トマトは、抗酸物質のひとつであるリコピンを多く含む農作物です。この記事では、トマト栽培における潅水作業のコツと注意点について解説していきます。
目次
1.日本のトマト栽培
2.トマト栽培のポイント
3.潅水作業のコツと注意点
4.まとめ
1.日本のトマト栽培
1)トマト栽培の歴史
トマトは、ナス科ナス属に属する果菜類の野菜です。
原産は、南アメリカ大陸のアンデス山脈西側にあるペルー・エクアドル・ボリビアの高原地帯で、様々な大きさ、色、形をした品種が栽培されています。
トマトが日本に伝わったのは、江戸時代前期の17世紀中頃で、伝わってしばらくは鑑賞用の植物として親しまれていましたが、明治時代を迎える頃になると、ヨーロッパ系の外国人が食べていた新たな品種が持ち込まれるようになります。
しかし、当時の日本人には、その独特のにおいや酸味が受け入れられず、しばらくは来日する外国人向けの食品として使用されていましたが、食品大手カゴメの創業者である蟹江一太郎氏が国産トマトの栽培に成功したことをきっかけに、トマトケチャップやウスターソースなどトマトを使用した加工食品がつくられるようになります。
日本でトマトの需要が増加したのは、アメリカから桃色系の大玉品種が伝わった昭和時代からで、第二次世界大戦が終わると、日本人の食生活の変化を背景にその需要が一気に拡大していきました。
現在の主な生産地は、熊本県、北海道、愛知県、茨城県、栃木県の1道4県で、日本で生産されるトマトのおよそ2割が熊本県で生産されています。
・参考
2021年生産量ランキング
1位:熊本県(13万5300トン)
2位:北海道(6万6200トン)
3位:愛知県(4万3300トン)
4位:茨城県(4万1700トン)
5位:栃木県(3万1500トン)
2)日本で生産されている品種の一例
大玉品種
・桃太郎トマト
日本で最も多く栽培されているポピュラーな品種。重さ220グラム前後でふっくらとした丸い形、甘味が強くて適度な酸味が特徴。1985年(昭和60年)に発売され、その後も様々な用途に合わせた系列品種が開発されている。
・ファーストトマト
1938年(昭和13年)に命名された品種。ムキムキとしたマッチョな形が特徴で、果頂部がツンと尖った形になりやすいものが多い。桃太郎トマトが開発されるまでは、日本の主要品種として栽培されていた。
・りんか409
サカタのタネが販売する品種。しっかりとした固さが特徴で日持ちも良い。品種名で流通することが少ないため気付かないが、多くの日本人が食べている。
・桃太郎ゴールド
桃太郎トマトのオレンジ色品種。果肉がしっかりとしていて、適度な歯ざわりを感じられる。形は通常の桃太郎トマトと同じだが、表皮と果肉がオレンジ色をしている。
中玉品種
・フルティカ
タキイ種苗が開発した品種。糖度が高く、果肉に弾力性がある。昼夜の温度差が大きい春や秋でも裂果が少ない。
・ルネサンス
サカタのタネが販売する品種。ゼリー状の部分が少ないのが特徴。糖度が高く、果肉がしっかりしている。
・ソプラノトマト
サカタのタネが販売する品種。果肉が硬いため、しっかりとした歯ざわりを感じることができる。長崎県で栽培・出荷されているブランドトマトにも使用されている。
ミニ品種
・ミニトマト
果実の重さが5グラム~30グラム程度の小さなトマトの総称。タマゴ型やイチゴ型など様々な形がある。比較的簡単につくれるため、家庭菜園でも多く栽培されている。
・オレンジミニトマト
ミニトマトのオレンジ色品種。赤色のミニトマトよりもカロテンの含有量が多い。形は桃太郎トマトと同じだが、表皮と果肉がオレンジ色をしている。
・キャロルトマト
直径3センチ程度の小さな球形の品種。1花房当り30~50果程度収穫できる。フルーティーなミニトマトとして人気が高い。
2.トマト栽培のポイント
種まき・育苗管理
(1)ポットまきの場合は、直径3センチ、深さ1センチ程度の穴を掘り、種を3~4粒まく。
(2)箱まきの場合は、深さ1センチ程度の溝を掘り、種を1センチ間隔でスジまきする。
(3)5ミリ程度の高さで覆土して水やりをする。
(4)種をまいたポットや箱をトンネル型のビニールハウスに入れ保温する。(20~30℃)
(5)1枚目の本葉が出たら間引きする。
(6)箱まきの場合は、2枚目の本葉が出はじめるタイミングでポットに移植する。
(7)本葉が4~5枚出たら大きめ(12~15センチ)のポットに移植する。
(8)定植適期までの育苗日数は55~65日程度。
(9)連作障害が心配な場合には、接ぎ木苗の購入を検討する。
土づくり・定植作業
(1)定植2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約150グラム施して深く耕す。
(2)定植1週間前に化成肥料を1平方メートル当たり約150グラム、堆肥を1平方メートル当たり3~4キログラム、過リン酸石灰を1平方メートル当たり約30グラム施して、再びよく耕す。
(3)幅120センチ、高さ10センチ程度の平畝をつくる。
(4)黒色のマルチシートで畝を覆う。
(5)株間70センチ(横)・50センチ(縦)を目安に定植用の穴を2列掘る。
(6)定植用の穴の付近に専用の支柱を立てる。
(7)苗を植えたポットに水をたっぷり含ませる。
(8)ポットから苗を抜き、定植用の穴に植える。
(9)根元に水やりをする。
栽培管理
(1)立てた支柱に主枝を20~30センチ間隔で誘引する。
(2)本葉のつけ根から生えたわき芽はすべてかき取る。
(3)収穫目標の花房(3~5段)が咲き出したら、その上の葉を2~3枚残して主枝を摘み取る。
(4)第1花房がピンポン玉程度の大きさに成長したら、マルチの裾を上げて1回目の追肥を行う。
(5)第3花房がピンポン玉程度の大きさに成長したら、マルチの裾を上げて2回目の追肥を行う。
着果管理・収穫作業
(1)重要振動授粉と着果ホルモン剤処理を施して、第1花房の第1花を確実に着果させる。
(2)着果ホルモン剤処理は3段花房までで終了する。
(3)大玉品種の場合は4~5果になるよう摘果する。
(4)ミニ品種の場合は摘果しない。
(5)赤く熟したものを朝の涼しい時間帯に専用のハサミで丁寧に収穫する。
3.潅水作業のコツと注意点
トマトは過繁茂を嫌う農作物です。
そのため、活着するまでは十分な潅水が必要ですが、活着後は潅水量を少なくしても問題ありません。しかし、果実が肥大がする第3花房が開花する時期に入ったら、潅水量を多くするようにしてください。
なお、日本のトマト生産者の中には、少量多潅水と呼ばれる潅水方法を用いて水やり作業を行っている生産者がいます。
少量多潅水とは、少量の水を時間をかけて少しずつ与える潅水方法のことで、農作物のストレスを軽減する効果や病害虫の発生を抑える効果、収量を増やす効果などがあると言われています。
当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して潅水量を遠隔から制御できるようになりますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
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4.まとめ
トマトは、家庭菜園などでも多く栽培される人気の農作物です。トマト栽培にチャレンジする際には、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。