みつばは汁物など私たちの食卓にも並ぶ人気の農作物です。この記事では、みつば栽培における潅水作業のポイントと注意点について解説していきます。
目次
1.日本のみつば栽培
2.みつば栽培の手順
3.潅水作業のポイントと注意点
4.まとめ
1.日本のみつば栽培
1)みつば栽培の歴史
みつばはセリ科ミツバ属に属する多年草の植物です。
原産地は日本で、各地の山野に自生していたものを摘み取って食べたのがはじまりといわれています。
本格的な栽培がはじまったのは、江戸時代に入ってからで、1697年に書かれた書物「農業全書」には、栽培の仕方や簡単な食べ方を紹介した記述が残されているそうです。
現在の主な生産地は、千葉県、愛知県、茨城県、静岡県、埼玉県の5県で、β-カロテンやビタミK、カリウム、葉酸など私たち人間が生きていくために必要な栄養も多く含むことがわかっています。
※参考1
2019年都道府県別生産量ランキング
1位:千葉県(2720トン)
2位:愛知県(1910トン)
3位:茨城県(1730トン)
4位:静岡県(1410トン)
5位:埼玉県(1390トン)
※参考2
可食部100グラムに含まれる栄養素の量
・炭水化物(4.0グラム)
・食物繊維(2.5グラム)
・脂肪(0.1グラム)
・タンパク質(1.0グラム)
・ビタミンA(61マイクログラム)
・β-カロテン(730マイクログラム)
・チアミン(0.03ミリグラム)
・リボフラビン(0.09ミリグラム)
・ナイアシン(0.4ミリグラム)
・パントテン酸(0.29ミリグラム)
・ビタミンB6(0.04ミリグラム)
・葉酸(44マイクログラム)
・ビタミンC(8ミリグラム)
・ビタミンE(0.7ミリグラム)
・ビタミンK(63マイクログラム)
・ナトリウム(8ミリグラム)
・カリウム(640ミリグラム)
・カルシウム(25ミリグラム)
・マグネシウム(17ミリグラム)
・リン(50ミリグラム)
・鉄分(0.3ミリグラム)
・亜鉛(0.1ミリグラム)
・銅(0.07ミリグラム)
・セレン(1マイクログラム)
・水分(93.8グラム)
・ビオチン(1.9マイクログラム)
2)日本で栽培されているみつばの種類
・根みつば
根を付けた状態で出荷されるみつば。野生種に最も近く、栄養価も高い。芽を土寄せして軟化栽培するので根元部分だけが白くなる。お浸し、汁物、卵とじ、揚げ物、炒め物などに向いている。
・糸みつば
水耕栽培でつくられるみつば。通年で市場に出回っているため、丼物や汁物など様々な料理に使われることが多い。茎が緑色になることから別名「青みつば」とも呼ばれる。
・切りみつば
冬が旬のみつば。薄緑色の葉と白い茎が特徴。香りが穏やかで柔らかい口当たりをしている。根を切り取って出荷されているため、茶碗蒸しや汁物、雑煮などの具に使われることが多い。
2.みつば栽培の手順
種まき・育苗
(1)みつばの種は皮が固く発芽しにくいため、種まきの前日になったら水に浸しておく。
(2)農業用ポットやセルトレイに育苗用の土を入れ、指で深さ1センチ程度の穴を掘り、種を3~4粒まく。
(3)5ミリ程度の高さで覆土して上から軽く押さえる。
(4)発芽は20℃前後が適している。
(5)プランター栽培の場合は、発芽して双葉が開いたら、形の悪いものを間引く。
(6)水やりをする。
(7)春・夏まきの場合は直射日光を避けた場所で、秋まきの場合は日当たりの良い場所で、育苗する。
(8)本葉3〜4枚生えたら定植する。
土づくり・定植
(1)連作障害を避けるため、みつばを3~4年栽培していない畑を選ぶ。
(2)定植2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約70グラム施して深く耕す。
(3)定植1週間前に化成肥料を1平方メートル当たり約70グラム、堆肥を1平方メートル当たり約5キログラム施して、再びよく耕す。
(4)幅30センチ(1条植え)・幅60センチ(2条植え)、高さ10センチの平畝を整形する。
(5)株間10~15センチを目安に、定植用の穴を掘る。
(6)苗を植えた農業用ポットやセルトレイに水をたっぷり含ませる。
(7)農業用ポットやセルトレイから苗を抜き、掘った穴に植える。
(8)株元に土を寄せ根と土を密着させる。
栽培管理
(1)株が成長し、草丈が高くなると倒伏しやすくなるため、土寄せを定期的に行う。
(2)株の根元が露出して、太陽の光が直接当たると、生育が弱くなってしまうため気を付ける。
(3)プランター栽培の場合は、本葉が4~5枚生え、草丈が8~10センチ程度の高さに成長したら、形の悪いものを間引く。
(4)間引いた苗は「間引き菜」として利用できるため、好みの食べ方で食べる。
(5)茎葉の色が薄く、成長が悪い場合には追肥(化成肥料)を施す。
(6)霜に弱いため寒冷紗などを使用して保温する(秋まきの場合のみ)
(7)アブラムシ、ハダニ、立枯れ病、べと病、菌核病、うどん粉病などの病害虫に注意する。
(8)生育適温は15~22℃。
(9)市販の食用ミツバ(スポンジが付いた状態のもの)を購入し、プラスチックの容器に水と専用の液体肥料を入れ、水耕栽培を手軽に楽しむのも良い。
収穫作業
(1)収穫適期は、草丈が25~30センチ程度に成長した頃。
(2)みずみずしい食感が味わいたい場合は早朝に、甘い食感が味わいたい場合は夕方に、収穫作業を行う。
(3)株元を2~3センチ程度残し、ハサミやナイフを使用して丁寧に外葉を切り取る。
3.潅水作業のポイントと注意点
みつばは乾燥に弱い農作物です。
そのため、発芽するまでの時期や定植して根が活着するまでの時期は、生育にばらつきが生じないよう、土の表面が乾く前に潅水作業を行う必要があります。
しかし、雨の日や曇りの日など湿度の高い日に水分を与え過ぎると、病気が発生する可能性が高まってしまいますので、水のやり過ぎには十分に注意してください。生育期における潅水量の目安(1回当たり)は1株約1.5~2リットルです。
なお、日本のみつばを栽培する生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者がいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けとハウス栽培向けの2つがあります。
潅水制御装置の中にはみつば栽培に適した資材も数多くありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
みつばは初心者でも比較的簡単に作れる人気の農作物です。最近では、ホームセンターなどで販売されている苗を購入して家庭菜園で栽培する人も増えました。みつば栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。