ほうれん草は、鉄分やビタミンCを多く含む健康に良い農作物です。この記事では、ほうれん草栽培における潅水作業のコツと注意点について解説していきます。
目次
1.日本のほうれん草栽培
2.ほうれん草栽培のポイント
3.潅水作業のコツと注意点
4.まとめ
1.日本のほうれん草栽培
1)ほうれん草栽培の歴史
ほうれん草はヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属に属する葉菜類の野菜です。
原産は、西アジア・西南アジア・中央アジア・カスピ海南西部にかけての地域で、東洋系と西洋系の2系統に分かれています。
ほうれん草栽培の歴史は古く、「古代ペルシア帝国が栄えた紀元前の時代に初めて栽培された」といわれています。
日本に伝わったのは、江戸時代初期の16世紀頃で、伝わった当初は、中国で普及していた東洋系の品種のみでしたが、明治時代に入ると新たに西洋系の品種が持ち込まれるようになります。
しかし、その独特のアクの強さから、東洋系と西洋系を交配した品種が栽培されるようになる大正時代まではあまり一般に普及しませんでした。
西洋系の品種が多く栽培されるようになったのは、第二次世界大戦が終わりを迎えた昭和20年以降のことで、日本の市場に流通する品種のほとんどが、東洋系と西洋系を交配した交雑種を祖としています。
現在の主な生産地は、埼玉県、群馬県、千葉県、茨城県、宮崎県の5県で、1位の埼玉県が全体の11.8%、2位の群馬県が11.6%、3位の千葉県が10%を生産している状況です。
・参考
2020年度都道府県別生産ランキング
1位:埼玉県(2万2700トン)
2位:群馬県(2万2400トン)
3位:千葉県(1万9400トン)
4位:茨城県(1万6500トン)
5位:宮崎県(1万3700トン)
2)日本で栽培されている品種の一例
サカタのタネ
・まほろば
昔ながらのほうれん草で、切れ込みのある葉が特徴で濃い緑色をしている。寒さやべと病に強い。
・スピーディベジタブル
種まき後30日で収穫できる極早生品種。ミニプランターなどを使用して栽培できるため家庭菜園に向いている。和え物、炒め物、お浸しなど幅広い料理に使える。
タキイ種苗
・牛若丸
株張りのよい秋冬採りの多収品種。葉柄が間伸びしにくく、温暖期でも葉身と葉柄のバランスが良いため幅広い作型で栽培できる。収穫期間が長いため圃場での出荷調整が可能。
・オーライ
生育旺盛な秋冬採り品種。肉厚の葉と赤く着色する根際が特徴。耐暑性に優れ、低温下での生育が良好なため幅広い作型で栽培できる。
トーホク
・剣葉ほうれん草
葉先が尖った品種。暑さや病気に強いため市場性が高い。葉のからみが少ないため直売所向けの出荷にも向いている。
・スプリングほうれん草
春まき専用の品種。トウ立ち遅くが耐暑性があるので安心して栽培できる。株張りが良いためゆっくりとした生長が楽しめる。
中原採種場
・ブラボー法蓮草
べと病やフザリウム菌による萎凋病に対し強い耐病性を持つ春夏まきの早生品種。耐暑性に優れ、高温期でも生育障害が起きにくい。抽苔しやすいので、5~7月上旬の種まきは避ける。
・サマートップ法蓮草
晩抽性に優れた春夏まき専用の品種。葉面が肉厚の中間葉で葉先がやや尖る。葉柄に柔軟性がありるため収穫作業が行いやすい。べと病などほうれん草の病害に強い抵抗性を持つ。
2.ほうれん草栽培のポイント
土づくり・種まき
(1)定植2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり100~150グラム施して深く耕す。
(2)定植1週間前に化成肥料を1平方メートル当たり100~150グラム、堆肥を1平方メートル当たり約2キログラム施し再びよく耕す。
(3)幅60~90センチ・高さ5センチの平畝を整形する。
(4)水はけの悪い圃場の場合は、畝の高さを10~20センチにする。
(5)整形した畝に深さ1.5~2センチ、幅3センチの溝を掘る。
(6)溝の底を平らにならす。
(7)種同士を1~2センチ離してばらまく。
(8)まき溝の条数は、畝幅60センチで4条、90センチで6条程度を目安にする。
(9)条間は15センチ。
(10)約1センチの高さで覆土して、上から軽く押さえる。
(11)水やりをする。
(12)高温期の場合は「芽出しまき」をする。
(13)「芽出しまき」は、種を水に一昼夜浸し、水切りして、湿った布で包んでポリ袋に入れた後、冷蔵庫に貯蔵して、1ミリ程度の根が1割程度の種に出てくるタイミングで。
栽培管理
(1)本葉が1~2枚生えたら1回目の間引きをして株間を3センチ程度にする。
(2)本葉が3~4枚生えたら2回目の間引きをして株間を6センチ程度にする。
(3)2回目の間引きが終えたら、条間に化成肥料を1平方メートル当たり約50グラムばらまく。)(葉に化成肥料がかからないように)
(4)アブラムシ、ヨトウムシ、ネキリムシ、べと病、萎凋病などの病害虫に注意する。
(5)ネキリムシは、有機物を求めて集まる習性があるため、堆肥を土の下に埋め、株から離すようにして防除する。
(6)病害虫が発生した場合には農薬を適切に使用する。
(7)ほうれん草は寒さに強く、霜が降りて繊維が柔らかくなると甘みが増すが、生育を早めたり、厳寒期に葉先が傷むことを防ぐ場合には寒冷紗や不織布を使用する。
収穫作業
(1)収穫適期は草丈が20センチ以上に生長した頃。
(2)大きくなったものから順次収穫する。
(3)抜き取って収穫してしまうと、残った株を傷めてしまう可能性があるため、ハサミかナイフで根元を切って収穫する。
(4)夏まきや春まきの品種の中には、トウ立ちする株が出る品種もあるため、トウ立ちする前に早めの収穫する。
3.潅水作業のコツと注意点
ほうれん草は過湿を嫌う農作物です。
そのため、発芽するまでの間は十分な水分が必要ですが、発芽してから本葉が出るまでの間に水分を与え過ぎると、立ち枯れ病が発生してしまう可能性が出てきます。
ですので、潅水作業は乾燥で生育が悪い時だけ行うようにし、収穫作業がはじまったらストップするようにしましょう。
なお、日本のほうれん草を栽培する生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者がいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けとハウス栽培向けの2つがあります。
潅水制御装置の中には、ほうれん草栽培に適した資材も数多くありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
ほうれん草は、和え物、炒め物、お浸しなど私たちの食卓に多く並ぶ人気の野菜です。ほうれん草栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。