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株式会社ohana本舗 代表取締役社長 赤嶺 祐司様

株式会社ohana本舗について

医薬品、医療機器の卸販売を中心とした事業を展開し、売上4,711億円(2020年3月期)を誇る大企業が農業へ参入。

他業種の大企業が農業参入するその意味を株式会社ohana本舗の赤嶺代表取締役社長にお聞きしました。

株式会社ohana本舗

代表取締役社長 赤嶺 祐司様

https://www.ohana-honpo.com/

Q、株式会社ohana本舗の創立は何年ですか?

A、2012年8月8日に創立しました。

Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。

A、社員が7名、パートが6名です。研修生の受け入れは現在計画中です。

Q、赤嶺社長が農業を始められたきっかけを教えて下さい。

A、ohana本舗はフォレストグループの中の1つの会社です。 親会社はフォレストホールディングスという純粋持株会社で、そこの基本理念は「人々の健康に関わる<不>の打開」です。いろいろな「不」があるから、人は健康に満足していない、それを打開しようという意味です。だから、140年ほどの歴史の中で、病気になった人を健康にするための資材、医療用の薬品や検査機器、診断機器の卸が主な仕事でした。でも、これからは「健康な状態をどれだけ維持できるか」という時代に変わっていきます。その中で、10年前にグループのトップから「人々の健康の維持をお手伝いできるような食の会社を考えてくれ」と言われ、農業法人を始めました。

Q、赤嶺社長の経歴を教えて下さい。

A、 最初はフォレストホールディングスの前身である「吉村薬品」に入社しました。大分県で、医薬品の卸売業をしていた会社です。私はそこで10年間営業を経験しました。それから、同族企業が一緒になって「アステム」という会社が設立されました。本社は福岡市で企画畑を歩きました。福岡市には20年間いましたが、全国のアライアンス会社を立ち上げるために、東京に5年間単身赴任していたこともありました。そのときに「葦の会」という、医療用医薬品の北海道から九州までのアライアンス会社をつくりました。その後、福岡県に帰ってきて、フォレストホールディングスの役員になりました。役員のときは、企画の統括として、人の採用や営業の企画、会社の企画をしていました。そんなときに「食の会社をつくれ」と指示があり、農業法人を提案して会社を立ち上げました。立ち上げてから1年は、本社の役員とohana本舗の代表取締役を兼務していましたが、そう簡単に上手く行くものではなく、2014年にohana本舗に専念することになりました。

Q、株式会社ohana本舗の栽培作物を教えて下さい。

A、理念に則り、栄養素がそのまま身体に取り入れられるサラダ系の葉物類を中心に作っています。

Q、株式会社ohana本舗の栽培面積を教えて下さい。

A、8.7haです。全部有機JASとGAPの認証を取得しています。ビニールハウスは3ha、50棟です。

Q、株式会社ohana本舗が農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。

A、通販・宅配事業と会員の方向けの加工業です。

Q、赤嶺社長が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?

A、生産管理です。

Q、その理由をおしえてください。

A、コロナで私たちも少なからず影響を受けました。だからアフターコロナを見据えたときに、もう1度すべてを見直していこうと思いました。生産管理には人材面も重要で、まずは良いものを作ることから、安定供給ができるところから始めなければなりません。それと同時に、安定供給できる大きな柱を販路としていくつか持つ必要があります。現在はこの2つを、2人の役員で分担してやろうとしています。

株式会社ohana本舗の販売方針について

Q、株式会社ohana本舗の主な販売先を教えて下さい。

A、全体の35%がふるさと納税、15%が宅配です。残りは量販店を中心とした小売りです。イオンやマックスバリューといった大規模なところから、2店舗だけの地場のお店まで様々です。

Q、株式会社ohana本舗は直販されていますか?

A、宅配が直販になりますね。直取引はありますけど、弊社の販売店はありません。大分県ではニーズが少ないので、直販をやるとしても福岡県ですし、そもそも店を構えるだけの栽培品目がありません。ただ、将来的には「有機野菜が欲しかったらあの店に行ったら揃う」というのは必要だと思います。今はイオンなどのお店の中に弊社の売り場を作ってもらって「有機コーナー」という形で、弊社が作った、または仕入れた野菜を販売しています。

Q、販売面で苦労されている点はございますか?

A、販路開拓です。

Q、販売面で工夫されている点はございますか?       

