目次
1. 土壌水分センサーとは
2. 土壌水分センサーの市場調査レポートを読み解く
3. 世界の土壌水分センサー市場は2027年までに4億1120万ドル
4. 土壌水分センサー市場の主要セグメント
5. まとめ
1. 土壌水分センサーとは
土壌水分センサーとは、その名の通り、土壌中の水分量をセンサーが検知し、可視化できる状態にしてアウトプットする技術・製品のことです。
スマート農業やアグリテックが叫ばれている中、土壌の水分量を測るる方法にも新しい技術・新しい製品が誕生しています。これまで、土壌の塩分濃度が邪魔をして正しく水分量が図れなかったり、ユーザビリティーが低かったりと、扱いやすくて精度の高い土壌水分センサーが存在しませんでした。近年では、土壌物理を研究する大学教授らが協力して、ユーザビリティが高く、高精度の土壌水分センサーがリリースされています。
ここでは、日本国内だけでなく、世界の土壌水分センサー市場の現状と今後の成長についてご紹介します。なお、水分センサーを活用したスマート農業の実証実験についてはこちらの記事を参考にしてください。
土壌水分センサーの市場調査レポートを読み解く
土壌水分センサーは日本国内だけでなく、海外でも様々なメーカーがあり、市場規模を理解するには海外の市場も把握する必要があります。市場調査レポートを読み解くことによって、市場の成長や課題、競合他社、土壌水分センサー業界の脅威などを把握することができます。
土壌水分センサーの市場概況
初めに把握すべきは、土壌水分センサーの市場概況についてです。土壌水分センサーは農業用機器であり、世界中でその需要は拡大しています。市場拡大の背景には、地球全体で環境問題が悪化し、降水量も年々変化している現状があります。天気予報も年々精度が上がっていますが、土壌水分センサーを活用することで、科学的データを元に適切な潅水量を判断することができます。
また、潅水制御装置に連携させることで、決められた時間に決められた量の潅水を行うこともできます。国内を例にあげると、ゼロアグリの潅水制御システムでは、10分〜1時間の間隔でセンサーが土壌水分量を検知し、適切な潅水量を決定します。そのため、初心者でも適切な潅水を行うことができ、潅水量とタイミングによる栽培の失敗を防ぎます。
2. 世界の土壌水分センサー市場は2027年までに4億1120万ドル
ここからは、世界の土壌水分センサー市場の成長についてお話しします。世界の土壌水分センサー市場は2019年に2億1580万ドルと評価され、2027年までに4億1120万ドルに達すると予測されており、2020年から2027年までのCAGRは9.1%です。
土壌水分は、農業において重要なパラメーターであるため、農業部門の発展は土壌水分センサーの成長を促進させると言えます。さらに土壌水分センサーは土壌環境の変化を記録することにも使用されます。自然環境の状況を理解することにも役立ち、農業従事者以外からも支持される技術です。また、スマート農業やアグリテックの市場が拡大する中、土壌水分センサーの採用は市場の成長にも有利とされます。一方で、水耕栽培も同時に発展しているため、土壌水分センサー市場の発展を妨げるとも予想されています。
3. 土壌水分センサー市場の主要セグメント
土壌水分センサー業界のセグメントは製品・タイプ・目的・地域によって分けられます。製品は土壌水分をどのように測定するかによって分類され、張力測定や体積、固体状態センサーがあります。タイプはアナログとデジタルに分かれています。目的では、農業用土壌水分センサーや研究用土壌水分センサー、その他に分けられます。最後に地域では、米国、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ(英国、ドイツ、フランス、その他のヨーロッパ)、アジア太平洋(中国、インド、日本、その他)、ラテンアメリカ、中東およびアフリカがあります。
主要な市場プレイヤー
日本国内で、センスプラウトやゼロアグリなどの土壌水分センサーの主要なプレイヤーがあるように、海外にも主要な市場プレイヤーが存在します。
社名 | 主要商品名 | 国 | |
1 | Acclima Inc. | Acclima Sensor Reader Kit (SDI-12) | アメリカ |
2 | Delta-T Devices Ltd | SM150T Soil Moisture Sensor | イギリス |
3 | METER Group Inc. | TEROS 21 | アメリカ |
