土壌水分センサーは、土壌に含まれる水分を計測するための装置です。土壌水分センサーには様々な種類があり、計測機器を開発するメーカーや環境機器を開発するメーカーを中心に多くの製品が発売されています。この記事では、土壌水分センサーを製造する企業とその代表的な製品について紹介していきます。
目次
1. 土壌水分センサーの種類
2. 土壌水分センサーが検知する情報
3. 土壌水分センサーを製造する企業
4. まとめ
1. 土壌水分センサーの種類
土壌水分センサーは、大きく分けて4つの種類があります。いずれの方式もセンサーを地中に埋没して使用するのは同じですが、原理や形状に違いがあります。
1)テンシオメーター
テンシオメーターは、ポーラスカップと呼ばれる素焼きのカップを使用した土壌水分センサーです。センサー周辺の土壌が乾燥するとテンシオメーターに充填した水が外部に吸引される仕組みを利用して土壌の水分量を測定します。
2)平板型
平板型は、電圧をかけた平板型のセンサーを利用して土壌に含まれる水量の変動を測定する土壌水分センサーです。メンテナンスが簡単で電力の消費量も少ないことから、無人での測定にも向いています。
3)電極棒式(TDR・ADR)
電極棒式(TDR・ADR)は、土中に埋没した金属ロッドに流したマイクロ波を利用して、土壌の比誘電率を測定する土壌水分センサーです。センサー基部にある回路機器から発振された電磁波がロッドの先端に流れ、次の発振を誘発する仕組みを利用しています。
4)ロガータイプ
ロガータイプは、土壌に含まれる水分量を定期的に測定して記録するロガー付きの土壌水分センサーです。土壌水分を測定するセンサーと測定した数値を記録するロガーで構成されています。セット製品のほか、既存の土壌水分センサーと接続して使用するロガー単体の製品もあります。
2. 土壌水分センサーが検知する情報
土壌水分量センサーには、土壌水分量に加え、土壌温度や電気伝導度(EC値)、土壌pH等を計測できる製品もあります。多くの土壌水分センサーが検知する情報と使用するメリットは以下の通りです。
1)土壌水分量
通常、土壌に含まれる水分量は、土壌表面に現れる湿り気と乾き具合を目視や手の感触で確認して判断する方法が一般的とされています
しかし、土壌水分センサーを使用すれば、農作物の生育に必要な水分量を数値で確認できるようになるため、適切なタイミングでの潅水が可能になります。
2)土壌温度
土壌温度の計測は、土壌に含まれる水分の蒸発量の計算に使用するものも存在します。
土壌水分の蒸発は、農作物の健全な生育に必要な水分量を不足させてしまうことから、収量や品質にも大きな影響を及ぼすといわれています。
土壌水分センサーの中には、土壌に含まれる水分量に加え、土壌温度を計測する製品もありますので、これを使用すれば、土壌水分の蒸発を未然に防ぐことができるようになります。
3)電気伝導度(EC値)
電気伝導度(EC値)は、土壌に含まれる肥料分や塩分濃度を示した数値です。EC値が0.3㎳/㎝以下を示す場合は施肥量を増やし、1.0㎳/㎝以上を示す場合は施肥量を減らすのが良いそうです。
4)土壌pH
土壌pHは、土壌に含まれる酸性・アルカリ性の度合いを示した数値です。
農作物は、pH6.0~6.5の弱酸性の土壌でよく育つといわれています。しかし、土壌pHが低い状態のまま、土壌全体が酸性に傾き過ぎると、石灰分や苦土分の欠乏、アルミニウムの溶け出し等を招き、根の生育を妨げてしまう可能性があるそうです。
3. 土壌水分センサーを製造する企業
冒頭でも触れましたが、土壌水分センサーの開発には、計測機器を開発するメーカーや環境機器を開発するメーカーなど、様々な企業が参入しています。当サイトがピックアップした各社の概要および代表的な製品は以下の通りです。
1)大起理化工業株式会社
大起理化工業は、埼玉県鴻巣市の環境測定機器メーカーです。創業80年の老舗企業で、農業分野のほか建築や環境など、様々な分野に向けた製品を開発しています。
2020年11月からは、アメリカの土壌水分センサーメーカーであるMETER社(旧Decagon社)製品の取り扱いもスタート。自社製品であるテンシオメーター型の土壌水分センサーに加え、METER社が開発した平板型の土壌水分センサーなど、多様なラインナップの製品を提供しています
製品例:テンシオメータ DIK-3210
・データロガー・バッテリー・センサ内蔵の一体型。
製品例:METER社製 土壌水分センサー EC-5・10HS
・誘電率から土壌水分を測定する平板型の土壌水分センサー
https://www.daiki.co.jp/products/meter/
2)クリマテック株式会社
クリマテックは、自然計測に必要なセンサーと計測器を組み合わせてシステム化するシステムインテグレータ企業です。プログラム可能なデータロガーを用いて、無人・無電源で使用できる計測システムの設計・販売を手がけています。
一般的に、センサーと計測器を組み合わせた計測システムの構築は、「多くの経験と技術を要する」といわれていますが、同社では、各種センサーと計測制御システムの両方の開発に加え、電源の設計・設置、データの収集も行っています。
農業分野では、テンシオメーターや電極棒式(TDR・ADR)の製品を中心に様々な種類の土壌水分センサーを提供しています。
製品例:圧力式テンシオメーター CHS-TM
・テンシオメータに圧力センサーが直結。
http://www.weather.co.jp/catalog_html/CHS-TM.htm
3)アズワン株式会社
アズワンは製造メーカーではありませんが、研究用機器機材や看護・介護用品、その他科学機器の販売を手がける総合商社です。大阪府大阪市を本拠に、様々な種類の土壌水分センサーを提供しています。国内メーカーの製品ほか、海外メーカーの製品など豊富なラインナップが特徴です。
製品例:土壌用EC/水分計 PFC-42シリーズ
・土壌水分・土壌ECの測定が1台で可能。
製品例:土壌水分センサー SM150-KIT
・直読ハンディー表示器が付属。
4)株式会社竹村電機製作所
竹村電機製作所は、各種農業用測定器と理科学教材用測定器を扱うメーカーです。土壌水分センサーのほか、土壌酸湿度計、電機伝導度計など様々な種類の計測機器を製造しています。同社が開発した製品は海外での評価も高く、輸出額も年々増加の一途を辿っているそうです。
製品例:土壌水分計 DM-8
・水除け・殺虫剤除けカバーが付属。
https://www.demetra.co.jp/product/soil-moisture/dm-8/
5)株式会社SenSprout(センスプラウト)
当社、SenSproutは、農業用の土壌水分センサーや潅水制御機器の開発・販売を手がける企業です。
当社が開発した「SenSprout Proセンサーシステム」は、インターネットを利用した土壌水分センサーです。土壌水分量や地表面温度を遠隔から確認できる機能のほか、土壌水分の変化を通知するアラーム機能やデータをグラフ化したりCSVダウンロードする機能を備えていますので、先進的な農業経営を目指す人はぜひ導入をご検討ください。
製品例:SenSprout Proセンサーシステム
https://sensprout.com/ja/sensorsystem-2/
4.まとめ
農作物の生育に必要な土壌水分量を測定することは、農業生産の効率化や省力化に役立ちます。今回紹介した企業以外にも、土壌水分センサーを製造する企業は国内外にたくさんありますので、ぜひこの記事を参考にリサーチしてみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。