パプリカは私たちの食卓に華やかさを与えてくれる人気の野菜です。この記事では、パプリカ栽培における潅水作業のポイントと注意点について解説していきます。
目次
1.日本のパプリカ栽培
2.パプリカ栽培の手順
3.潅水作業のポイントと注意点
4.まとめ
1.日本のパプリカ栽培
1)パプリカとは
パプリカは、ナス科トウガラシ属に属する果菜類の野菜です。
原産は南アメリカ大陸で、赤や黄色、オレンジなど様々な色をした品種があるのが特徴です。
パプリカの歴史は古く、「アメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスの一行が持ち帰り、ヨーロッパに広まっていった」と言われています。
ピーマンとの大きな違いは、実が完全に成熟してから収穫する点で、可食部100グラム当たりに含まれる栄養素の量も多いことが分かっています。
※参考資料(1)
可食部100グラム当たりに含まれる栄養素の量(赤パプリカ)
・エネルギー(30キロカロリー)
・水分(91.1グラム)
・カリウム(210ミリグラム)
・マグネシウム(10ミリグラム)
・リン(22ミリグラム)
・ビタミンA※β-カロテン相当量(1100マイクログラム)
・ビタミンK(7マイクログラム)
・ビタミンB1(0.06ミリグラム)
・ビタミンB2(0.14ミリグラム)
・ナイアシン(1.2ミリグラム)
・ビタミンB6(0.37ミリグラム)
・葉酸(68マイクログラム)
・ビタミンC(170ミリグラム)
・食物繊維総量(1.6グラム)
日本での主な生産地は、宮城県、茨城県、大分県、北海道、山形県の1道5県で、日本で生産されるパプリカのおよそ半分を、宮城県、茨城県、大分県の3県で生産している状況です。
※参考資料(2)
2020年度 都道府県別生産量ランキング
1位:宮城県(1370トン)
2位:茨城県(1280トン)
3位:大分県(898トン)
4位:北海道(720トン)
5位:山形県(605トン)
しかし、国内で流通するパプリカのほとんどは海外からの輸入品で、国産品が占める割合は1割前後しかありません。
※参考資料(3)
パプリカの国別輸入シェアランキング(2017年)
1位:韓国(78.7%)
2位:オランダ(12.5%)
3位:ニュージーランド(8.6%)
そのため、新規就農等を機にパプリカ栽培に挑戦する生産者も多く、次世代型の園芸施設を利用した生産・管理マニュアルが作られるなど、特産品づくりに向けた様々な取り組みが行われています。
2)日本で栽培されている品種の一例
・赤パプリカ
天然の有機化合物のひとつである「カプサイシン」を多く含む品種。活性酸素を取り除く高い抗酸化作用がある。人間の体の代謝を促進する働きがあるためダイエットに利用する人も多い。
・黄パプリカ
肌の老化を予防する働きがある「ルテイン」を多く含む品種。美肌効果などアンチエイジングを目的に食べる人も多い。
・オレンジパプリカ
赤パプリカと黄パプリカ両方の栄養素を含む品種。若返りのビタミンとして有名な「ビタミンE」も豊富に含む。
・紫パプリカ
ポリフェノールの一種である「アントシアニン」を多く含む品種。眼精疲労や視力の回復など目の老化防止に食べる人もいるが、一般のスーパーで見かけることは少ない。
・黒パプリカ
紫パプリカと同様、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」を多く含む品種。サラダやピクルス、炒め物などの料理に使えるが、一般のスーパーで見かけることは少ない。
・ミニパプリカ
長さ5センチ・重さ20グラム程度の小さい品種。通常の大きさのパプリカと同様、赤や黄、オレンジなど様々な色の品種がある。種がほとんど無いためサラダや付け合わせに便利。
2.パプリカ栽培の手順
種まき・育苗管理
(1)苗箱に土を入れ、深さ1センチ・幅3センチ程度の溝を堀り、種を条まきする。
(2)種が流れないよう、霧吹きなどで水やりをする。
(3)苗箱をトンネル型のビニールハウス(新聞紙等で覆うのも可)に入れ保温し、土が乾かないよう水やりをして管理する。
(4)発芽したら日当たりと風通しが良いところに保管する。
(5)本葉が2~4枚生えたら農業用ポットに移植する。
(6)本葉が8~10枚生えたら定植する。
土づくり・定植
(1)定植2週間以上前に苦土石灰を約50グラム(1平方メートル当たり)、堆肥を約2キログラム(1平方メートル当たり)を施して深く耕す。
(2)定植1週間前に化成肥料を約100グラム(1平方メートル当たり)、施して再び耕す。
(3)幅70センチ程度の畝をつくる。
(4)黒色のマルチシートで畝を覆う。
(5)畝の中心に株間30センチの穴を掘る。
(6)苗を植えたポットに水をたっぷり含ませる。
(7)農業用ポットから苗を抜き、水分を十分に含ませる。
(8)掘った穴に苗を植え付ける。
(9)根元に水やりをする。
栽培管理
(1)主枝を2本に仕立て、実をならせる数を調整できるようにする。
(2)一番花が咲くまでは、まっすぐ真上に育てる。
(3)一番花が咲いた場所から、枝が二手に分かれていくので、その2本を伸ばしていく。
(4)二番花、三番花は実をならせず、花の状態の内に摘果して、枝葉を大きく育てる。
(5)四番花が咲いたら、果実にして大きく太らせていく。
(6)花が咲くたび、枝が二手・三手に分かれるように成長していくため、1本だけを誘引し、その他の枝は2節だけ残してカットする。
(7)果実が大きく育ち、1果目が着色しはじめたら追肥を行う。
(8)カメムシやオオタバコガ、うどんこ病、灰色カビ病などの病害虫に注意する。
収穫作業
(1)実が完全に成熟したら収穫する。
(2)収穫適期は開花後60日前後。
(3)枝が折れやすいためハサミを使用して丁寧に収穫する。
3.潅水作業のポイントと注意点
パプリカはピーマンと同様、多湿と乾燥を嫌う農作物です。
そのため、種まき・育苗・定植の時期には十分な潅水が必要ですが、その後は朝夕2回と土の表面が乾いてきたタイミングで株元に潅水を行えば基本的に問題はありません。
しかし、潅水時に泥の跳ね返りがあると病害虫の発生を招いてしまう恐れがありますので、水の勢いには十分に注意してください。
なお、日本のパプリカを栽培する生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置を利用している生産者もいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けの設備とハウス栽培向けの設備の2種類があります。
潅水制御装置の中には、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムなどインターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるシステムもありますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
パプリカは、栽培が難しい農作物と言われています。しかし、その分、赤や黄色、オレンジ色などカラフルな実がたくさん着いた時の喜びはとても大きなものになるでしょう。パプリカ栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。