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ネギ栽培における潅水作業と収量増加の関係について

潅水作業は、農作物の収量に大きな影響を及ぼす重要な作業です。この記事では、ネギ栽培における潅水作業と収量増加の関係について解説していきます。

目次

1.日本のネギ栽培

2.ネギ栽培のポイント

3.潅水作業と収量増加の関係

4.まとめ

1.日本のネギ栽培

1)ネギ栽培の歴史

ネギは中国西部、中央アジア北部を原産とするヒガンバナ科ネギ属の農作物です。

特徴は特有の辛みと風味で、血行促進や疲労回復、殺菌作用、免疫力向上などの効果があるといわれています。

ネギ栽培の歴史は古く、紀元前206年~西暦220年に栄えた古代中国の漢王朝の前漢時代には、すでに食用としての栽培が行われていたと伝えられています。

日本に伝わった正確な年代は不明ですが、西暦720年に完成した日本最古の歴史書である「日本書紀」に「秋葱」という言葉が登場していることから、遅くとも奈良時代には食用としての栽培がスタートしていたことが現在の定説になっています。

2)日本で栽培されている品種

日本のネギには「加賀群」・「千住群」・「九条群」の3つの品種系統あります。

加賀群

・品種例

加賀太ネギ(金沢根深太ネギ)・札幌一本・秋田太ネギ・源吾ネギ・岩槻ネギ(慈恩寺ネギ)、下仁田ネギ

・特徴

夏に生長するネギ。冬は生長が止まり休眠状態で越冬する。

・栽培地

北海道・東北・北陸・関東北部

千住群

・品種例

千住ネギ・千住合黒ネギ・深谷ネギ・金長

・特徴

長ネギと呼ばれる根元の部分が白いネギ。白い部分のみ食べ、葉の部分は食べない。

栽培地

関東・東日本

九条群

・品種例

九条細ネギ・九条太ネギ・浅葱系九条(博多万能ネギ)

特徴

根元の白い部分が少なく葉先が柔らかいネギ。青ネギ、万能ネギとも呼ばれる。

・栽培地

関西・西日本

2020年度の日本のネギ総生産量は約44万トンで、その内およそ4割が千葉県、埼玉県、茨城県、北海道、群馬県で生産されている状況です。

参考

都道府県別の生産量ランキング

1位:千葉県(5万6900トン)

2位:埼玉県(5万600トン)

3位:茨城県(4万9000トン)

4位:北海道(2万2000トン)

5位:群馬県(1万9600トン)

2.ネギ栽培のポイント

苗床づくり

(1)種まき2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約100グラム施して畑をよく耕す。

(2)種まき1週間前に堆肥を1平方メートル当たり約3キログラム、化成肥料を1平方メートル当たり約150グラム施して畑をよく耕す。

(3)幅60~70センチ、高さ10センチ程度の苗床をつくる。

種まき・育苗

(1)苗床に種を5ミリ間隔でスジまきして、3~5ミリの厚さで覆土した後、潅水する。

(2)1回目の間引きは草丈が6~7センチの頃1.5cm間隔で1本に。

(3)2回目の間引きは草丈10センチの頃3センチ間隔で1本に。

(4)種まき後1カ月毎に化成肥料を1平方メートル当たり50グラム施す。

(5)3~4月の低温期の種まきの場合は、農業用マルチを被せ、ビニールトンネルで覆う。

(6)千住群系統の品種(長ネギ)は、チェーンポットと呼ばれる紙製の農業用ポットを敷いた苗箱やセルトレーに種をまき覆土する。

(7)千住群系統の品種(長ネギ)は、ビニールを使用して15~20℃に温度を保つ。

(8)潅水は朝に行い、育苗後半は潅水を控えめにする。

(9)育苗日数は60日前後。

(10)定植前日は潅水量を多めに。

定植・土寄せ・追肥(千住群系統の品種のみ)

(1)条間85~120センチ、溝幅20センチ、深さ20~25センチの植え付け溝をつくる。

(2)株間5~8センチ間隔を目安に、溝の側面に苗を立てかけ、3cm程度の高さに覆土する。

(3)専用の移植機を使用して定植するのも可。

(4)土寄せと追肥を成長に合わせ3~4回程度実施する。

(5)1回目の土寄せと追肥は定植30~50日前後。

(6)2回目の土寄せと追肥は定植40~70日前後。

(7)3回目の土寄せと追肥は定植70~90日前後。

(8)収穫30~40日前になったら仕上げの土寄せを行う(追肥はしない)

(9)1回の土寄せで深く掘り過ぎない。

(10)さび病やべと病の発生に注意する。

収穫作業

(1)千住群系統の品種(長ネギ)は、根元の白い部分(土で覆われている部分)が長く成長したら、覆われている片側の土を鍬やスコップ、専用の機械で崩して堀り取る。

(2)九条群系統の品種(青ネギ)は、地上部に出ている部分のみ刈り取れば、引き続き新芽を収穫することができるため、50cm程度に成長した時点で、地上部に出ている部分のみ刈り取る。

3.潅水作業と収量増加の関係

ネギは乾燥に強い農作物です。そのため潅水作業は、自然の雨を基本に、干ばつなど降雨が極端に少ない時だけ行うのが良いといわれてきました。

しかし最近の農業研究では、「夏採りの品種の場合、高温・乾燥状態になる収穫直前の時期に、畝間への潅水作業を行うと品質や収量が向上する」ことが判明しています。

以下がその内容になります。

(1)収穫直前の時期に潅水作業を行うと盤茎付近の土壌温度が3℃程度低下する。

(2)土壌水分量は著しく高まるが、徐々に低下した後は適正量で維持される。

(3)収穫11日~15日前に5日間の潅水を行うと、生育が促進され重量が増える。

(4)収穫11日~15日前に5日間の潅水を行うと、葉鞘上部の色彩が良好になり外観品質が向上する。

(5)収穫直前の時期に土壌水分を増やすと、葉鞘部分に破断強度が低下するため柔らかくなる。

(6)収穫直前の時期に土壌水分を増やすと、ピルビン酸の生成量が減少するため、辛味が少なくなる。

参考文献

茨城県農業総合センター園芸研究所

「夏どりネギ栽培における収穫直前潅水による収量増加と柔らかさの向上」

https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/enken/seika/yasai/negi/documents/s21y14.pdf

なお、日本のネギ生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者もいます。

潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けの設備とハウス栽培向けの設備の2種類があります。

潅水制御装置の中には、千住群品種(長ネギ)の苗づくりに最適な育苗専用の潅水チューブや農作物の畝間に埋没して土壌内部に水分を与える潅水チューブもありますので、ぜひ導入を検討してみてください。

また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。

家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、スマート農業など先進的な農業生産に興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

SenSprout Pro潅水制御システム

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

4.まとめ

潅水作業は農作物の収量を増加する大切な作業です。ネギ栽培を行う際には、ぜひこの記事を参考に潅水作業を進めてみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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