ごぼうは整腸作用や生活習慣病の改善などに効果がある人気の農作物です。この記事ではごぼう栽培における潅水作業のポイントと注意点について解説していきます。
目次
1.日本のごぼう栽培
2.ごぼう栽培の手順
3.潅水作業のポイントと注意点
4.まとめ
1.日本のこぼう栽培
1)ごぼう栽培の歴史
ごぼうはキク科ゴボウ属に属する根菜類の野菜です。
元々は、中国東北部からヨーロッパにかけて分布する二年生の草本(シダ植物と種子植物の内、地上茎の生存が1年以上継続しないもの)で、根の部分を食べる文化があるのは日本と韓国だけです。
そのため、原産地である中国やヨーロッパでは漢方薬やハーブなど薬草として用いられることが多く、食用として栽培する国は日本以外にありません。
日本で食用としての栽培がはじまったのは、平安時代中期~鎌倉時代中期の間で、江戸時代の元禄年間(1688年~1704年)を迎える頃になると、その地域の特性に合わせた様々な品種が栽培されるようになります。
その中でも、特に有名なのが江戸・滝野川村(現在の東京都北区)で栽培されていた滝野川ごぼうで、「日本で栽培されているごぼうの9割以上がこの品種に関係している」と言われています。
現在の主な生産地は青森県・茨城県・北海道・宮崎県・群馬県の1道4県で、日本で生産されるごぼうのおよそ半分を青森県・茨城県・北海道で生産している状況です。
参考:2020年度都道府県別ごぼう生産ランキング
1位:青森県(4万8000トン)
2位:茨城県(1万2800トン)
3位:北海道(1万1500トン)
4位:宮崎県(1万200トン)
5位:群馬県(7000トン)
2)日本で栽培されている主な品種
長根種
・滝野川ごぼう
東京の伝統野菜「江戸東京野菜」の認定を受けている品種。ごぼう特有の香りと良好な食味が特徴。
・立川ごぼう
福島県会津地方にある立川地区で多く栽培されている品種。福島県の会津ブランド推進委員会が認定する「会津伝統野菜」の認定も受けている。
・村山早生ごぼう
長野県須坂市の村山町で生まれた品種。中の宮早生ごぼうという品種を改良したもので長野県の伝統野菜の認定も受けている。
・渡辺早生ごぼう
滝野川ごぼうを改良してつくった早堀り用の品種。全国どこでも栽培できる。
・柳川理想牛蒡
生産量全国1位の青森県で多く栽培されている品種。他の品種よりも色が白く柔らかいのが特徴。
・常盤ごぼう
長野県飯山市常盤地区で生まれた品種。他の品種よりも大きく太い。信州の豊かな風土に育まれた農作物ブランド「おいしい信州ふーど」の認定も受けている。
短根種
・サラダごぼう
サラダに適した品種。他の品種と比較して短く(30センチ〜40センチ)根が白いのが特徴。
・堀川ごぼう
京都府で400年前から栽培されてきた伝統野菜。中心には空洞があるのが特徴で6センチ〜9センチの太さに成長する。
・大浦ごぼう
太さ10センチ程度まで成長する品種。過去には直径30センチまで成長したものが確認された。
・宇陀金ごぼう
奈良県宇陀市で栽培されている品種。奈良県の伝統野菜でおせち料理にも使用される。
・サラダむすめ
サラダに適した品種。根が白いのが特徴。
・明治ごぼう
岡山県井原市明治地区で栽培されている品種。他の品種と比較して収穫までの期間が長い。(2〜3か月)
・沢野ごぼう
石川県能登沢野地区で栽培されている品種。生産量が極めて少ない品種でこの地域でしか栽培できない。
・間倉ごぼう
岡山県岡山市で栽培されている品種。足守ごぼうとも呼ばれる。
その他
・山ごぼう
山菜の一種。岐阜県中津川市を中心に栽培されている品種で菊ごぼうとも呼ばれる。
・サルシフィ(西洋ごぼう)
フランス料理に使用される西洋の根野菜。日本には明治時代に伝わった。
・越前白茎ごぼう
地上に出ている茎の部分も食べられる品種。福井県の伝統野菜にも認定されている。
2.ごぼう栽培の手順
土壌づくり
(1)連作に弱いため、3年以上ごぼうを栽培していない畑を選ぶ。
(2)種まき2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり約150グラム施して深く耕す。
(3)種まき1週間前に堆肥を1平方メートル当たり約3キログラム、化成肥料を1平方メートル当たり約100グラム施してよく耕す。
(4)幅50~60センチ、高さ10~30センチの畝をつくる。
種まき・発芽までの栽培管理
(1)水を入れた容器に種を一晩浸ける。
(2)成形した畝の中央に直径5センチ、深さ1センチの穴を掘る。
(3)掘った穴に種を4~5粒まく。
(4)軽く覆土して水やりをする。
(5)株間の目安は長根種10~15センチ、短根種3~8センチ。
(6)発芽(10日~14日)したら畝面を浅く耕して株元に土を寄せる。
(7)こまめに除草する。
間引きから収穫までの栽培管理
(1)本葉が1枚(種まき後30~40日)になったら葉が垂直に伸びているものを残して2本立ちにする。(春まきの場合のみ)
(2)本葉が2~3枚になったら葉が垂直に伸びているものを残して1本立ちにする。(秋まきの場合のみ)
(3)1回目の追肥・中耕・土寄せを行う。
(4)茎の長さが30cm位になるまで追肥・中耕・土寄せを行う。(1~2回)
(5)追肥は1平方メートル当たり約30グラムを目安に。
(6)根こぶ病、黒斑細菌病、うどんこ病、ネコブセンチュウ、アブラムシ、ヨトウムシ、ネキリムシ類等の病害虫の発生に注意する。
収穫作業
(1)葉を地上10センチくらいの高さで刈り取る。
(2)30~40センチの穴を掘る。
(3)根の部分を両手で持ち、斜めに倒しながら引き抜く。
(4)長根種は種まき後150日前後、太さ2センチを目安に収穫する。
(5)短根種は種まき後約75日後、太さ1.5~1.7センチ、長さ30~40センチを目安に収穫する。
(6)大規模栽培の場合は専用の収穫機を使用する。
(7)若採りして風味を楽しむのも有り。
3.潅水作業のポイントと注意点
ごぼうは水はけの良い土壌を好む農作物です。
そのため、乾燥に弱い幼苗の内は土が極端に乾かないよう水を十分に与える必要がありますが、本葉が4~5枚生えてくる頃まで成長したら、次の潅水までの時間を少しずつ長くするように管理してください。
なお、日本のごぼう生産者の中には、潅水作業を省力化するための手段として、潅水制御装置という設備を利用している生産者もいます。
潅水制御装置とは、水源の水を汲み上げる「ポンプ」、ポンプで汲み上げた水を運ぶ「パイプ」、潅水作業を実行する「チューブ」等で構成された農業用の設備のことで、露地栽培向けの設備とハウス栽培向けの設備の2種類があります。
潅水制御装置の中には、潅水の間隔を設定できるタイマーなどごぼう栽培に適した機器も数多くありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
また、当社が開発したSenSprout Pro潅水制御システムを使用すれば、インターネットを利用して、潅水作業を遠隔から制御できるようになります。
家庭菜園から大規模農業まで幅広く使える製品になっていますので、興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
SenSprout Pro潅水制御システム
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/
4.まとめ
ごぼうは日本で栽培文化が発展した世界唯一の野菜です。ごぼう栽培にチャレンジする際は、ぜひこの記事を参考に潅水作業を行ってみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。