とうもろこしはたんぱく質やビタミンB群など、私たち人間が健康を維持していく上で必要な栄養を豊富に含む人気の農作物です。この記事では、とうもろこし栽培における潅水作業のポイントと注意点について解説していきます。
目次
1.日本のとうもろこし栽培
2.とうもろこし栽培の手順
3.潅水作業のポイントと注意点
4.まとめ
1.日本のとうもろこし栽培
1)とうもろこし栽培の歴史
とうもろこしはイネ科トウモロコシ属に属する穀物の一種です。
原産はメキシコやボリビアなどの中南米付近を起源とする説が有力で、世界三大穀物のひとつにも数えられています。
とうもろこし栽培の歴史は古く、紀元前6700年頃の時代にはすでに食用としての栽培が行われていたと言われています。
とうもろこしをヨーロッパに伝えたのは、アメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスの一行で、伝わった当初は地中海沿岸の地域を中心に栽培されていましたが、16世紀末を迎える頃になると、ヨーロッパ全土で栽培されるようになっていきます。
日本に伝わったのは、ポルトガルとの貿易が盛んに行われていた16世紀の終わりの頃で、伝わってしばらくは阿蘇山や富士山の麓など稲作が向かない地域を中心に栽培されていました。
しかし、北海道開拓が本格化した明治時代を迎えると、近代の育種法で生まれた新たな品種の大規模な生産が行われるようになります。
現在の主な生産地は、北海道、茨城県、千葉県、群馬県、長野県の1道4県で、日本で生産されるとうもろこしのおよそ4割が北海道で生産されています。
・参考
2019年都道府県別生産量ランキング
1位:北海道(9万9000トン)
2位:茨城県(1万6000トン)
3位:千葉県(1万5900トン)
4位:群馬県(1万1900トン)
5位:長野県(8640トン)
2)日本で栽培されているとうもろこしの種類
スイートコーン
日本で一般的に栽培されている食用のとうもろこし。最近では生で食べられる品種も栽培されている。
スイートコーンの種類
・ゴールデンコーン
濃い黄色の粒が特徴のとうもろこし。「ゴールデン」という名の付く品種が多い。
・シルバーコーン
白色の粒が特徴のとうもろこし。粒皮が柔らかく甘みが強い。
・バイカラーコーン
黄色と白色の粒が3:1の割合で入っているとうもろこし。現在の日本のとうもろこしの主流になっている。
ポップコーン
お菓子のポップコーンをつくる際に使用するとうもろこし。加熱すると程よい具合に皮が破れる。
デントコーン
牛や豚、鳥などの家畜の飼料に利用されているとうもろこし。成長過程で糖分がデンプンに変わってしまうため食用には向かない。
フリントコーン
食用や家畜の飼料、工業用の原料に利用されている加工用のとうもろこし。メキシコ料理のタコス「トルティーヤ」にも使用されている。
ワキシーコーン
モチモチとした食感が特徴のとうもろこし。白色、黄色、黒色、紫色など日本にも数種の在来種がある。
ソフトコーン
粒の大部分が柔らかいデンプンでつくられているとうもろこし。南米の高原地帯が原産。
2.とうもろこし栽培の手順
土づくり・種まき
(1)種まき2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約70グラム施して深く耕す。
(2)種まき1週間前に化成肥料を1平方メートル当たり約150グラム、堆肥を1平方メートル当たり2~3キログラム施し再びよく耕す。
(3)一条まきの場合は、幅40~50センチの平畝を整形する。
(4)二条まきの場合は、幅80~90センチの平畝を整形する。
(5)黒色のマルチシートで畝全体を覆う。
(6)直径7~10センチ、深さ3~4センチの穴を1列掘る。(一条まきの場合)
(7)直径7~10センチ、深さ3~4センチの穴を2列掘る。(二条まきの場合)
(8)掘った穴に種を3~4粒まく。
(9)2~3センチの高さで覆土して、上から軽く押さえる。
(10)土が乾燥している場合は、水やりをする。
(11)鳥害が心配な場合は、芽が出るまで専用のネットで覆っておく。
(12)本葉が4枚生えたら生育の良い株を1本だけ残して他は間引く。
栽培管理
(1)草丈が50センチ位に成長したらマルチシートを剥がす。
(2)1回目の追肥と土寄せを行う。
(3)茎の先端に雄穂が出たら2回目の追肥を行う。
(4)1番上の雌穂のみを残して他は取り除く。
(5)取り除いた雌穂の皮を剥いてヤングコーンとして利用するのも可。
(6)アワノメイガの発生・被害に注意する。
収穫作業
(1)収穫適期は絹糸が出た20~24日後。
(2)雌穂の絹糸がこげ茶色になったら少し皮を剥いて粒の充実を確かめて収穫する。
(3)早朝に収穫すると食味が良く、長もちする。
(4)早採りや遅採りをしてしまうと甘味が少なくなってしまうため注意する。
3.潅水作業のポイントと注意点
高収量・高品質なとうもろこしを生産していくためには、生長段階に合わせて水やりの方法を変えていく必要があります。
種まき後
・発芽するまでは、土の表面が乾かないようこまめに潅水作業を行う。
・日当たりの悪い場所で栽培する場合は多湿に注意する。
発芽後
・本葉が生えるまでは、乾燥に注意し、土の表面が乾いてきたタイミングで潅水作業を行う。
生育初期
・雄蕊(ゆうずい)が出るまでは、少量~普通量の水を土の表面が乾いたタイミングで、潅水の回数を抑えながら与えると、根が水分を求めて地中深くまで張り出し、より充実した株が育つ。
・潅水の頻度は1週間に1~2回程度が目安で、気温が上がり始める午前中に潅水作業を行う。
・気温が上がり切った時間帯に潅水作業を行ってしまうと、水が太陽熱で温められ、根を傷めてしまう恐れがあるため十分に注意する。
・潅水の量は、1株につき1回当たり約2.0リットル(pF値は1.7~2.1)を目安とする。
生育中期~収穫期
・開花と結実がはじまったら潅水の量を増やし、水切れを起こさないようにする。
・過湿と乾燥を短時間で何度も繰り返すと株が弱るため十分に注意する。
・日中に株が生長し、夕方から夜間にかけて実が大きくなるため、日没の2~3時間前に潅水作業を行う。
・潅水の量は、1株につき1回当たり約3.0リットル(pF値は2.1~2.3)を目安とする。
なお、日本のとうもろこしを栽培する生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者がいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けとハウス栽培向けの2つがあります。
潅水制御装置の中には、とうもろこし栽培に適した資材も数多くありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
とうもろこしは大人から子どもまで幅広い世代に人気の農作物です。とうもろこし栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。