SenSprout(センスプラウト)

潅水ポンプを使った、遠隔や手動の潅水システムを解説

潅水ポンプを使った潅水システムは、広範囲への潅水を可能にするため、農業の効率化に非常に便利な設備です。

特に、水管理が重要なハウス栽培では、インターネットを利用した遠隔操作で潅水時間を制御できる「遠隔潅水システム」の導入がおすすめです。

しかし、潅水システムの導入に必要な物や設置方法が分からないために、二の足を踏んでいる方もいると思います。

そこでこの記事では、潅水ポンプを使った潅水システムの導入方法について解説します。
遠隔潅水システムに加え、導入が容易な手動での潅水システムも解説します。

目次

1. 潅水システムとは、広範囲に潅水可能な給水設備

2. 潅水のタイミングとその重要性

3. 水を汲み上げるには潅水ポンプが必要

4. 潅水ポンプの手入れ方法

5. 潅水ポンプを使った潅水の導入方法

6. 遠隔潅水システムを導入する場合

7. 手動潅水システムを導入する場合

8. 潅水システムは自分で導入可能か

9. 電気工事不要の手動潅水システムなら導入可能

10. 潅水システムのメリットデメリット

11. 潅水システムは潅水を楽にしてくれる心強い味方

12. まとめ

1. 潅水システムとは、広範囲に潅水可能な給水設備

潅水システムとは、潅水ポンプに潅水チューブまたは潅水ホースを組み合わせて、広範囲に潅水ができる給水設備です。

人力での潅水作業は、水を汲んだり運んだり、ホース等を使って潅水するため大変です。

1日4時間〜6時間かかってしまう潅水作業が、潅水システムを使えば、数十分以内に短縮することも可能で、予め潅水時間を予約しておくこともできます。また、使用するホースや水圧によっては、広範囲に且つムラなく潅水することができます。

その仕組みは意外と単純で、まず設備の起点に設置した潅水ポンプで地下水や井戸水を汲み上げ、その水に圧をかけて潅水チューブや潅水ホースへ送るというもの。送られた水は、潅水チューブまたは潅水ホースに開けられた細かい孔(あな)から吐き出され、土壌(作物)へ供給されます。

導入にはある程度の費用がかかりますが、一度潅水システムを導入すると潅水作業は一気に楽になります。最近では、この一連の潅水システムを購入するモデルではなく、リースモデル、サブスクリプションモデルといった、一度にかかるコストの負担を減らし、導入のハードルを下げるメーカーもあります。 水管理が重要なハウス栽培や、地形的に潅水が難しい段差のある農地などで特に有効です。

2. 潅水のタイミングとその重要性

次に潅水システム導入前に知りたい情報として、潅水のタイミングとその重要性についてご紹介します。

潅水のタイミングは、植物の生育ステージや季節、その日の気温によって異なります。生育ステージでみると、基本的には発芽が揃うまでは毎日行い、発芽がそろって成長期に入ると土壌水分を見つつ、2〜3日に一度、乾燥してしまう前に散水します。収穫期に入ったら散水はやめましょう。水分が足りないと枯れてしまいますし、水分が多すぎると立ち枯れ病などの病気の発生に繋がります。水分センサーを付けていない場合は必ず土壌水分を確認しましょう。

また、潅水を行う時間帯ですが、季節や気温によって異なります。水が冷たすぎても、温かすぎても好ましくありません。基本的には夏は朝10:00までの潅水、冬は12:00ごろの暖かい時間帯に潅水することが重要です。

3. 水を汲み上げるには潅水ポンプが必要

潅水システムの導入に必要不可欠なのが、潅水ポンプ(農業用ポンプ)です。

潅水ポンプの役割は、潅水に必要な水を井戸や地下から汲み上げることと、圧をかけて水を送ること。

潅水システムに流れるすべての水は、この潅水ポンプから送り出されます。

潅水ポンプには電気で動く「電動ポンプ」と、燃料で動く「エンジンポンプ」があります。

さらにエンジンポンプには2サイクルエンジンと4サイクルエンジンのものがあります。2サイクルエンジンは構造が単純で軽量ですが、燃費が悪いなどの欠点があります。4サイクルエンジンは構造が複雑で高価ですが、パワーがあり環境にも優しいなどのメリットがあります。継続的な動作が必要な潅水システムにおいては、燃料補給の必要ない、電動ポンプが使われることがほとんどです。電動ポンプは、エンジンポンプと比べてパワーは劣りますが、燃料を必要とせず、経済的にも優しいポンプです。

