野田 雄大様について
野田雄大様は農家で生まれ育つも農業を継ぐ意思はなく、両親からも特に継いでほしいという要望もなかった…。そんな野田さんが農業を志したきっかけや今後実現したい事などをお聞きしました。
Q、野田様が農業に関わりはじめてどのくらい経ちますか?
A、今年でちょうど10年目になります。
Q、現在の従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。
A、両親と社員1名、パートが4名で合計7名います。
Q、野田様が農業を始められたきっかけを教えて下さい。
A、実家が農家ということも理由の1つですが、最初は農業をしたいとは思っていませんでした。でも、実家が農家だったおかげで、学生のときに就職活動をする中で、農業が選択肢の1つにありました。そこで若い農家さんのところに行って、実際に作業したり、どんな想いで農業をしているのかを聞いたりしました。その時に、生き生きと農業に取り組んでいた若い農家さんに魅力を感じて、自分も農業をしようと思いました。
両親からは「農業をしなくていいよ」と言われていましたが、同時に「自分がやりたいことはやっていいよ」ともずっと言われていました。そのスタンスは今も変わりません。農業のやり方や経営スタンスについても「やりたいようにやっていいよ」と、自由にさせてもらっています。
Q、野田様の過去の経歴を教えて下さい。
A、大学を卒業すると、同時に就農しました。当時は大学を卒業したら普通の民間企業で働こうと思っていたので、大学では農業に関係のないことを学んでいました。
Q、野田様の栽培作物を教えて下さい。
A、冬と春のなすがメインで栽培する作物です。
Q、野田様の栽培面積を教えて下さい。
A、なすがビニールハウスで73aです。あとは米が2ha、麦が3ha、大豆が1haあります。
Q、野田様が農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。
A、特にありません。うちは部会に所属しているので生産がメインです。
Q、野田様が農業を行う上で最も気になることは何ですか?
A、人材育成です。
野田様が考える人材育成について
Q、野田様と一緒に働く従業員の平均勤続年数はどのくらいですか?
A、2~3年くらいです。
Q、野田様と一緒に働く従業員の平均年齢はいくつくらいですか?
A、比較的若いと思います。10代から30〜40代前半までのスタッフがいます。
Q、人材育成は上手くいっていますか?
A、上手くいっている部分と苦労している部分がありますね。
Q、その理由をおしえてください。
A、部会の歴史があるので、専門的な情報や技術を得やすい環境にあると思います。従業員もなすの技術習得に集中できるので、専門性を発揮しやすい環境にありますね。でも、毎日同じ作業の繰り返しでは、モチベーションを保つのが大変です。そこで基準を作って、それが達成できたら給料に反映する仕組みを作っています。
反対に苦労しているところは従業員への伝え方と環境整備ですね。以前は家族経営だったので、阿吽の呼吸で理解してもらえることが多くありました。でも従業員に伝えるときは、一から伝える必要があります。そのギャップを難しいと感じています。
また、人を雇うとなると、家族で働いていた環境を変える必要があります。今まで農業に関わったことのないスタッフにとって、私たち家族が働いていた環境は当たり前ではありませんからね。私たちが働く環境を整える必要があります。人を雇い始めてから、環境についてすごく考えるようになりましたね。農業のイメージを変えるうえで、働く人たちが気持ちよくビニールハウスに入れる環境や働き方、それを考えるのが難しいです。
Q、人材募集は行っていますか?
A、現在はしていません。
Q、人材募集はどのような方法で行っていますか?
A、募集をしたことはありません。今まで採用した方はみんな知人からの紹介です。今回新しく採用した社員も知り合いからの紹介でした。若くて農業に興味があるということで、うちに来てくれました。やっぱり紹介で人が来てくれると、職場の人間関係が安定します。とてもありがたいと感じています。
Q、人材採用で苦労されている点について教えて下さい。
A、特にありません。人が欲しいときに「誰かいないですか?」と聞いたら、知人やうちのスタッフが探してくれて、新しい人を連れてきてくれます。本当に運が良いし、ありがたいと思っています。
野田様が考える生産管理について
Q、農業生産している中で、一番苦労した点は何ですか?
A、やりたいことが毎年増えていくので、栽培技術を毎年更新することに苦労しています。毎年課題感を持って取り組んでいるので、納得いった年は1年もありませんね。
Q、それはどのように解決されましたか?
A、環境制御装置を導入して、ビニールハウス内の環境や作業を数値化することに取り組んでいます。天候などで計画通りにいかないこともありますが、それも課題と思いながらやっています。
Q、農業生産において独自で工夫されているところはどのような点ですか?
A、人を雇用するようになってから、数字で管理することを意識しています。例えば、目標数値を従業員さんに伝えて、その目標を達成するためのプロセスを共有しています。何か所もビニールハウスを管理していると収量が下がることが課題の1つなので、数値で伝えることで分かりやすくしています。
野田様が目指す農業の未来
Q、今後の展開について考えていることを教えて下さい。
A、自分の中での大きな課題の1つは、今やっている雇用経営型の農業を確立することです。思えば最初は農家の跡取りとして農業をしたいと思っていませんでした。大学を卒業して、普通の会社に勤める流れでした。でも実際は大学を卒業して農業をしています。だから選んだ道を後悔したくないんですよね。
普通に大学を卒業して会社に勤めている友達より稼ぎたいと思っています。そして、稼ぐ中で、雇っている人たちの生活も守っていきたいと思っています。
また、少しでも周りに影響を与えられる人になりたいとも思っています。今後、生産者数は確実に減ります。でも、農業で生計を立てて楽しく暮らしている姿を見せることで、周りの人たちに何かきっかけを与えられたらいいと思います。
Q、野田様が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。
A、家族経営などの多様な農業のスタイルなどを知ってもらい、就職活動のときに農業が選択肢の1つになるようになればいいと思います。
Q、野田様から若手農家へひとことお願いします。
A、私もまだまだなので、大きなことは言えませんが…。今の農業と過去の農業では大きく価値観の変わるタイミングにあると思います。過去の農業では一人前になるには職人気質が必要な業種でした。でも今は環境制御装置やAIが農業に進出してきたことで、今まで10年かかっていたことが2~3年でできるようになっています。だから時代に合わせた農業を選択していけば、もっと効率的で、楽しい農業が可能だと思います。そのうえで、しっかり稼げるという成功体験を積んでほしいと思います。
インタビューを終えて
毎年立てる目標そして結果と発生する課題に対して、農業を10年間していて満足したことが無いと語っていた野田様。目標があるから課題が明確になり解決できると仰っていました。
就職直前まで、農業をする予定ではなかった野田様が、今ではJA福岡県青年協会の役員まで務められ、将来的には雇用型経営の延長線上に法人化も視野に入れていらっしゃいました。 将来、野田様が地域を背負って立つ農業者として更なる飛躍をされることを期待します。