玉ねぎは、カルシウムやリン、鉄などのミネラル分やビタミンB1、B2などの栄養素を多く含む人気の農作物です。しかし、これらの栄養素を豊富に含んだ高品質な玉ねぎを生産していくためには、農作物の成長に必要な水分を補給する潅水作業が重要になってきます。この記事では、玉ねぎ栽培の潅水作業について解説していきます。
目次
1.日本の玉ねぎ栽培
2.玉ねぎ栽培のポイント
3.潅水作業のコツと注意点
4.まとめ
1.日本の玉ねぎ栽培
1)玉ねぎ栽培の歴史
玉ねぎは、現存する世界最古の栽培植物のひとつとしても有名な農作物です。
原産は中央アジア・地中海沿岸で、エジプトで発見された紀元前2700年~2500年頃のピラミッド建設の様子を記録した書物には、建設に従事する労働者に生産した玉ねぎを配給していた内容の記述が残されています。
日本に伝わったのは、南蛮貿易が行われていた江戸時代初期~前期頃で、伝わってしばらくは鑑賞用の植物として親しまれていました。しかし、北海道開拓が本格化した明治時代にアメリカからイエロー・グローブ・ダンバースという品種が持ち込まれたことをきっかけに食用としての栽培が広がっていったそうです。
現在の主な生産地は、北海道、佐賀県、兵庫県の1道2県で、日本で生産される玉ねぎのおよそ6割が北海道で生産されている状況です。しかし最近では、淡路玉ねぎなど北海道以外の地域で生産される有名な玉ねぎも増えています。
参考
都道府県別生産ランキング(2020年度産)
1位:北海道(88万6200トン)
2位:佐賀県(12万4600トン)
3位:兵庫県(9万8500トン)
4位:長崎県(3万2800トン)
5位:愛知県(2万7600トン)
2)日本で栽培されている玉ねぎの種類
・黄玉ねぎ
日本で最も多く栽培されている玉ねぎ。薄茶色の表皮と球形に近い形状をしているのが特徴で強い辛みを持つ。
品種例
・スーパー北もみじ
・北もみじ2000
・オホーツク222
・赤玉ねぎ
表皮が赤紫色の玉ねぎ。輪切りにすると年輪のような模様が見られるのが特徴で紫玉ねぎやレッドオニオンとも呼ばれる。
品種例
・アーリーレッド
・湘南レッド
・猩々赤(しょうじょうあか)
・くれない
・さらさらレッド
・白玉ねぎ
表皮が薄い極早生種・早生種の玉ねぎ。水分を多く含んでいるため果肉が柔らかく辛味も少ない。
品種例
・愛知白早生
・サラダオニオン
・真白(ましろ)
・小玉ねぎ
直径3~4cm程度の小型の玉ねぎ。黄玉ねぎを小さくしたような見た目をしているためプチオニオンとも呼ばれる。
品種例
・ペコロス
・パールオニオン
・ルビーオニオン
2.玉ねぎ栽培のポイント
種まき・苗づくり
(1)苦土石灰を1平方メートル当たり150グラム、化成肥料を100グラム入れて深く耕す。
(2)高さ10センチ、幅75センチの苗床をつくる。
(3)苗床に8センチ間隔の浅い溝を掘り、5ミリ間隔で種をまく。
(4)種をまいた所を薄く覆土して水やりをする。
(5)種をまいた所が乾燥してしまうと発芽不良を引き起こしてしまう可能性があるため、不織布やワラなどを覆い被せて保湿する。
(6)芽が出てきたら覆い被せていた不織布やワラなどを取り除く。
(7)芽の長さ6~7センチ位のタイミングで1回目の間引きを行う。
(8)芽の長さが10センチ位のタイミングで2回目の間引きを行う。
(9)追肥は2回目の間引きの後。
(10)化成肥料を1平方メートル当たり30グラム程度与える。
(11)秋まきの育苗日数は50~60日程度を目安に。
(12)春まきの育苗日数は60~90日程度を目安に。
土づくりと定植
(1)定植2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり150グラム程度施して畑をよく耕す。
(2)定植1週間前に堆肥を平方メートル当たり3キログラム、元肥を100グラム、過リン酸石灰を30グラム程度施して畑をよく耕す。
(3)高さ15センチ、幅90~120センチ程度の平畝を整形する。
(4)生育促進と雑草防止に効果がある黒マルチを整形した畝に張る。
(5)直径5センチ、株間12~15センチの穴を3個~5個、並列に開ける。
(6)あらかじめ穴が開いてある黒マルチを使用するのも可。
(7)長さ20~25センチに成長した苗を茎の白部分が見えるように植え付ける。
栽培管理
(1)追肥を実施するのは、定植後25日目位の時期と苗が伸び出す早春の時期の2回。
(2)マルチ栽培の場合は化成肥料を「1穴・ひとつまみ」でまく。
(3)マルチ無し栽培の場合は化成肥料を畝全体にまき、土と肥料をよくかき混ぜる。
(4)アブラムシやべと病、軟腐病、黒斑病などの病害虫に注意する。
(5)除草作業をこまめに行う。
収穫・貯蔵
(1)収穫適期は全体の約8割の茎が倒伏してきた頃。
(2)天気の良い日を見計い一気に収穫する。
(3)雨の当たらない場所に並べて1~3日乾かす。
(4)葉つきの状態の場合は、数株ずつ束ねて風通しの良い場所につるす。
(5)茎を切った状態の場合は、網袋か箱に入れて風通しの良い場所に保管する。
3.潅水作業のコツと注意点
玉ねぎは乾燥に弱い農作物です。しかし、畝全体に水が染み込んでいる状態が長く続いていると病害虫の発生を誘発してしまう恐れがあります。
そのため、種まき時と苗の定植直後に十分に水を与えた後は、自然の雨のみにまかせ、気温が上昇する3月を過ぎたら、徐々に潅水の頻度を増やしていくのが良いでしょう。
なお、日本の玉ねぎ生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者もいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けの設備とハウス栽培向けの設備の2種類があります。
潅水制御装置の中には、玉ねぎの苗づくりにも最適な育苗専用の潅水チューブや最大10メートルの散水幅を誇る露地栽培向けの潅水チューブもありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
製品例
・スミサンスイR-育苗(潅水チューブ)
https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/spray/sumi_sansui_r_ikubyou/
・スミサンスイR露地ワイド(潅水チューブ)
https://www.sumika-agrotech.com/irrigation/products/spray/sumi_sansui_r_roji_wide/
また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、スマート農業など先進的な農業生産に興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
玉ねぎは種から育てるのが難しい農作物です。しかし、定植の時期が近づく10月上旬~11月上旬頃になると、ホームセンターの園芸コーナーで50本1束になった長さ15~20センチ位の苗を購入することができるため、初心者でも気軽に玉ねぎ栽培に挑戦できます。玉ねぎ栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。