にんじんは、たんぱく質や食物繊維、βカロテンなど健康に欠かせない栄養素を多く含む人気の農作物です。この記事では、にんじん栽培における潅水作業のやり方と注意点について解説していきます。
目次
1.日本のにんじん栽培
2.にんじん栽培のポイント
3.潅水作業のやり方と注意点
4.まとめ
1.日本のにんじん栽培
1)にんじん栽培の歴史
にんじんはセリ科ニンジン属に属する根菜類の野菜です。原産は中央アジアで、東洋系と西洋系の2種類があります。
東洋系は細く長い形が特徴のにんじんで、赤や白、黄、紫など様々な色がありますが、西洋系は太く短い形が特徴のにんじんで、きれいなオレンジ色をしています。
日本ににんじん栽培が伝わったのは、16世紀~17世紀(室町時代後期~江戸時代前期)の間で、伝わった当初は東洋系を中心に栽培されていましたが、江戸時代後期に西洋系が伝わると、東洋系の生産量が少しずつ減るようになっていきました。
理由は「栽培の難しさ」で、西洋系の栽培が主流となった現在も全体の5%以下しか栽培されていません。
現在の主な生産地は、北海道、千葉県、青森県、鹿児島県、神奈川県で、日本で生産されるにんじんの約4割強をこの1道4県で生産している状況です。
※参考
都道府県別にんじん生産ランキング(2019年度産)
1位:北海道(16万1900トン)
2位:千葉県(14万2300トン)
3位:青森県(12万1600トン)
4位:鹿児島県(9万3900トン
5位:神奈川県(7万6000トン)
2)日本で栽培されている品種の一例
・黒田五寸(タキイ種苗)
日本のにんじんの代名詞。形が良く色が濃い。
・向陽2号(タキイ種苗)
暖地・冷地を問わず栽培できる品種。種まきから100日程度で収穫できる。
・ベータリッチ(サカタのタネ)
甘い食味が特長の品種。βカロテンを多く含む。
・甘美人(ナント種苗)
フルーツのような甘味が特長の品種。春まき・夏まきのどちらでも栽培できる。
・早どりにんじん(トーホク)
種まきから90日程度で収穫できる極早生品種。長さ12~15センチの小ぶりな形が特長。
・ナンテスニンジン(グリーンフィールドプロジェクト)
ヨーロッパ系統の品種。ソーセージのような形が特長。
・オランジェ(タキイ種苗)
ジュースに最適な甘い品種。寒さに強く貯蔵にも向いている。
・MNN-1801 ミニニンジン(松永種苗)
円筒形をした細身の品種。種まきから70日前後で収穫できるため栽培管理がラク。
・ミニニンジン ピッコロ(タキイ種苗)
直径1.5~2.0センチ、長さ10センチ~12センチのミニニンジン。プランターなどでも栽培できる。
・本紅金時(タキイ種苗)
赤い色をした東洋系の品種。京にんじんとも呼ばれ、関西以西のおせち料理に使用される。
・金美プラス(みかど協和)
黄色のにんじん。カラフルな色が特長でサラダにも向いている。
・パープルターゲット(丸種種苗)
紫色のにんじん。やや細めで丸ごと調理できるのが特長。
・ホワイトハーモニー(丸種種苗)
白色のにんじん。直径2~3センチ、長さ20~25センチの細長い品種。
・ラブリーキャロット(中原採種場)
丸型のにんじん。直径3~4センチでシチューや煮込み料理に向いている。
2.にんじん栽培のポイント
土壌づくり・種まき・発芽
(1)にんじんは連作に弱いため、過去1~2年の間、栽培していない畑を選ぶ。
(2)前回の栽培でネコブセンチュウが発生した圃場の場合は、専用の薬剤であらかじめ消毒しておく。
(3)種まきの2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり100グラム、完熟堆肥を1平方メートル当たり約3キログラム、過リン酸石灰を1平方メートル当たり約30グラムまいてよく耕す。
(4)幅40センチ(1条植えの場合)、幅60センチ(2条植えの場合)の畝をつくる。
(5)畝面をできるだけ平らにする。
(6)畝に幅2~3センチ、深さ1センチ程度の溝を掘る。
(7)掘った溝に種を2~3ミリ間隔でまいて、5ミリの高さで覆土する。
(8)覆土した部分を手や鍬で軽く押さえる。
(9)水やりをする。
(10)乾燥を防ぐため覆土した部分に農業用の不織布やワラ、腐葉土を被せる。
(11)こまめに水やりをする。(発芽までの間 ※5~10日)
栽培管理
(1)本葉が1~2枚生えてきたら1回目の間引きを行う。(短根種:1~2センチ間隔・ミニ系:1センチ間隔)
(2)本葉が3~4枚生えてきたら2回目の間引きを行う。(短根種:3~4センチ間隔・ミニ系:2~3センチ間隔)
(3)1回目の追肥を行う。(化成肥料を1平方メートル当たり約50グラム)
(4)本葉が5~6枚生えてきたら3回目の間引きを行う。(短根種:10~12センチ間隔・ミニ系:6~8センチ間隔)
(5)2回目の追肥を行う。(化成肥料を1平方メートル当たり約50グラム)
(6)ネキリムシ、キアゲハの幼虫、キンウワバの幼虫、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、うどんこ病、軟腐病、黒葉枯病、黒斑病などの病害虫に注意する。
収穫作業
(1)根の肩の部分が出ていた場合は土寄せをする。
(2)根元近くの部分を手で持って引き抜く。
(3)三寸にんじんは種まき100日後、四・五寸にんじんは種まき110~130日後が収穫適期。
(4)収穫が遅くれると根が裂けてしまうので、収穫のタイミングには十分に注意する。
3.潅水作業のやり方と注意点
種まき直後
にんじんは発芽しにくい農作物のため、種まき後にしっかりと水を与える必要があります。そのため、発芽までの期間は回数や時間を決めて潅水作業を行うのではなく、土の表面が乾いてきたタイミングで潅水作業を行うようにしてください。
ただし、土の表面が乾いていないタイミングで潅水作業を行うと、根腐れを引き起こす場合がありますので、やり過ぎには十分に注意しましょう。
生育後期
発芽に多くの水分必要とするにんじんですが、生育後期は過湿を嫌います。そのため、生育後期は自然の雨のみを基本に、極端に雨が少ない時だけ潅水作業を行うようにしましょう。
なお、日本のにんじん生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者もいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けの設備とハウス栽培向けの設備の2種類があります。
潅水制御装置の中には、にんじん栽培に適した「散水潅水」と呼ばれる自然の雨のような潅水作業を実行する装置もありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
にんじんは私たちの食卓に彩りと華やかさを与えてくれる人気の野菜で、最近では家庭菜園など庭先やプランターを利用してにんじん栽培に挑戦する人も増えています。にんじん栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。