自動潅水システムを使った革新的な研究結果をご紹介

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目次

1.自動潅水システムを使った野菜栽培の研究結果

2.トマト栽培における自動潅水システムの優位性と品種間差

3.ピーマン栽培における自動潅水システムの効果

1. 自動潅水システムを使った野菜栽培の研究結果

自動潅水システムを使った野菜栽培とは、ビニールハウス内にホースやチューブを設置し、潅水装置のコントローラーによって潅水を制御しながら野菜を栽培することです。
従来の手動潅水に比べて、効率良く且つ均一に散水できるようになった他、人手を必要としなくなったため、ランニングコストが大幅にカットできました。
大学や研究機関では、自動潅水システムを用いた野菜栽培における研究が行われ、その優位性が報告されています。
ここでは、大学と研究機関それぞれの研究事例をご紹介しながら、自動潅水システムが野菜栽培にもたらす効果やその可能性もご紹介します。

2. トマト栽培における自動潅水システムの優位性と品種間差

はじめにご紹介するのは、岐阜県の農業技術センターが行った、自動潅水システム「ゼロアグリ」を用いたトマト栽培の品種比較試験です。

https://www.zero-agri.jp/gifunoushi

自動潅水システムの設備は、ZeRo.agri-2500A、トマトの品種は「CF桃太郎J」「桃太郎ネクスト」が使われました。

ゼロアグリとは、株式会社ルートレック・ネットワークスが開発した自動潅水システムです。ゼロアグリでは、ビニールハウス外の日射量とビニールハウス内土壌の体積含水率などの環境条件より培養液供給量をクラウド上で決定し、自動的に灌水を行うことができます。

研究概要

この研究は、品種「CF桃太郎J」「桃太郎ネクスト」それぞれで、栽培時期と栽培担当者を同じにし、自動潅水にした場合と手潅水にした場合の収穫量を比較しました。比較試験の結果、「CF桃太郎J」、「桃太郎ネクスト」の両品種で収穫量・品質ともに大幅に向上することが明らかになりました。

研究結果と今後の自動潅水システムの可能性

まず「CF桃太郎J」では、ゼロアグリを用いて栽培した区画の収穫量は、手潅水区画と比べて約11%の増収、上物収量は約15%増収しました。また、障害果実の発生割合を比較すると、ゼロアグリを用いた栽培は手潅水区画と比べて5%減少しました。

次に「桃太郎ネクスト」では、ゼロアグリで栽培した区画の収穫量は、手潅水区画と比べて約26%の増収、上物収量は約30%増収しました。また障害果実の発生割合も、ゼロアグリを用いた栽培は手潅水区画と比べて6%減少しました。
どちらの品種でも、自動潅水システムのゼロアグリを用いたことで、収穫量と品質は向上し、障害果実の発生割合も減少させることができました。
また、品種で比較すると、「桃太郎ネクスト」では「CF桃太郎J」に比べて、自動潅水システムを用いると収穫量と品質が向上しています。
また、同じ作物でも品種によって増収率が異なることが明らかになったので、いちごなどの他の作物で試験してみるとまた違った結果が生まれるかもしれません。

[ 備考 ]

  • 収穫期間:平成30年11月~令和元年7月(定植:9月21日、摘心:翌5月24日)
  • 上物収量とは、秀品および優品の収穫量(品質に関する指標)
  • 両品種はタキイ種苗株式会社が製造販売するトマトの品種名。台木はともに「Bバリア」

[ 試験方法 ]

  • 試験場所:岐阜県農業技術センター内トラスハウス
  • 栽培方式
  • 自動潅水区:ゼロアグリを用いた養液土耕栽培。培養液は大塚SA処方(培養液濃度0.3~1.2 dS/m)で管理
  • 手動潅水区:慣行施肥の土耕栽培。日あたり0~1回(20分/回)の潅水を基本とし潅水。栽植密度2000株・10a-1(2本仕立てで管理)
  • 温度管理:換気設定温度25°C、冬期は13°C~15°C設定で加温
  • 調査規模:1試験区5株2反復
  • その他:1果房あたりの着果数は4~5果.
  • 調査方法:生育調査(生長点から約50cm部分)、収量調査、果実調査

3. ピーマン栽培における自動潅水システムの効果

次にご紹介する研究は、2019年に明治大学農学部が報告した、同じく自動潅水システム「ゼロアグリ」を用いた研究です。

https://ci.nii.ac.jp/naid/120006872453

研究に使われた作物は、ピーマン3品種「ピー太郎」「イエローホルン」「レッドホルン」です。

研究の背景と概要

この研究の背景には、2011年 3 月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の影響があります。震災後、福島県では多くの農家さんが営農を再開しようと試みましたが、除染作業で地力が下がった農地では新しい栽培様式を体系化する必要がありました。
そこで、研究者は培養液を点滴で土壌に灌水する養液土耕栽培に着目し、この栽培方法が適するトマトやピーマンの栽培を推奨しました。
また、これまでゼロアグリにより決定された灌水量を評価した研究例は報告されていないことも背景にあります。
そこで、明治大学農学部では、自動潅水システム「ゼロアグリ」を使って3品種のピーマンをビニールハウス栽培することで、ゼロアグリの潅水量を評価する試験を行いました(一部抜粋)。

研究結果と今後の自動潅水システムの可能性

ゼロアグリでは、ビニールハウス内外の日射量や水分量をクラウド上に記録し潅水量を推定するため、この研究では、ビニールハウス内の土壌水分分布と茎内流量(植物内を流れる水分量)、蒸散量を測定して潅水量と比較しました。

それぞれの項目を潅水量と比較した結果、土壌水分分布は定常状態を保っていることが分かり、均一に適切な潅水ができていることが分かりました。
また、ゼロアグリによる灌水量は茎内流量と非常に良く一致しており、ゼロアグリは蒸散量を非常に良く推定して灌水量を決定することができることも分かりました。
試験結果から、自動潅水システム「ゼロアグリ」では高精度に必要な潅水量を推定できることが明らかになりました。
災害の多い日本では、このような高精度に環境制御する農業用システムの導入が加速していくのではないでしょうか。

[ 備考 ]

  • 実験期間:2017年6月7日から10月27日
  • 全品種タキイ種苗株式会社が製造販売するピーマンの品種名

[ 試験方法 ]

  • 試験場所:福島県飯舘村の東西方向に設置した側面開放型ビニールハウス(幅×長さ=5.5 m×30 m)内圃場
  • 栽培方式
  • 条間は0.4 m 間隔の千鳥植えで定植。3品種混植にした
  • 幅0.8m,長さ30 m の平畝を畝間0.75 m で東西方向に 4 本立て,畝と平行になるように 2 本の灌水チューブを地表面に畝中央からそれぞれ南北に0.15 m 間隔で設置
  • 土性:砂質粘土ローム (砂:シルト:粘土=60%:25%:15%)
  • 調査方法:土壌水分量の測定には時間領域反射法を,ビニールハウス内の可能蒸発散量の推定にはペンマン・モンティース法を,ピー太郎の茎内流量の測定には茎熱収支法を用いた

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