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菊栽培における潅水作業のポイントと注意点

菊(キク)は私たち日本人が古くから親しんできた花です。この記事では、菊栽培における潅水作業のポイントと注意点について解説していきます。

目次

1.日本の菊栽培

2.菊栽培の手順

3.潅水作業のポイントと注意点

4.まとめ

1.日本の菊栽培

1)菊栽培の歴史

菊はキク科キク属に属する多年草の植物です。

※「菊」の動植物名はひらがなか漢字で書きますが、学術的名称として使う場合にはカタカナで書きます。
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/003.html

原産地は中国で、「周王朝が栄えた紀元前1000年の時代には栽培がはじまっていた」といわれています。

日本に伝わったのは、奈良時代の終わり頃で、平安時代を迎えると、菊を題材にした様々な歌(短歌)が詠まれるようになりましたが、当時はまだ貴族などの支配者層が楽しむものとしての趣(おもむき)が強く、一般の民衆に広まるまでには至りませんでした。

広く民衆の心に根付いたのは、鎌倉時代のはじまりに後鳥羽上皇が皇室の家紋を「菊紋」に変えたのがきっかけで、江戸時代の中ごろになると、江戸菊や嵯峨菊、伊勢菊、美濃菊、肥後菊など地域独特の発展を遂げた様々な品種が栽培されるようになっていきます。

現在の主な生産地は、愛知県、沖縄県、鹿児島県の3県で、日本で出荷される菊の半分以上を生産しています。

参考1

2019年都道府県別出荷量ランキング

1位:愛知県(4億7330万本)

2位:沖縄県(2億5260万本)

3位:鹿児島県(8890万本)

2)日本の菊文化(中見出し)

菊は皇室の家紋に象徴される通り、日本の文化と深くつながっています。

毎年、秋には全国で「菊まつり」という催し物が開催され、50円硬貨やパスポート、勲章などにも菊をモチーフにしたデザインが施されています。

参考2

全国の菊関連イベント一覧(一部)

北海道

・おびひろ菊まつり

・きたみ菊まつり

・さっぽろ菊まつり

青森県

・弘前城菊と紅葉まつり

宮城県

・みやぎ大菊花展 柴田大会

秋田県

・よこて菊まつり

山形県

・南陽の菊まつり

福島県

・二本松の菊人形

茨城県

・笠間の菊まつり

群馬県

・関東菊花大会

埼玉県

・菊花展

千葉県

・伝統の古典菊

東京都

・新宿御苑「菊花壇展」

・湯島天神菊花展

・影向(ようごう)菊花大会

神奈川県

・三溪園「菊花展」

新潟県

・新潟県菊花展覧会(弥彦菊まつり)

福井県

・たけふ菊人形

長野県

・国宝松本城菊花展

愛知県

・名古屋城菊花大会

三重県

・伊賀上野城 菊花展

京都府

・菊花展

大阪府

・日本菊花全国大会

・ひらかた菊フェスティバル

兵庫県

・稲美町菊花展

・菊の展示会

・兵庫県連合菊花展覧会

和歌山県

・和歌山城公園菊花展

岡山県

・岡山後楽園菊花大会

広島県

・キク展

徳島県

・鴨島大菊人形 四国菊花品評会

香川県

・高松市菊花展競技会

愛媛県

・大洲市菊花展

福岡県

・西日本菊花大会

熊本県

・菊人形 菊まつり

鹿児島

・菊まつり

3)日本で栽培されている菊の種類

・大菊(一輪菊)

花の直径が20センチ前後に成長する品質。一輪だけ残して周りのつぼみを摘蕾する。「三本仕立て」、「ダルマづくり」、「福助づくり」などの仕立て方がある。

・中菊

仏花などに使用される一般的な品種。後に紹介する「古典菊」もこの品種に分類される。栽培しやすいため初心者でも簡単に育てることができる。

・小菊

花の直径が1~3センチに成長する品種。つぼみを摘蕾せずに育てる。「懸崖仕立て」や「菊人形」などにして楽しむ。

・スプレー菊

花の直径が3~6センチに成長する品種。つぼみを摘蕾しないで育てる。仏花などを用途にビニールハウスで周年栽培されている。

・洋菊(ポットマム)

