大根は、ビタミンCやカリウム、食物繊維など豊富な栄養素を含む人気の農作物です。しかし、これらの栄養素を多く含む高品質な大根を生産していくためには、農作物の成長に必要な水分を補給する潅水作業が重要になってきます。この記事では、大根栽培における潅水作業のコツと注意点について解説していきます。
目次
1.日本の大根栽培
2.大根栽培のポイント
3.潅水作業のコツと注意点
4.まとめ
1.日本の大根栽培
1)大根栽培の歴史
大根はアブラナ科ダイコン属に属する根菜類の野菜です。
原産地は地中海・中央アジアといわれていますが、現在の大根の直接の祖先にあたる野生種は見つかっておらず、正確な原産地を示した重要な証拠はまだ発見されていません。
世界における大根栽培の歴史は古く、紀元前2200年頃の古代エジプトでは、現在の二十日大根に近い品種の大根を栽培して、ピラミッド建設に従事する労働者に配給していたそうです。
日本における最古の記録は、西暦712年に成立した古事記に記されている仁徳天皇(生没年不明。西暦313~399年に在位していたといわれる)の歌の一節です。
古事記に記されている仁徳天皇の歌
「つぎねふ山城女の木鍬持ち打ちして淤富泥(おほね=大根) 根白の白腕(しろただむき) 枕かずけばこそ 知らずとも言わめ」
現代語訳
「木の鍬で育てた大根のように白いあなたの腕を枕にしたことがなければ、知らないと言うだろう」
この歌は、仁徳天皇が皇后に向けて詠んだ歌のひとつで、「木の鍬で育てた大根のように」とあることから、「仁徳天皇が在位していたといわれる西暦300年代には、すでに木鍬を使用して大根が栽培されていた」というのが現在の定説になっています。
※仁徳天皇陵正面。様々な副葬品と一緒に大根の種子も発見された。
日本で大根栽培が普及したのは江戸時代に入ってからで、この頃になると板橋、練馬、浦和、三浦半島など江戸近郊にある地域を中心にいくつかの品種と栽培法が確立されるようになっていきます。
その中でも練馬大根は特に有名で、当時100万人の人口を超えていたといわれている江戸町民の食料を支える重要な農作物のひとつに数えられていました。
現在の主な生産地は、北海道、青森県、千葉県、神奈川県、鹿児島県の1道4県で、世界で生産・消費されている大根のおよそ9割を日本で生産・消費している状況です。
参考
2020年都道府県別生産量ランキング
1位:千葉県(14万8100トン)
2位:北海道(14万7700トン)
3位:青森県(11万5700トン)
4位:鹿児島県(8万6300トン)
5位:神奈川県(7万3600トン)
2)日本で栽培されている主な品種
日本で栽培されている主な品種は以下の通りです。
・青首大根
葉の付け根付近が青い大根。日本で生産されている大根全体の9割以上を占める。
・三浦大根
神奈川県の三浦半島で生産されている白首系の大根。首の辺りが細く、真ん中がふっくらとしていて、先の方がまた細くなっているのが特徴。
・源助大根
加賀県金沢市打木町の篤農家・松本佐一郎氏が愛知県の井上源助氏の育成種である「源助総太」と在来種の打木大根(練馬系白首種)を自然交雑したものを選抜・育成して開発した品種。太く短いずんぐりとした形が特徴。
・亀戸大根
東京都練馬区を中心に栽培されている品種。たくあんなどの加工品にも使用される。
・聖護院大根
京都府の伝統野菜のひとつ。京都南部の淀地区を中心に栽培されるようになったことから淀丸大根や淀大根とも呼ばれる。
・大蔵大根
東京都世田谷区大蔵付近で生まれた品種。葉の付け根まで真っ白な白首系の大根で円筒形の形状をしている。
・桜島大根
鹿児島県の桜島で栽培されてきた歴史ある伝統野菜。切り干し大根や漬物など加工用にも使用されている。
・三太郎大根
3季採りできる短形の品種。収穫のタイミングによって500グラム~3キログラムまで調節が可能。
・祝だいこん
奈良県の伝統野菜。関西では雑煮に欠かせない食材のひとつとされていることから雑煮大根とも呼ばれる。
・山田ねずみ大根
滋賀県の伝統野菜。やや下膨れ気味でその先に尻尾のような細い根が伸びていることからこの名が付いた。
・赤筋大根
福島県会津地方を中心に東北地方で古くから作られてきた地野菜。表面に赤い筋が入るのが特徴。
・青大根
中国原産の大根。ビタミンを多く含むことからビタミン大根とも呼ばれる。
・辛味大根
通常の大根より小ぶりで辛味が強く水分が少ない大根の総称。そばやうどんの薬味に使用される。
・二十日大根
ヨーロッパ原産の赤色の大根。播種・萌芽から20日程度で収穫できることからこの名が付いた。
・カザフ辛味大根
カザフスタン共和国からの導入種子を選抜・育成して開発した品種。根の先の部分以外は緑色で丸い形をしている。
・レディーサラダ大根
神奈川県三浦市の特産野菜。紫色の表皮が特徴で果肉は白色をしている。
・紅化粧大根
大手種苗メーカーサカタのタネが販売している品種。鮮やかな赤色の表皮が特徴で果肉は白色をしている。
2.大根栽培のポイント
土づくり・種まき
(1)種まき2週間以上前までに苦土石灰を100グラム~150グラム(1平方メートルあたり)と完熟した堆肥約2キログラム(1平方メートルあ当たり)を全面に散布して深く(30~35cm)耕す。
(2)種まき1週間前になったら化成肥料を150グラム(1平方メートル当たり)加え再びよく耕す。
(3)幅60~70センチ、高さ10センチ程度の畝をつくる。
(4)深さ1.5センチ、株間25~30センチの穴を掘る。
(5)掘った穴に種を5~6粒蒔いて1センチの高さで覆土する。
(6)反射性のマルチシート等を使用してアブラムシ等の病害虫を防ぐ。
栽培管理
(1)子葉が完全に開いたら形の良いものを3本立ちにして1回目の間引きを行う。
(2)本葉が2~3枚開いたら生育が中位程度ものを2本立ちにして2回目の間引きを行う
(3)本葉が6~7枚開いたら生育が特に良いもの1本立ちにして3回目の間引きを行う。
(4)追肥は2回目と3回目の間引き後。
(5)株の周りに化成肥料を約50グラム(1平方メートル当たり)まいた後、軽く土を混ぜ株元に土寄せする。
(6)防虫ネットやトンネル型のビニールを使用してアブラムシ等の病害虫を防ぐ。
収穫作業
(1)外葉が垂れ中心部が開いてきたら収穫する。
(2)秋大根は種まき60~90日後、夏大根は種まきは50~60日が収穫適期。
(3)夏大根は収穫が遅れると内部に空洞が出来やすくなるため早めに収穫する。
3.潅水作業のコツと注意点
大根は乾燥と多湿に弱い農作物です。
そのため、発芽までの期間は土が乾燥しないよう毎日潅水を行う必要があります。しかし、発芽した後は多湿になり過ぎないよう潅水量を少しずつ調節していってください。
なお、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、スマート農業を意識した先進的な農業生産方法に興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
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4.まとめ
大根は、私たち日本人が古くから親しんできた文化ともいうべき農作物です。大根栽培に挑戦する際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。