますが、そこの料理人さんから「ほかの野菜はありませんか」と聞かれます。1種類ずつ送っていると送料の負担が大きくなるので、物流拠点に集めて一斉に送り、送料の負担を減らします。今は実施に向けて、少しずつ農産物を集めています。

Q、安東社長が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?

A、販売と人材育成です。

A-nokerの人材育成について


Q、A-nokerの平均勤続年数はどのくらいですか?

A、ずっと家族経営で、面積拡大に伴って去年から人を雇い始めました。だから勤務は1年生がほとんどです。

Q、A-nokerの従業員の平均年齢はいくつくらいですか?

A、50歳くらいです。社員の1人は38歳です。パートさんは子どもがいて日中働けない方ばかりなので、基本的に6~9時の収穫だけ来てもらいます。そして管理は社員にやってもらうというように、分業制にしています。私は現場に入らないようにしているので、社員が中心となって回しています。

Q、人材育成は上手く行っていますか?

A、うまくいっている部分もあれば、うまくいかない部分もあります。

Q、その理由をおしえてください。

A、今はこれ以上面積を増やさないと決めて、農業参入者への支援をしています。農業をしたい人が増えているので、そのサポートをしている感じです。すでに3年前に研修を終えて独立した人が、うちの畑の近くでアスパラガスを作っています。それを全部買い取って、まとめて出荷しています。

でも、中には続かない人もいました。コツコツ続けられる、真面目な性格の人がアスパラガスには向いています。アスパラガスは毎日収穫しないといけないので、少しでも楽をしたい方には向きません。あとは金銭面の高い参入障壁に耐えられるかです。今は佐賀県の補助事業でビニールハウスを建てるのに約2年かかります。そこから植えて育つまでもう1年。合計で3年かかります。だから我慢できない人が多いのです。就農補助金をやりくりしても、貯金がない人には苦しいのが現状です。でも、その3年を我慢できれば、ランニングコストは安いです。ビニールハウスは安い単棟ハウスでいいですし、燃料も不要。植え替えがないので、トラクターも不要です。市場の価格も安定しています。

Q、人材募集は行っていますか?

A、収穫作業のみ募集しています。

Q、人材募集はどのような方法で行っていますか?

A、「おてつたび」というサイトを使っています。「おてつたび」とは、登録者と企業をマッチングするサービスです。登録者は年齢問わずさまざまな方がいますし、業種も農業に限らず、旅館や個人商店などさまざまです。「おてつたび」に募集を出して、1日でもマッチングすれば来てもらいます。これがスマホ1つでできます。「おてつたび」を通して、いろんな経験がしたい若い人たちと農業の接点ができて、農業に興味を持ってもらえればいいと思います。私は学生さんや若い人を採用するようにしていますけど、50代の主婦やIT系の会社員から申し込みがくることもあります。土日祝日を設定すれば、そこを狙ってやってくる会社員さんもいるでしょうね。

Q、人材採用で苦労されている点について教えて下さい。

A、あまりないです。世界初の収穫ロボットの実験圃場としてメディアに出たおかげで注目されたので、求人を出すとすぐに申し込みがきます。

実験はinaho株式会社さんと協力して進めています。収穫ロボットの発展は時間がかかると思いますが、誰かがやらないと発展しません。その際、現場の知恵は必要です。だから私が協力すると言って実証実験が始まりました。収穫という最も大変な作業が効率化されることは、農業の発展に不可欠だと思います。もし収穫ロボットが利用できるようになれば、農業をしたい子どもたちも増えると思います。そして、アスパラガスは兼業でできるのではないかと考えています。それを実証しようと思い、あえて私は現場に入らないようにしています。

A-nokerの販売戦略について

Q、A-nokerの主な販売先はどちらですか?

