株式会社松岡グリーンファーム山都について
1854年に”肥後の石工”たちの持つ技術を用いて建設した石橋「通潤橋」は、日本最大級の石造りアーチ水路橋で国の重要文化財に指定されております。農業に水は不可欠であり、167年前に建築されたその橋は、今でも農業用水路として活用されています。
農業と水にそのような歴史がある、山都町の株式会社松岡グリーンファーム山都 松岡社長にお話をお聞きしました。
株式会社松岡グリーンファーム山都
代表取締役 松岡 和博様
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Q、農業法人の創立はいつですか?
A、創立してから6年が過ぎました。立ち上げは2015年12月です。
Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)はどのくらいいらっしゃいますか?
A、役員2名、正社員3名、準社員2名、パート3名です。
Q、社長が農業を始められた理由を教えて下さい。
A、代々農業をしている家系なので就農しました。私で3代目になります。
Q、松岡社長の経歴を教えて下さい。
A、地元高校の農業科を卒業したあと、久留米にある農林省の野菜試験場で2年間研修を受けました。その後、知人の紹介で東京農大の通信教育を2年間受けながら農業を始めました。
Q、松岡グリーンファーム山都の栽培作物を教えて下さい。
A、中玉トマト70a、葉物類が70aです。葉物類は主にほうれん草・小松菜、スポット的に水菜を栽培していて、年間で5.5回転しています。
Q、松岡グリーンファーム山都の栽培面積を教えて下さい。
A、面積は1.4ha、ビニールハウスは47棟です。拡大・修繕を繰り返して拡大してきました。
Q、農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。
A、加工業です。自社で生産したトマトを加工して、トマトジュースにして販売しています。トマトジュースを始めたきっかけは2つあります。1つは、むかし水分制限をしながらトマトとメロンを作っていたときに、友人から「これはおいしい、甘いトマトだ」と言われたことです。もう1つは、農業法人を立ち上げたときに、農協から加工場の補助事業もあると聞いて「トマトジュースを作ったら成功するかもしれない」とひらめいたからです。
Q、松岡社長が最も気になることは何ですか?
A、トマトジュースにおいては販売、葉物類は生産管理に重点を置いています。
松岡グリーンファーム山都の販売方針について
Q、どのような場所で販売していますか?
A、トマトジュースはふるさと納税、地元の道の駅、JAの販売所で販売しているのに加え、口コミで注文をいただいています。ネット販売は手数料やロットの問題でしていません。東京の熊本銀座館での販売も考えましたが、バイヤーさんと話してみると、中間マージンと運賃が高かったので販売しませんでした。だから口コミで広げていきたいのですが、なかなかうまくいかず苦労しています。
Q、生産された作物を直販していますか?
A、地元の道の駅、JAの販売所は直販です。
Q、生産された作物を販売する上で工夫されている点はございますか?
A、品質が均一になるようにしています。収穫して冷凍するときに3種類ほどに分けて、糖度などを合わせるようにしています。あとは女性のきめ細やかさを活かして、事故がないようにしています。私の家内が衛生管理者となって、丁寧に作業しています。他にはいつもフレッシュなジュースに見えるように努力しています。熊本県とタイアップして、ジュースが分離しないように指導していただいています。
松岡グリーンファーム山都の農業生産における苦労と工夫について
Q、作物を栽培する中で、過去、一番苦労した点を教えて下さい。
A、ほうれん草栽培だと、ベト病とコナダニですね。コナダニとはケナガコナダニといって、ほうれん草特有の、アカザ科に付くダニです。アブラナ科の小松菜・水菜にはつきません。堆肥・米ぬか・有機物を好んで生息・繁殖し、1回根付くとなかなか減りません。ほうれん草の栽培面積は拡大していますが、4年前に出した売り上げを越せないくらい、ベト病とコナダニに悩んでいます。面積を拡大する前は被害も少ししかなかったのですが、面積を拡大すると一気に増えました。堆肥をたくさん作ると、線虫やコナダニが好むもみ殻がたくさん必要ですからね。おまけに、私たちが作っているボカシ肥料もエサにして増殖していきます。だから今も苦労しています。これをクリアすれば売上が伸びる自信があるのですが。
Q、どのように解決しようとしていますか?
A、完熟した堆肥を入れることと、夏場に1か月間消毒することで解決しようとしています。前は熱消毒だけでしたが、去年初めて入れた微粒剤でも死ななかったので、今年はクロルピクリンで1回ゼロにしようと思っています。それでまた来年の春くらいに増えだしても、一定以上まで増えなければ熱処理などで対応しようと思います。
Q、作物を栽培する中で独自で何か工夫されているところはどのような点ですか?
A、ボカシ肥料と堆肥を自分たちで作っていることです。また、全社員が小まめな連絡・連携をとってミスをしないことも大切にしています。ホウレンソウ(報告・連絡・相談)を密にとるということです。以前はないがしろになっていましたが、今では機械のちょっとした破損や水やりの時間などの細かいことでも共有して、小まめな管理を心がけています。
Q、作物を栽培する中で困っていることはありますか?
A、病気以外で困っていることはありません。販売先も安定しているので、病気さえ克服できれば売り上げも伸びると思います。
松岡社長が目指す農業の未来
Q、今後の松岡グリーンファーム山都の展開について教えて下さい。
A、トマトジュースは、日本だけでなく、世界に向けてマーケティングしたいと思っています。値段は安くないですが、中玉のもっている香りとコク、それを無添加で届けたいです。コロナ禍で健康作りも世界共通のキーワードだと思うので、私たちのできる範囲で、少しでも世界のいろんな人たちに、おいしさと健康を含めて味わってもらいたいです。
トマトジュースの利益割合は1割程度と少ないですが、加工業を松岡グリーンファームの顔にしたいです。ジュースを飲んだ人たちが私たちの想いや熱意を感じられる、そんな凝縮された味を実現したいです。
もう1つは、毎日の連携を密にとってミスをなくすことです。その集大成として売上を伸ばし、社会保障、従業員さんたちを守っていくことにつなげたいですね。
Q、松岡社長が考える今後の農業のあるべき姿を教えて下さい。
A、土と共に大地に根をしっかり張っていく作物のように、人間も地に座った農業をしていくことを忘れないようにするべきだと思います。食の提供がないと、生命は受け継がれません。これはさまざまな産業があるなかで、第1次産業だけができることです。だから、誇りをもって、自信をもって農業をしていくべきだと思います。
Q、最後に松岡社長から若手農家へアドバイスをお願いします。
A、農業は生命をつなぐ役割をもった重要な産業です。今後はIターン・Uターンを含む新規就農者、中には30代・40代から農業を始める人もいると思いますが、自信と誇りをもって、1歩ずつ、着実に根を張っていってほしいと思います。いろんな地域がありますが、1歩ずつ地域に馴染んで、地域の人たちと関わりを持って、助け合って、仲間意識を持って、1日1日無理をせず、楽しんで農業をしてもらいたいです。
インタビューを終えて
葉物野菜の栽培だけでなく、中玉トマトを使った6次化でトマトジュースを生み出し、農業の未来を見据えた経営をしていらっしゃいました。そこには、ご子息2人が就農されたことも大きく影響していると思われます。頂いたトマトジュースは、コクと甘みがぎっしり詰まったとてもおいしいジュースでした。
今後、ポケマルでの販売を検討していらっしゃるようですので、一度ご賞味ください。