また、潅水ポンプには、使用用途ごとに数多くの種類があるため、潅水システムの規模や構造に合ったものを選ぶことが大切です。

4. 潅水ポンプの手入れ方法

長くポンプを使い続けるためにも手入れについて知っておくことは重要です。手入れはエンジンタイプとモータータイプで違うのでそれぞれご紹介します。

・エンジンタイプの手入れ

エンジンタイプの手入れは、燃料フィルターの清掃、点火プラグの清掃・点検、エアクリーナーの清掃・点検があります。燃料フィルターは、汚れがひどくなると故障の原因にもなりますので、定期的に取り替えましょう。また、エアクリーナーは汚れているとエンジンの出力低下に繋がるので、定期的な清掃が重要です。

・モータータイプの手入れ

モータータイプの手入れは、日頃使用した後に水抜きを必ずすることや、オイルで錆止めをしておくことが大切です。また、カーボンブラシの交換は、初回は累計使用時間が500時間、2回目以降が200時間を目安にするか、カーボンブラシの摩耗状態を見て交換しましょう。

その他、手入れ方法の詳細や長期保管、冬場の保管方法については下記の記事を参考にしてみてください。

5. 潅水ポンプを使った潅水の導入方法

潅水ポンプを使った潅水システムの導入方法を、遠隔からインターネットを使って制御を行う「遠隔潅水システム」と直接圃場にて手動で制御を行う「手動潅水システム」に分けて説明します。

「用意する物」、「施設構成」、「設置費用の項目と目安」について説明しますので、システム導入の参考にしてください。

6. 遠隔潅水システムを導入する場合

インターネットを利用し、どこからでもパソコンやスマートホンで潅水システムを遠隔操作するためのゲートウェイと制御盤と電磁弁が必要になる分、手動潅水システムよりも導入のコストや難易度が高めです。

しかし、圃場へ行かなくても潅水を行うことができるため、圃場が点在しているような農家や農業法人にとって利便性はかなり高くなります。

Webブラウザや専用のアプリをスマートフォンやタブレットにインストールし、そこから潅水時間や潅水量を設定することができます。また、SenSproutやゼロアグリのような潅水制御システムでは、水分センサーで水分値を見ながら潅水することができます。水分センサーで土壌やビニールハウス内の水分量を検知し、適切な潅水量を探ることもできるでしょう。

・用意する物

遠隔潅水システムの基本を構成するのは上記5種類です。タイマー動作させるだけであれば、ゲートウェイを使わなくても構築可能ですが、ゲートウェイを使うと、遠隔操作により急な水やりや潅水中止といった、複雑な操作が可能になります。

施設構成

SenSproutが提供している潅水制御システムを例に説明します。潅水制御システムでは、制御盤が潅水システム全体のコントロールをしています。

制御盤は、潅水ポンプと電磁弁に接続され、システムで設定したとおりに潅水ポンプと電磁弁を動作させます。

1システムで4つまで電磁弁を操作できるため、潅水が必要な箇所にだけ潅水することも可能です。

・必要費用の項目と目安

遠隔潅水システムの設置に必要な、費用項目と金額の目安について説明します。

・遠隔潅水システム設置に必要な費用項目

設置に必要な費用項目は上記のとおりです。

費用の目安は、30万円台~で、施設の規模によって変わります。SenSproutの場合は、制御システムと潅水ゲートウェイ、専用の電磁弁2台がセットになって、398,000円で販売しています。

なお、潅水制御システムをレンタルするのであれば、電磁弁一つにつき毎月5,000円のみで導入が可能です。
https://sensprout.com/ja/irrigationcontrolsystem-2/

ただし、遠隔潅水システムは、設置に必要な物がパッケージになって販売されている場合もあるため。販売価格が一括表記されている場合があります。

7. 手動潅水システムを導入する場合

潅水システムを手動で制御する場合でも、施設の基本構成は遠隔潅水システムとほぼ同じです。

ただ、潅水ポンプの動作を手動で行うため、制御システムが不要になります。

・用意する物

手動潅水システムは、遠隔潅水システムよりも材料がシンプルです。制御システムが不要なため、一般的な給水用資材で構築できます。

ちなみに、潅水ポンプには、電源の規格が100Vと200Vの物があります。購入時にはよく確認してから選びましょう。

・施設構成

手動潅水システムの施設は、潅水ポンプで水を汲み上げて送り、その水を手動の弁で制御する構成です。

構成がシンプルなため導入が容易で、必要に応じて組み替えることも可能です。

小規模な農地で使いたい場合や、時期ごとに農地のレイアウトが変わる場合などにおすすめです。

・設置費用の目安

手動潅水システムの設置に必要な費用項目と金額の目安について説明します。

・手動潅水システム設置に必要な費用項目

  弁                           

  潅水ポンプ

  潅水チューブまたは潅水ホース

設置に必要な費用項目は上記のとおりです。電気工事が不要なため、費用の大部分を材料費が占めます。

設置費用の目安は、必要な材料費を積算すれば算出することができます。 それぞれの相場は、弁が1個当たり1万円前後、潅水ポンプが数万円~数十万円、潅水チューブまたはホースは、100mあたり1万円以下です。