A、すべて直販で、飲食店が4~5割、残りが関東や福岡の高級量販店です。でも、飲食店はコロナの影響で大きく減りました。その中で、登録しておいただけの産直ECに助けられました。利用しているECサイトはポケマルと食べチョク。あとはふるさと納税に登録しています。それまでは2000件程度しか注文がありませんでしたが、なぜか5000件まで増えました。あまりにも多かったので、途中で注文をストップせざるを得ませんでした。既存のお客さんに加え、一度買われた方がリピーターになってくれたのでしょうか。

Q、A-nokerは直販されていますか?

A、ポケマルと食べチョクでは、直接お客様へお届けしています。ほとんど直接お客様や料理人さんにお届けしております。

Q、販売戦略において苦労されていることはありますか?

A、コロナと直販ECが少し落ち着いてきましたが、飲食店はまだ元に戻っていません。なので、今年の販売先をどこにしようか悩んでいます。

Q、販売戦略において工夫されていることはありますか?

A、梱包の際に、必ず手書き(筆ペン)で一言添えるようにしています。かつてはアンケートも同封していました。直販なので、お客さんの声を真摯に聞くようにしています。喜びの声もお怒りの声も聞いて、経営改善に結びつくようにしています。

また、できるだけおいしいものを食べていただきたいので、アスパラガスを規格より2cm長く出しています。アスパラガスは根元の方が甘くておいしいうえに、私たちのアスパラガスは筋が少なくて柔らかいのが特徴です。料理のレシピも同封して、アスパラガス本来の良さを届けられるようにしています。

肥料もカニ殻や牡蠣殻を入れています。太良町は海が近く、竹崎カニ・竹崎牡蠣というブランドがあります。自ら発酵肥料をつくり与えることで、うま味のある味に変わりました。

あとは私が富裕層をターゲットに営業をしています。国産アスパラガスの出荷量は年間約2万5千tです。そのうち1%は富裕層に届くと思っているので、その1%を確実にとれるよう営業に励んでいます。

安東社長が目指す農業の未来

Q、今後の展開について考えていることを教えて下さい。

A、引き続き、アスパラガスを作りたい人に、販売の手伝いも含めて教えていくつもりです。また、循環型農業も進めていきます。佐賀県にはクリークがあって、毎年掃除しないと水の流れが悪くなります。その掃除のときに出てくる水草には、ミネラルがたくさん含まれています。それを肥料化するプロジェクトを動かしています。私のアスパラガスで実験して、効果も出てきています。そのように捨てられるものを利用して、社会的な課題の解決にも取り組んでいるところです。

Q、安東社長が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。

A、子どもたちが喜んで田んぼや畑に入る姿が1番だと思うので、そのような場所を作りたいですね。農業にふれる機会を増やして、おいしいものを食べて健康になってもらいたい。

また、日本は土地が狭いので、効率化は切っても切れないところです。今後は効率化の技術をさらに発展させて、人口増加で食糧難に陥っている地域を助けに行くような、そんな子どもたちを育てたいです。昔の農業には、自分たちの技術は自分たちのものという囲い込みの風潮がありました。でも情報化社会の今は、みんなで共有してwin-winの関係になればいいと思います。

Q、安東社長から若手農家へひとことお願いします。

A、農業はまだまだブルーオーシャンだと思います。やればやるだけ対価が現れるものだと思います。だから私は、農業を楽しくできる仕組みを作ろうとしています。農業に興味がある方は、ぜひ農家さんと直接会って話してみてください。

インタビューを終えて

良いものを作るのは当たり前、商品にしっかりとした価値を付け、どのようなお客様にどの様にして販売するのか、異業種から新規就農された方ならではの様々な取り組みについて安東社長からお話を聞くことが出来ました。

農業はブルーオーシャンとおっしゃり、これからは観光農園を通じて、農業の楽しさや食の大切さを伝えながら、新規就農者の支援活動、生産者のこだわり野菜の販売活動などにも力を入れるとのこと。

安東社長とA-nokerの今後が楽しみでなりません。

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