スイートコーンは、大人から子どもまで幅広い年齢層に親しまれる人気の野菜です。この記事では、スイートコーン栽培における潅水作業のポイントについて解説していきます。
目次
1.スイートコーンとは
2.スイートコーン栽培の手順
3.潅水作業のポイント
4.まとめ
1.スイートコーンとは
1)スイートコーン
スイートコーンは、とうもろこしの中でも特に強い甘みを持つ品種の総称を表した言葉です。
特徴は、家畜の飼料や工業用の原料などに用いられる他のとうもろこしとは違い、食用のみを目的に栽培されている点で、たんぱく質やカリウム、マグネシウム、リン、鉄、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、食物繊維などの栄養素も多く含まれます。
平均糖度は16~18度で、一般的には「蒸す・茹でる・焼く」の3つの食べ方が基本ですが、生の状態のまま食べられる品種(通称:フルーツコーン)もあるそうです。
しかし、収穫してから時間が経過してしまうと皮が硬くなり便秘や腹痛、食中毒を引き起こす恐れがありますので、生の状態で食べる際は収穫直後の新鮮なものを選ぶようにしてください。
日本国内での主な生産地(とうもろこし全体)は、北海道、茨城県、千葉県、群馬県、長野県の1道4県で、日本で生産されるとうもろこしのおよそ4割が北海道で生産されています。
※参考
2019年都道府県別生産量ランキング(とうもろこし全体)
1位:北海道(9万9000トン)
2位:茨城県(1万6000トン)
3位:千葉県(1万5900トン)
4位:群馬県(1万1900トン)
5位:長野県(8640トン)
2)日本で栽培されている品種の一例
・普通甘味種
糖度を司るsu遺伝子を持つ品種。日本で栽培されているスイートコーンの基本になっている。缶詰や加工品に利用されることが多い。
・se種
su遺伝子とse遺伝子を併せ持つ品種。砂糖の主成分であるショ糖が多く、粒皮がやわらかい。低カロリーでデンプン量も少ない。
・シナジスティック種
su遺伝子とsh2遺伝子を併せ持つ品種。糖を蓄積する特徴があるため、普通甘味種と比較して糖の含有量が高い。
・スイートブリッド種
su遺伝子・se遺伝子・sh2遺伝子の3つを併せ持つ品種。高糖度かつクリーミーな風味を持つ粒に育つ。
・スーパースィート種
糖を蓄積するsh2遺伝子だけを持つ品種。普通甘味種の約2倍の甘味がある。糖分はショ糖が中心で果糖はわずか。
・改良型スーパースィート種
スーパースィート種にsu遺伝子をプラスした品種。スーパースイート種よりも糖度が高い。糖分はショ糖が中心で果糖はわずか。
・ウルトラスーパースィート種
改良型スーパースィート種にsu遺伝子をプラスした品種。改良型スーパースィート種よりも糖度が高い。発芽率が低いため長い間商品化されていなかったが栽培技術の向上により商品化が進んだ。
・seとsh2の合成種
改良型スーパースィート種にse遺伝子をプラスした品種。改良型スーパースィート種よりも糖度が高くフルーティー。発芽率が高いため栽培しやすい。
2.スイートコーン栽培の手順
土づくり・種まき
(1)種まき2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約70グラム施して深く耕す。
(2)種まき1週間前に化成肥料を1平方メートル当たり約150グラム、堆肥を1平方メートル当たり2~3キログラム施し再びよく耕す。
(3)一条まきの場合は、幅40~50センチの平畝を整形する。
(4)二条まきの場合は、幅80~90センチの平畝を整形する。
(5)黒色のマルチシートで畝全体を覆う。
(6)直径7~10センチ、深さ3~4センチの穴を1列掘る。(一条まきの場合)
(7)直径7~10センチ、深さ3~4センチの穴を2列掘る。(二条まきの場合)
(8)掘った穴に種を3~4粒まく。
(9)2~3センチの高さで覆土して、上から軽く押さえる。
(10)土が乾燥している場合は、水やりをする。
(11)鳥害が心配な場合は、芽が出るまで専用のネットで覆っておく。
(12)本葉が4枚生えたら生育の良い株を1本だけ残して他は間引く。
栽培管理
(1)草丈が50センチ位に成長したらマルチシートを剥がす。
(2)1回目の追肥と土寄せを行う。
(3)茎の先端に雄穂が出たら2回目の追肥を行う。
(4)1番上の雌穂のみを残して他は取り除く。
(5)取り除いた雌穂の皮を剥いてヤングコーンとして利用するのも可。
(6)アワノメイガの発生・被害に注意する。
収穫作業
(1)収穫適期は絹糸が出た20~24日後。
(2)雌穂の絹糸がこげ茶色になったら少し皮を剥いて粒の充実を確かめて収穫する。
(3)早朝に収穫すると食味が良く、長もちする。
(4)早採りや遅採りをしてしまうと甘味が少なくなってしまうため注意する。
3.潅水作業のポイントと注意点
高品質なスイートコーンを栽培していくためには、生長段階に合わせて水やりの方法を変えていく必要があります。
種まき後
・発芽するまでは、土の表面が乾かないようこまめに潅水作業を行う。
・日当たりの悪い場所で栽培する場合は多湿に注意する。
発芽後
・本葉が生えるまでは、乾燥に注意し、土の表面が乾いてきたタイミングで潅水作業を行う。
生育初期
・雄蕊(ゆうずい)が出るまでは、少量~普通量の水を土の表面が乾いたタイミングで、潅水の回数を抑えながら与えると、根が水分を求めて地中深くまで張り出し、より充実した株が育つ。
・潅水の頻度は1週間に1~2回程度が目安で、気温が上がり始める午前中に潅水作業を行う。
・気温が上がり切った時間帯に潅水作業を行ってしまうと、水が太陽熱で温められ、根を傷めてしまう恐れがあるため十分に注意する。
・潅水の量は、1株につき1回当たり約2.0リットル(pF値は1.7~2.1)を目安とする。
生育中期~収穫期
・開花と結実がはじまったら潅水の量を増やし、水切れを起こさないようにする。
・過湿と乾燥を短時間で何度も繰り返すと株が弱るため十分に注意する。
・日中に株が生長し、夕方から夜間にかけて実が大きくなるため、日没の2~3時間前に潅水作業を行う。
・潅水の量は、1株につき1回当たり約3.0リットル(pF値は2.1~2.3)を目安とする。
なお、日本のスイートコーンを栽培する生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者がいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けとハウス栽培向けの2つがあります。
潅水制御装置の中には、とうもろこし栽培に適した資材も数多くありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
スイートコーンは甘さとみずみずしい食感が特徴の野菜です。スイートコーン栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。