4 | OTT Hydromet GmbH | OTT CTD Sensor, OTT ecolog 1000 Water Level Logger | ドイツ |
5 | SDEC France | Direct reading tensiometer with bourdon manometer – sr 1 | フランス |
6 | Smartcultiva Corporation | HYDOROPONIC FARMING | アメリカ |
7 | Spectrum Technologies, Inc. | TDR150&350 | 大阪府 |
8 | Stevens Water Monitoring Systems, Inc. | HydraPrbe | アメリカ |
9 | Trellis, Inc. | Soil Moisture Sensors | アメリカ |
10 | Vegetronix Inc. | VH400 Low-Cost Soil Moisture Sensors | アメリカ |
【サブサブタイトル】海外の土壌水分センサーをご紹介
最後にご紹介するのは、海外の一部の土壌水分センサーの概要です。土壌水分センサーの市場を把握するためには、海外にどんな土壌水分センサーがあるかを理解しておいても損はありません。農業技術は国内と海外の間で行き来しつつ発展を遂げています。
・Acclima Sensor Reader Kit (SDI-12)
このキットには、Acclima Sensor Readerが組み込まれており、土壌水分センサーAcclima SDI-12が読み取った数値を記録し、波形でその土壌水分量を表示します。また、ユニットを充電できるアダプタは国際電源に対応しており、日本でも使用することができます。
・SM150T Soil Moisture Sensor
https://delta-t.co.uk/product/sm150t/
SM150Tの土壌水分センサーでは、水分量の測定精度は±3%と、高精度に測定できます。また、温度測定機能も備わっており、研究レベルでも利用できるような正確なデータを取得することができます。比較的低価格で、信頼性も兼ね備え、5年間の安心保証付きです。
・Smartcultiva Series B
Smartcultivaの潅水制御システムは、日本のセンスプラウトやゼロアグリと同じような機能が備わっています。露地栽培や水耕栽培において、土壌水分だけでなく、様々なデータを取得し、IoTプラットフォームにデータベースとして保存されます。データは日付選択でエクセルなどの一般的なファイルにエクスポートすることができます。装置は、リチウムイオン電池や太陽電池、太陽光で充電することができます。
・TDR150&350
https://www.arata-corp.co.jp/product/spectrum/
Spectrum Technologies, Inc.の土壌水分センサーTDR150&350は、15年以上前からありますが、当初から高精度に水分量が測れることで知られていました。土壌電気伝導度(EC)および土壌表面温度とともに、土壌体積含水量(VWC)を測定する新機能が備わり、その測定精度はより向上しました。
・VH400 Low-Cost Soil Moisture Sensors
https://www.vegetronix.com/Products/VH400/
土壌水分センサーVH400 Low-Costの特徴としては、導入することで水とコストを削減することができる、長期的に使用できる頑丈なデザイン、防水性が高く深い場所にも埋め込み可能、塩分濃度の影響を受けにくく短時間で高精度な測定が可能、低消費電力でバッテリー駆動などがあります。また、土壌水分の測定は、体積含水率と重量含水量から算出されます。
4. まとめ
いかがでしたか。2019年に2億1580万ドルと評価された土壌水分センサー市場は今後も拡大傾向にあり、2027年までに4億1120万ドルに達すると予測されています。一方で、水耕栽培の市場も発展しているため、土壌水分センサー市場の成長は抑制されるのではないかとも予想されています。世界の土壌水分センサーをご紹介してきましたが、見るべきポイントは共通して、「ユーザビリティが高いか」「高精度に測定できるか」です。農業において水は特に重要なパラメーターであるため、今後も土壌水分センサー市場の発展に注目していきたいですね。