農作物の水やり作業を省力化する方法のひとつに潅水制御装置があります。
潅水制御装置を使用した水やり作業は、農業者の身体的負担の軽減や高度な栽培管理に役立つため、多くの農業現場で用いられています。
しかし、潅水制御装置を使用した水やり作業を成功させるためには、潅水制御装置を構成する様々な設備を体系的かつ効果的に設置する必要があります。 この記事では、潅水制御装置に使用される様々な設備と設置方法を解説していきます。
目次
1.潅水制御装置の設備
2.潅水方法の種類
3.潅水制御装置の体系
4.潅水制御装置の設置方法
5.まとめ
1. 潅水制御装置の設備
潅水制御装置は、農作物の水やり作業を省力化するために開発された様々な資材や機器で構成される装置です。潅水制御装置を使用した水やり作業を成功させるためには、これらを体系的かつ効果的に設置する必要があります。
潅水チューブ
潅水チューブは、等間隔に配列された数ミリ単位の小さい孔が開いた農業用のホースです。潅水制御装置を構成する設備の中では、最終段階である農作物への水やり作業を担います。
農作物の畝間に設置して株元に潅水するタイプや埋没して使用するタイプ、ビニールハウス等の天井部等に設置して使用するタイプなど様々な種類があります。
ろ過フィルター
ろ過フィルターは、井戸水など水源に含まれるゴミや汚れを除去するための装置です。潅水制御装置を構成する設備の中では、装置全体の性能を維持するためのメンテナンス的な役割を担います。
ハンドルをくるくる回すだけで洗浄できる半自動型のろ過フィルターは「メンテナンスの時間を大幅に短縮できる」として、多くの生産者が愛用しています。
タイマー
タイマーは、農作物への潅水時間を設定する装置です。潅水制御装置を構成する設備の中では、農業者の栽培管理の負担を軽減する省人化に向けた役割を担います。
住化農業資材が開発した「よくばりタイマー」という製品は、「〇時間ごとに△分潅水する」など栽培品目に合わせた設定ができるようです
液肥混入機
農作物の生育に必要な液体肥料を混入する機器です。潅水制御装置を構成する設備の中では、潅水と施肥を同時に実行する省力化に向けた役割を担います。
サンホープが開発した「液体混入機ドサトロン」という製品は、正確な希釈精度を誇る電源不要の液肥混入機で、施設園芸のほか畜産業や緑化事業にも使用されているそうです。
スプリンクラー
スプリンクラーは、大規模農業で行われている露地栽培向けの設備です。潅水制御装置を構成する設備の中では、最終段階である農作物への水やり作業を担います。
農作物の株元に潅水する潅水チューブとは違い、農作物の頭上から雨のように潅水できるのが特徴です。
コック類
コック類は、水源から流れてきた水の通水をコントロールする設備です。潅水制御装置を構成する設備の中では、潅水チューブへの通水を制御する役割を担います。
元々は、水道関連に使用する真鍮製の部材で、専門店ほか一般のホームセンターなどで販売されています。樹脂製やプラスチック製など農業用に向けた安価な製品も発売されています。
パイプ(VU管・VP管など)
ボールコックと同様、元々は水道関連の部材です。潅水制御装置を構成する設備の中では、水源の水を圃場に運ぶ役割を担います。通水する水の量や設置する場所に応じた様々な規格があります。
2.潅水方法の種類
潅水制御装置を使用した潅水方法には、「地表潅水」「点滴潅水」「頭上潅水」の3つがあります。それぞれの特徴は以下の通りです。
1)地表潅水
地表潅水は、農作物が植えられた畝間の表面にチューブやホースを設置して潅水する方法です。ビニールハウス等の施設園芸や野菜の露地栽培等に用いられます。
2)点滴潅水
点滴潅水は、雨のようなゆっくりとした水やり作業を行う潅水方法です。潅水に使用するチューブは、地表に設置して使用するタイプと地中に埋没して使用するタイプの2種類があります。ムダの無い効率的な潅水が特徴です。
3)頭上潅水
頭上潅水は、大規模農業での露地栽培やビニールハウス等の施設園芸で用いられる潅水方法です。スプリンクラーを使用する露地栽培向けの方法ほか、ハウスの天井部にノズル付きのパイプを設置して施設全体を潅水する方法があります。
3.潅水制御装置の体系
潅水制御装置を効果的に使用するためには、それぞれの設備に応じた体系づくりが必要です。農業現場に設置される一般的な体系は以下の通りです。
・井戸等の水源から水を汲み上げる「ポンプ」
↓
・圃場に水を運ぶ「パイプ(VU管・VP管)」
↓
・水源の水に含まれるゴミや汚れを除去する「ろ過フィルター」
↓
・通水をコントロールする「コック類」
↓
・液体肥料を同時混入する「液肥混入機」
↓
・農作物への水やり作業を行う「潅水チューブ・スプリンクラー」
4.潅水制御装置の設置方法
1)住化農業資材
製品名:ミストエースSナイアガラ63(潅水チューブ)
https://www.sumika-agrotech.com/product/pdf/kansui_niagara.pdf
新発想による連棟ハウス向けの灌水チューブです。新しい穿孔技術と設置方法による「霧雨のような散水」が特徴で、連棟ハウス谷下の移動が楽にできるように設計されています。
6.0~6.3m間口の連棟ハウスが対象で、チューブの設置は縦型に「ハウス内の内側から見てチューブに記載された文字が正しく読めるように設置してほしい」とのことです。
2)サンホープ
製品名:スーパーデュフューザーホースセット(スプリンクラー)
https://www.sunhope.com/products/diffuser.html
広範囲かつ均等な散水を実現する露地栽培向けのスプリンクラーセットです。セット内容は、(スーパーデュフューザー×4個・三脚×4脚・ホース×4本・VP管ライザー1.2m×4個・T型継手×4個・エンドキャップ1個・異径ニップル×4個)です。
配管は、スーパーデュフューザーを最上部に、上から異径ニップル、VP管ライザー、三脚、T型継手の順でホースとつなぐ仕組みです。安価に購入できるスタンダードタイプのホースとねじれにくいユニカップラー付きのホースのどちらかを選べます。
3)センスプラウト
製品名:SenSprout 潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
当社、株式会社SenSprout(センスプラウト)が開発した潅水制御システムです。システムは、灌水ゲートウェイ、潅水制御盤の2つで構成されており、インターネットを使って遠隔から潅水操作を制御することが可能です。
潅水した情報(時間やタイミング)がインターネットを使ってクラウド上へアップされるため、過去の潅水履歴などを後からでも見返すことが可能です。
5.まとめ
潅水制御装置には、手動・遠隔・自動の3種類があります。
この記事で解説した内容は、主に手動潅水制御を構成する設備ですが、遠隔や自動に用いられる体系も基本的にはこれと同じ構造になります。
潅水制御装置を導入する際には、ぜひこの記事を参考に準備を進めてみてください。