8. 潅水システムは自分で導入可能か

遠隔潅水システムを導入するにはそれなりの費用が必要なため、自前での導入を検討している方もいるのではないでしょうか。リースモデルやサブスクリプションモデルで導入できる潅水システムも増えており、それらは5,000円程度から始められるほど、導入ハードルは下がっています。しかし、大規模に導入するとなると、長期目線で買取モデルでもいいかもしれません。

本格的な遠隔潅水システムを導入するにはそれなりの費用が必要なため、導入を躊躇される方もいるかもしれませんが、簡易的な手動潅水システムなら自前でも導入することが可能です。

ここでは、自前で導入可能な手動潅水システムについて説明します。

9. 電気工事不要の手動潅水システムなら導入可能

潅水システムを自前で導入する場合、導入の壁になるのが電気工事です。遠隔潅水システムは、電磁弁と潅水ポンプに接続するための電気工事が必要になるため、専門業者に頼まざるを得ません。

しかし、一般的な給水資材で構築可能な手動潅水システムなら、電気工事が必要ないため、自前で設置することも可能です。

必要な物は、弁、潅水ポンプ、潅水チューブまたは潅水ホースの3種類。潅水ポンプは設備屋さんや農機具屋さんから購入する必要がありますが、ほかの2種類はホームセンターでも手に入れることができます。

潅水の手間を少しでも減らすため、自前で設置可能な範囲で潅水システムを導入してみるのもいいかもしれません。

10. 潅水システムのメリットデメリット

最後に潅水システムにおけるメリットとデメリットをタイマー式と制御式、手潅水で比較してご紹介します。これから自動潅水を導入する方は、ぜひ参考にしてみてください。

  メリット デメリット
自動潅水 ・土壌水分や蒸散量を予測し、完全自動潅水 ・データの蓄積、分析が可能 ・クラウド管理のため、機能が定期的にアップデートされる ・イニシャルコストが高い ・手入れ、管理を怠るとトラブルがおきる ・農作物に目が届きにくくなる可能性がある
手動潅水 ・遠隔潅水に比べて安価に導入可能 ・栽培様式に合わせて自分の好みの設定ができる ・農作物の状態を小まめに確認できる ・季節や気温によって調整が必要 ・潅水量が定まらない ・手入れ、管理を怠るとトラブルが起きる
タイマー式潅水 ・安価に導入可能 ・栽培様式に合わせて自分の好みの設定ができる ・農作物の状態を小まめに確認できる ・季節や気温によって調整が必要 ・潅水量が定まらない ・手入れ、管理を怠るとトラブルが起きる
手潅水 ・農作物に目が届きやすい ・散水ムラが少ない ・時間がかかり、他の作業ができない ・システム導入コストはかからないが、一定の人件費がかかる

タイマー式と制御式を比べただけでも、メリットとデメリットの両曲面があるので、より自身の圃場や予算などに見合った自動潅水を選択することをお勧めします。

11. 潅水システムは潅水を楽にしてくれる心強い味方

潅水システムは、日々の潅水作業を効率化してくれる心強い味方です。遠隔潅水システムを導入すれば、圃場へ行かなくても潅水が可能なだけでなく、水やりの時間の調整や急な水やりに対応可能です。また、農業法人の働き方として、従業員が事務所に寄らず圃場に直行直帰することがあります。圃場が離れている場合は尚更です。そのような場合、管理者がネット上から従業員が操作した内容や潅水システムのログを確認することができ、作業管理の効率化にもつながります。

もちろん、手動潅水システムでも、その効果はかなりのものです。特に、夏の潅水作業に便利で、暑い中潅水作業をしなくていいだけでなく、熱中症の危険性を回避することもできるのです。

とはいえ、潅水システムの導入には費用がかかるのも事実。まずは試験的に小規模なシステムを自前し、潅水システムに触れてみるというのもいいかもしれませんね。

12. まとめ

まとめ

いかがでしたか。潅水システムは広範囲、かつ効率よく潅水できる、農業において作業補助的な役割を果たすため、スマート農業には欠かせない装置です。潅水システムにおいて、なぜ散布できるのかに着目し、潅水ポンプについて詳しくご紹介しました。

潅水ポンプは手入れを怠らずに行えば長期間使用可能です。定期的に潅水ポンプを含めた圃場の管理をすることは、GAP認証にも欠かせませんし、生産効率向上・生産量向上などにもつながっていきます。潅水方法それぞれのメリットデメリットもご紹介しましたが、最終的にどういう場所でどれくらいの面積、どんな作物を栽培するかで決まります。 ぜひ、ご自身の圃場や作物にあった適切な潅水システムを導入してみてください!

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