土壌水分センサーの中には、農作物の生育に必要な農業データを分析できる情報通信技術(ICT)を活用した製品もあります。この記事では、土壌水分センサーを使用した農業データの分析について解説していきます。
目次
1.土壌水分センサーとは
2.情報通信技術(ICT)を活用した土壌水分センサー
3.土壌水分センサーを使用した農業データの分析
4.土壌水分センサーを使用したデータ分析の事例
5.まとめ
1.土壌水分センサーとは
土壌水分センサーは、土壌に含まれる水分量を計測するための装置です。
土壌の水分量に加え、土壌温度や電気伝導度(EC値)、土壌pH等の数値を計測できる装置など様々な種類の製品が発売されています。
土壌水分センサーが検知する情報の詳細は以下の通りです。
1)土壌水分量
通常、土壌に含まれる水分量は、土壌表面に現れる湿り気と乾き具合を目視や手の感触で確認して判断する方法が一般的とされています
しかし、土壌水分センサーを使用すれば、農作物の生育に必要な水分量を数値で確認できるようになるため、適切なタイミングでの潅水が可能になります。
2)土壌温度
土壌温度の計測は、土壌に含まれる水分の蒸発量の計算に使用します。
土壌水分の蒸発は、農作物の健全な生育に必要な水分量を不足させてしまうことから、収量や品質にも大きな影響を及ぼすといわれています。
3)電気伝導度(EC値)
電気伝導度(EC値)は、土壌に含まれる肥料分や塩分濃度を示した数値です。EC値が0.3㎳/㎝以下を示す場合は施肥量を増やし、1.0㎳/㎝以上を示す場合は施肥量を減らすのが良いそうです。
4)土壌pH
土壌pHは、土壌に含まれる酸性・アルカリ性の度合いを示した数値です。
農作物は、pH6.0~6.5の弱酸性の土壌でよく育つといわれています。しかし、土壌pHが低い状態のまま、土壌全体が酸性に傾き過ぎると、石灰分や苦土分の欠乏、アルミニウムの溶け出しを招き、根の生育を妨げるといわれています。
日本の農業においては、農業者の高齢化や担い手不足等の課題を背景に、農業生産を省力化するスマート農業の普及が急がれています。
スマート農業とは、ロボット、AI、情報通信技術(ICT)等の先端技術を活用した農業のことで、農作物の水やり作業を効率化する機器や農作物の収穫時期を判断するシステムなど、多くの製品が開発されています。
冒頭でも触れましたが、土壌水分センサーの中には、情報通信技術(ICT)を活用した製品もあり、先進的な農業経営を目指す農業者を中心に導入が進められています。
2.情報通信技術(ICT)を活用した土壌水分センサー
当社が開発したSenSprout Proセンサーシステムは、インターネットを利用して土壌水分量を遠隔から計測するシステムです。
SenSprout Proセンサーシステムは、深さ毎に異なる土壌の水分量と地表面の温度を1時間ごとに計測してデータを収集する土壌水分センサーで、土壌水分の変化を通知するアラーム機能や栽培データをグラフ化して地域で共有する機能も備えています。
当社が行った実証実験では、地点毎に最大30%以上あった作物の重量の違いを5%程度まで低減できる可能性を見出すことに成功しました。
SenSprout Proセンサーシステム
https://sensprout.com/ja/sensorsystem-2/
3.土壌水分センサーを使用した農業データの分析
日本の農業現場では、環境・栽培管理・生体の3つ農業データが使用されています。
1)環境データ
環境データは、気温、湿度、日射量、雨量、風速、土壌温度、土壌の電気伝導度(EC値)、土壌pHなど、主に外的要因の分析に使用するデータです。
2)栽培管理データ
栽培管理データは、栽培期間、使用する農薬の種類・量、農業機械の稼働時間、灌水量、収量など、内的要因の分析に使用するデータです。
3)生体データ
生体データは、葉の面積や数、茎の長さや太さ、糖度、病害虫の被害など、栽培する作物の状態から収集するデータです。
土壌水分センサーを使用した農業データの分析では、気温、湿度、日射量、雨量、風速、土壌温度、土壌の電気伝導度(EC値)、土壌pH等の環境データに加え、栽培期間、潅水量の栽培管理データが重要になってきます。
作物別の消費水量や土壌温度、土壌の電気伝導度(EC値)の計測ついては、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらを参考にしてください。
・土壌水分の測定と作物別の消費水量を解説
・土壌水分センサーを使用した土壌温度の測定について
・水分センサーを使用したEC値の計測と土壌づくりの基準値
また、分析結果による潅水量の調整については、当社が開発したSenSprout Pro 潅水制御システムもおすすめです。こちらも、SenSprout Proセンサーシステムと同様、インターネットを利用して潅水を遠隔から制御することができますので、ぜひとも導入を検討してみてください。
SenSprout Pro 潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.土壌水分センサーを使用したデータ分析の事例
「生産現場における高品質ミカン生産のためのICT利用に向けた土壌水分計測手法の確立」(三重県)
三重県紀州地域農業改良普及センターと三重大学大学院生物資源学研究科は、圃場の環境条件をリアルタイムで計測する農業用小型計測ロボット「フィールドサーバ」を用いて温州ミカンの水分ストレス指標を得る実証実験を実施しました。
実証実験では、気象情報と土壌環境の計測が樹体の水分把握に極めて重要な役割を持つことを突き止め、水分ストレス状態を的確に把握することに成功したそうです。
「生産現場における高品質ミカン生産のためのICT利用に向けた土壌水分計測手法の確立」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/air/20/3/20_3_86/_pdf
5.まとめ
先述しましたが、当社が開発したSenSprout Proセンサーシステムは、土壌水分の変化を通知するアラーム機能や栽培データをグラフ化して地域で共有する機能も備えています。
SenSprout Proセンサーシステムを利用すれば、気候・土質に応じた栽培ノウハウをデータ化できるため、経験の浅い農業者や新規就農者でも熟練農業者に見劣りしない農作物を栽培することができるでしょう。
土壌水分センサーを使用した農業データの分析を行う際には、ぜひ当社のSenSprout Proセンサーシステムの導入を検討してみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。