1950年代にアメリカ育成された品種。鉢植えで栽培されることが多い。無数の花がたくさん咲く。

・古典菊

江戸時代から日本各地栽培されている伝統的な品種。江戸菊、嵯峨菊、伊勢菊、美濃菊、肥後菊など様々な種類がある。当時の地名をそのまま用いているのが特徴。

・食用菊

食用に栽培されている品種。花びらを食べる「大輪種」と料理のつまに使用する「小輪種」の2つに大別される。食材としての旬は10~11月頃。

参考3

可食部100グラム当たりに含まれる栄養素の量

・食物繊維(3.4グラム)

・タンパク質(1.4グラム)

・ビタミンC(11.0ミリグラム)

・ナトリウム(2.0ミリグラム)

・カリウム(280.0ミリグラム)

・カルシウム(22.0ミリグラム)

・マグネシウム(12.0ミリグラム)

・リン(28.0ミリグラム)

・鉄分(0.7ミリグラム)

・水分(91.5グラム)

2.菊栽培の手順

土づくり・苗の定植

(1)苗を植えつける数週間前に花壇の土を深く掘り返し、古い根や石などを取り除き、日光に当て消毒する。

(2)市販されている石灰や堆肥、腐葉土、菊用の培養土などを花壇に入れ、よくかき混ぜる。

(3)「もみ殻」や「くん炭」などを加えるのもよし。

(4)高さ10~15センチの畝を整形する。

(5)ホームセンターや種苗店、インターネットなどで販売されている苗を購入する。

(6)株間10~15センチを目安に、定植用の穴を掘る。

(7)苗に水を含ませる。

(8)掘った穴に苗を植え付ける。

栽培管理

(1)草丈の高い品種を栽培する場合は、倒伏しないよう、市販されている支柱を購入して支える。

(2)夜間に光が当たると開花の時期がずれるため、花壇の近くに常夜灯や防犯灯がある場合は、段ボールなどを使用して遮光する。

(3)生育が悪い場合には、開花する2ヵ月前までに粒状の化成肥料または有機質の肥料を与える。

(4)肥料を与えた後は、株元に土を寄せ、倒れないようにする。

(5)一輪仕立てにする場合には、蕾の直径が5ミリ位に成長した頃を目安に、頂点の蕾だけ残し、その他の蕾はすべて摘み取るようにする。

(6)切り花用の菊を栽培する場合は、定植2週間後を目安に、頂点の芽を摘み取り、わき芽の高さが20~30センチ位に成長したタイミングで、サイズが同じ位のわき芽を4~5本残し、その他のわき芽はすべて摘み取るようにする。

(7)鉢植え(洋菊)の場合は摘み取りしない。

(8)白さび病や灰色かび病、アブラムシ、ハダニ、アザミウマなどの病害虫に注意する。

収穫・花がら摘み

(1)一輪挿しにする場合は、開花して間もないもの選び、朝か夕方に切って収穫する。

(2)小菊の場合は、上部の花が6~7分咲き、周囲の花が3~5分咲きに成長してきたタイミングを見計らい収穫する。

(3)鉢植え(洋菊)の場合は、咲き終わった花がらを摘み取る。

(4)開花期が過ぎたら根元から10~15センチまで切り戻し、寒肥(かんごえ)として肥料を与える。

(5)根元に敷きワラや腐葉土を施し、不織布や寒冷紗などを使用して越冬する。

3.潅水作業のポイントと注意点

菊は水はけの良い土壌を好む花です。

そのため、植え付け直後は多くの水分を必要としますが、その後は自然の雨のみを基本に水管理を行っていけば問題はありません。

しかし、雨の少ない時期が続く場合には、朝か夕方の涼しい時間帯に水を与えるようにしてください。

なお、日本の菊を栽培する生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者がいます。

潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「潅水チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けとハウス栽培向けの2つがあります。

潅水制御装置の中には、自然の雨のような水を施す、菊栽培に適した資材も数多くありますので、ぜひ導入を検討してみてください。

また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。

家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

SenSprout Pro潅水制御システム

https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

4.まとめ

菊は都道府県や市町村が制定する花にも用いられている身近な植物です。毎年秋には全国の愛好家が一堂に会し、日本一の菊づくり名人を決定する菊花展も開かれています。

菊栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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