A、販路開拓はすべて私の担当でした。最初は宅配の会員さんをメインのターゲットにしていました。3年ほど前までは、毎月土日は東京や大阪、福岡のマルシェに行きました。朝一便で行って、最終便で帰ってきていました。そのおかげで会員数は一定まで増えて、今は弊社の野菜を気に入ってくれた方が残っています。コロナの影響で、宅配は微増です。何もPRしていませんでしたが、ネットで探したという人が増えてきました。5年ほど宅配をしている会員さんの中には、毎週、もしくは隔週注文される方もいます。

株式会社ohana本舗の人材育成について

Q、現在、株式会社ohana本舗では人材募集はどのような方法でされていますか?

A、リクルートのジョブオプLiteと契約しているのとハローワークです。新卒が欲しいので、農業大学校や農業系の高校からのルートを作りたいです。だから大分県主催の就農相談会などに必ず出て、なるべく接触機会を作ろうとしています。また、最近は外国人の研修生の受け入れ態勢を整えようとしています。

人材を募集する中で、「農業をやりたい」という若い人はいます。その中で、3~4割有機農業をやりたいと言います。でもできる人は少ない。10人来た中で、できる人は1人いるかいないかです。1日で辞めた人もいます。だから、最初から採用を前提ではなくて、インターンとして、1週間の研修から入ってもらいます。1日で辞めるとお互いに不幸ですからね。

株式会社ohana本舗の生産管理について

Q、農業生産や生産管理をする中で最も苦労した点は何ですか?またどのようにして解決しましたか?

A、品質管理と安定供給です。慣行農法と比べるとハードルが高いですからね。今は解決している途中です。有機JASの認証を取っているこの辺りの農家・農業法人と一緒に共同出荷グループを作って、出荷で足りない部分を補完しようとしています。

Q、農業生産や生産管理において独自で工夫されているところはどのような点ですか?

A、大分県は共同出荷グループがなくて、それぞれが企業努力・自助努力しながらやっていました。そこで「組合を作ろうよ」と呼び掛けて、「ohanaネット」という出荷組合を作りました。

Q、現在、農業生産や生産管理において困っていることはありますか?

A、たくさんありますね。例えば人材確保です。宅配をするためには品目を絞らず、多品目作る必要があります。そのために、中間管理職ができる人を育成したいと考えています。だから今のメンバーに加え、少なくともあと3人はほしいですね。

赤嶺社長が目指す農業の未来

Q、株式会社ohana本舗の今後の展開について教えて下さい。

A、今年1年かけて、DXにチャレンジしようと思っています。これで、人と知り合うチャンスが格段に広がります。今までもコミュニケーションツールはありました。例えば、生産者が発信するツールや、生産者と消費者のマッチングサイトです。これを弊社にあった形にすることで、デジタルトランスフォーメーションができないかと検討中です。

あとは、新しい方法で情報発信もやってみようと思っています。

Q、赤嶺社長が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。

A、食べるものを輸入に頼っていると、もし日本が孤立した場合、日本人は飢餓に陥ってしまいます。だから、食料自給率をもっとあげる必要があると考えています。また、日本の人口が減る中で、輸出にも目を向ける必要があると思います。今は農協などの大きな組織もありますが、輸入を視野に入れたとき、有機農業の大きな組織も必要だと思います。自分のできる範囲のことをやっているだけでは、大きな壁は超えていけません。熊本県や鹿児島県でやっているように、みんなで助け合っていく有機農業が大分県にも必要です。そして、最終的には九州全体で有機農業の組織ができるといいですね。そうすれば分業もできて輸出も捗るし、生産者は生産に集中できます。

Q、赤嶺社長から若手農家へひとことお願いします。

A、農業は、自然と向き合いながら、自然に背くことなく、人間らしい仕事ができる業種だと思います。大変なこともありますが、自分が作ったものを食べてくれた人たちから「おいしかった」という返事が電話やメールでダイレクトに届きます。また、土作りや種まき、そして収穫を通して「ものを作っている」という実感が湧きます。そういった面ではやりがいがあります。今後は、もっと自給率を上げる必要があります。農業全般にもいえますが、特に有機農業は、まだまだ伸びしろのある、大切な産業だと思います。

インタビューを終えて

『人々の健康に関わる<不>の打開と健康社会への貢献に真の喜びを求める(一部抜粋)』

グループ会社の基本理念をもとに、全圃場有機栽培にて生産を行う株式会社ohana本舗は、有機栽培ならではの難しさを、企業の力と様々なキャリアで得た経験をもとに解決し、着実に事業拡大を図られています。 有機栽培が当たり前、そんな時代を見据えた取組に企業ならではの農業参入の在り方を見させていただきました。

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