かぶは、漬物や汁物、和え物など私たち日本人の食卓に多く並ぶ人気の農作物です。この記事ではかぶ栽培における潅水作業のコツと注意点について解説していきます。
目次
1.日本のかぶ栽培
2.かぶ栽培のポイント
3.潅水作業のコツと注意点
4.まとめ
1.日本のかぶ栽培
1)かぶ栽培の歴史
かぶはアブラナ科アブラナ属に属する根菜類の野菜です。
原産は、地中海沿岸・ヨーロッパ南西部および中央アジア・アフガニスタン地域で、ヨーロッパ系(小型)とアジア系(中型・大型)の2種類があります。
世界におけるかぶ栽培の歴史は古く、古代ギリシアや中国・周王朝が栄えた紀元前の時代にはすでに食用として栽培が始まっていたようです。
日本に伝わったのは、弥生時代に入ってからで、史上3人目の女性天皇である持統天皇(645年~703年)が五穀(米・麦・アワ・ヒエ・豆)に次ぐ作物としてその栽培を奨励するなど、私たち日本人の食生活に古くから根付いていた様子を示すいくつかの史料が残されています。
現在の主な生産地は、千葉県、埼玉県、青森県、京都府、滋賀県の1府4県で、東日本ではヨーロッパ系を中心に、西日本でアジア系を中心に、それぞれの地域の特性に合わせた様々な品種が栽培されています。
・参考
2020年度都道府県別かぶ生産ランキング
1位:千葉県(2万5300トン)
2位:埼玉県(1万6100トン)
3位:青森県(6840トン)
4位:京都府(4740トン)
5位:滋賀県(4570トン)
2)日本で栽培されている品種の一例
・小かぶ
直径5~8センチほどで収穫される小さなかぶ。丸形でやや平らな形をしているのが特徴。日本で生産されるかぶの中で最も流通量が多い。
・大かぶ
直径15センチほどで収穫される大きなかぶ。小かぶと同様、丸形でやや平らな形をしているのが特徴。京都の伝統野菜として有名な「聖護院かぶら」などが有名。
・赤かぶ
アントシアニン系の色素で実が赤くなったかぶ。表面だけが赤いもの、果肉も赤いもの、葉や茎も赤いものなど様々な種類がある。漬け物やサラダに向いている。
・あやめ雪かぶ
首の部分が薄い紫色をしている品種。大きさは小かぶと同じくらいで浅漬けにするとおいしい。種苗メーカーのサカタのタネで販売している。
・万木(ゆるぎ)かぶ
赤かぶの一種。滋賀県高島市で生産されてきた滋賀県の伝統野菜で鮮やかな赤紫色が特徴。
・もものすけ
種苗メーカーのナント種苗が開発した赤かぶの一種。手で皮を剥けるの特徴で外見は万木かぶに似ている。
・桃寿(とうじゅ)
武蔵野種苗園が開発した品種。全体がピンク色で中の果肉は白色をしている。小カブと同じ方法で栽培できるのが特徴。
・うぐいす菜
京都の伝統野菜のひとつ。ウグイスが鳴く頃に収穫されることからこの名が付いた。小松菜の別名と同じだがそれとは異なる。
・北之庄菜
滋賀県近江八幡の伝統野菜。昭和40年頃に一度栽培されなくなったが平成12年頃に栽培に向けた活動が再び始まった。同じ滋賀県の伝統野菜である日野菜(ひのな)の変異種といわれる。
・矢島かぶ
滋賀県守山市に伝わる伝統野菜。地上に出ている部分が紫色で土の中に埋まっている部分が白色をしているのが特徴。生のまま食べてもほんのりとした甘みを感じる。
・すぐき菜
京都の伝統野菜のひとつ。桃山時代に上賀茂神社の社家が贈答品向けに栽培したのが始まりといわれる。京都の三大漬物としても有名。
・片平あかね
奈良県片平地区で古くから栽培されてきた品種。細い大根のような形をしているのが特徴で、奈良県の伝統野菜にも認定されている。
・木曽赤かぶ
長野県木曽の伝統野菜。王滝かぶ、開田かぶ、細島かぶ、吉野かぶ、三岳黒瀬かぶ、芦島かぶの6つの種類がある。紫色に近い赤紫色をしているのが特徴。
・黄かぶ
西洋かぶの一種。海外の種苗メーカーが交配して開発した品種で全体が黄色い。日本の小かぶと同じ形をしている。
・ミラノカブ
イタリアで栽培されている品種。矢島かぶ同様、地上に出ている部分が紫色で土の中に埋まっている部分が白色をしているのが特徴で、日本には種のみが輸入されている。
2.かぶ栽培のポイント
土づくり・種まき
(1)種まき2週間以上前に苦土石灰100グラム(1平方メートル当たり)と完熟堆肥約2キログラム(1平方メートル当たり)を施して深く耕す。
(2)種まき1週間前に化成肥料100~150グラム(1平方メートル当たり)を施して再びよく耕す。
(3)幅75センチの高畝をつくる。
(4)小かぶは15センチ、中かぶは20~25センチ、大かぶは40~50センチの株間を目安に、深さ1~1.5センチ程度の溝を掘る。
(5)種を1センチ間隔でスジまきする。
(6)5ミリ程度覆土して軽く上から押さえる。
(7)水分を十分に与える。
発芽・間引き
(1)本葉1枚の頃に1回目の間引きを行う。
(2)本葉2~3枚の頃に2回目の間引きを行う。
(3)本葉5~6枚の頃に3回目の間引きを行う。
(4)最終的に株間が小カブで約10センチ、中カブが15~20センチ、大カブが30~40センチ程度になるように管理する。
(5)間引きをする際は残す株の根を痛めないように注意する。
(6)直射日光や乾燥、霜の心配がある場合には寒冷紗やトンネルビニールで畝全体を覆う。
追肥・中耕・土寄せ
(1)小かぶの場合は元肥のみで栽培。
(2)中・大かぶの場合は、2回目、3回目の間引きの後、化成肥料を20グラム(1平方メートル当たり)まいて、中耕・土寄せする。
(3)アブラムシ、コナガ、ヨトウムシ、カブラハバチ、根こぶ病、べと病などの病害虫に注意する。
(4)連作を避けると根こぶ病の発生を少なくできる。
収穫作業
(1)小かぶ4~5センチ程度、中かぶ8~10センチ程度、大かぶ20~30センチ程度が収穫適期。
(2)根が肥大したものから間引くように手で引き抜く。
(3)収穫が遅れると裂根を起こす可能性があるため早採りを心がける。
3.潅水作業のコツと注意点
かぶは排水性と保水性に優れた土壌を好む農作物です。
そのため、発芽するまでは土が乾燥しないように小まめに潅水作業を行う必要がありますが、発芽した後は土が乾いてきたタイミングで潅水作業を行えば基本的にOKです。
しかし、水をやり過ぎると病害虫の発生を招く恐れがありますので十分に注意しましょう。
なお、日本のかぶ生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置を利用している生産者もいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けの設備とハウス栽培向けの設備の2種類があります。
潅水制御装置の中には、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムなどインターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるシステムもありますので興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
かぶは春の七草のひとつであるスズナ(葉の部分)など、私たち日本人の生活に古くから根付く伝統的な食べ物です。かぶ栽培にチャレンジする際には、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。