目次
1.自動潅水を実現するための事前情報
2.自動潅水の種類と導入コスト
3.潅水のタイミングとその重要性
4.自動潅水用ポンプの種類と手入れ
5.自動潅水におけるメリット・デメリット
1.自動潅水を実現するための事前情報
農作物の栽培には水やりが欠かせません。潅水装置も様々開発・販売されるようになり、今ではタイマーを設定することで自動潅水できるようにもなりました。今後も進化はしていくと思われますが、現時点で、自動潅水を実現するために必要な事前情報についてご紹介します。
自動潅水装置の導入前に知りたいこと
自動潅水装置の導入前に最低限知っておきたいことを取り上げました。
・自動潅水の種類と導入コスト
・潅水のタイミングとその重要性
・自動潅水用ポンプの種類と手入れ方法
・自動潅水におけるメリット・デメリット
他にも、ビニールハウスの長さに合わせて潅水ホースを購入する、どこで資材を購入するのか、耐用年数、導入時に使える補助金・助成金情報など細かい項目がありますが、ここでは大枠をご紹介します。
2.自動潅水の種類と導入コスト
はじめに、自動潅水にはどのような種類があるのか、導入のコストはどれくらいかかるのかをご紹介します。栽培する農作物や栽培方法によって、用いる潅水方法は異なりますので、農作物・栽培方法が決まった状態を前提として解説していきます。
目的に応じて変わる潅水の種類
・地表潅水
地表潅水とは、畝間や株間にホース・チューブを通して潅水する方法です。ホース・チューブには穴が空いており、穴の大きさや場所によって散水範囲が異なります。地表潅水はビニールハウス栽培と露地での野菜栽培両方に使えます。
・点滴潅水
点滴潅水とは、株間や土の中にホースを埋め込み、点滴のように株元に直接水やりを行う方法です。無駄なく効率よく灌水できることから、液肥潅水には特に適しています。こちらもビニールハウス栽培と露地栽培の両方で使われます。
・頭上潅水
頭上潅水は、ビニールハウス栽培に使われる潅水方法で、ハウス内の高所にホースを設置し、高い位置から散水します。頭上潅水用に、柔らかい雨のように散水できるホースや霧状に散水できるホースも販売されています。
自動潅水装置を導入する際のコスト
買取りモデルか、サブスクリプションかでもコストは異なりますが、ここではセンスプラウトの灌水制御システムと土壌水分センサシステムの料金体系をご紹介します。
【灌水制御システム・一括買取り】
・灌水制御機器 348,000円 / 1式
・クラウド利用料 1,000円 / 月
【灌水制御システム・サブスクリプション】
・灌水1ポート+クラウド 5,000円 / 月
【土壌水分センサシステム・一括買取り】
・センサゲートウェイ 100,000円 / 台
・土壌水分センサ 100,000円 / 台
・クラウド利用料 1,000円 / 月
3.潅水のタイミングとその重要性
次に自動潅水導入前に知りたい情報として、潅水のタイミングとその重要性についてご紹介します。
潅水のタイミングは、植物の生育ステージや季節、その日の気温によって異なります。生育ステージでみると、基本的には発芽が揃うまでは毎日行い、発芽がそろって成長期に入ると土壌水分を見つつ、2〜3日に一度、乾燥してしまう前に散水します。収穫期に入ったら散水はやめましょう。水分が足りないと枯れてしまいますし、水分が多すぎると立ち枯れ病などの病気の発生に繋がります。水分センサーを付けていない場合は必ず土壌水分を確認しましょう。
また、潅水を行う時間帯ですが、季節や気温によって異なります。水が冷たすぎても、温かすぎても好ましくありません。基本的には夏は朝10:00までの潅水、冬は12:00ごろの暖かい時間帯に潅水することが重要です。
4.自動潅水用ポンプの種類と手入れ
次にご紹介する事前に知っておきたい情報は、自動潅水用ポンプの種類と手入れ方法です。
自動潅水用ポンプには、大きく分けてエンジンタイプとモータータイプがあります。さらにエンジンタイプには2サイクルエンジンと4サイクルエンジンのものがあります。2サイクルエンジンは構造が単純で軽量ですが、燃費が悪いなどの欠点があります。4サイクルエンジンは構造が複雑で高価ですが、パワーがあり環境にも優しいなどのメリットがあります。モータータイプは、エンジンタイプと比べてパワーは劣りますが、燃料を必要とせず、経済的にも優しいポンプです。
潅水ポンプの手入れ
長くポンプを使い続けるためにも手入れについて知っておくことは重要です。手入れはエンジンタイプとモータータイプで違うのでそれぞれご紹介します。
・エンジンタイプの手入れ
エンジンタイプの手入れは、燃料フィルターの清掃、点火プラグの清掃・点検、エアクリーナーの清掃・点検があります。燃料フィルターは、汚れがひどくなると故障の原因にもなりますので、定期的に取り替えましょう。また、エアクリーナーは汚れているとエンジンの出力低下に繋がるので、定期的な清掃が重要です。
・モータータイプの手入れ
モータータイプの手入れは、日頃使用した後に水抜きを必ずすることや、オイルで錆止めをしておくことが大切です。また、カーボンブラシの交換は、初回は累計使用時間が500時間、2回目以降が200時間を目安にするか、カーボンブラシの摩耗状態を見て交換しましょう。
その他、手入れ方法の詳細や長期保管、冬場の保管方法については下記の記事を参考にしてみてください。
5.自動潅水におけるメリット・デメリット
最後に自動潅水におけるメリットとデメリットをタイマー式と制御式、手潅水で比較してご紹介します。これから自動潅水を導入する方は、ぜひ参考にしてみてください。
メリット | デメリット | |
タイマー式潅水装置 | ・安価に導入可能 ・栽培様式に合わせて自分の好みの設定ができる ・農作物の状態を小まめに確認できる | ・季節や気温によって調整が必要 ・潅水量が定まらない ・手入れ、管理を怠るとトラブルが起きる |
自動潅水制御装置 | ・土壌水分や蒸散量を予測し、完全自動潅水 ・データの蓄積、分析が可能 ・クラウド管理のため、機能が定期的にアップデートされる | ・イニシャルコストが高い ・手入れ、管理を怠るとトラブルがおきる ・農作物に目が届きにくくなる可能性がある |
手潅水 | ・農作物に目が届きやすい ・散水ムラが少ない | ・時間がかかり、他の作業ができない ・システム導入コストはかからないが、一定の人件費がかかる |
タイマー式と制御式を比べただけでも、メリットとデメリットの両曲面があるので、より自身の圃場や予算などに見合った自動潅水を選択することをお勧めします。