株式会社麻生園芸について
青じそやそれらの加工品を製造販売する株式会社麻生園芸の歴史は古く、昭和63年4月に法人化されました。
自信をもってお客様に薦められる農作物を作ると決め、減農薬にチャレンジしましたがが、現実は厳しく売り上げが半減するという事態に陥るも、その後も方針を変えず減農薬農法にチャレンジし続けておられます。
今回はそんな株式会社麻生園芸の麻生 朗代表取締役にお話をお伺いいたしました。
代表取締役社長 麻生 朗様
株式会社麻生園芸
Q、株式会社麻生園芸の創立は何年ですか?
A、昭和63年創立で、今年で34年になります。
Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。
A、社員が5名、外国人実習生が10名、パートが15名、全員で30名です。
Q、麻生社長が農業を始められたきっかけを教えて下さい。
A、親が農業をしていて、自分は社長になりたかったので、事業継承しました。
Q、麻生社長の経歴を教えて下さい。
A、大学卒業後に佐賀県内で就職して、車の営業を3年間していました。その後、家業である麻生園芸に入りました。会社を継ぐことは決めていたので、その前に他の経験をしようと思って就職していました。
Q、株式会社麻生園芸の栽培作物を教えて下さい。
A、青じそです。
Q、株式会社麻生園芸の栽培面積を教えて下さい。
A、ビニールハウスが22ヶ所あって、それらを合計すると2.3haになります。
Q、株式会社麻生園芸が農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。
A、25年ほど前から、加工品の販売をしています。委託先に加工してもらって、できた商品を買い取って販売しています。
Q、麻生社長が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?
A、人材育成と生産管理です。
株式会社麻生園芸の人材育成について
Q、株式会社麻生園芸の平均勤続年数はどのくらいですか?
A、12~13年です。
Q、株式会社麻生園芸の従業員の平均年齢はいくつくらいですか?
A、45歳くらいです。
Q、人材育成は上手く行っていますか?
A、上手くいっていないと思います。
Q、その理由をおしえてください。
A、私の伝え方が悪いから、優先的にやりたい作業内容が社員さんに伝わらないのです。私が「これを先にした方がいい」と思っていても、社員さんは違う作業を優先することがよくあります。だから伝え方を改善していこうと常々思っています。
Q、人材募集は行っていますか?
A、パートを募集しています。今後のことを考えると優秀な社員もほしいです。具体的には、自分の頭で整理しながら次の計画を立てられる人、自己管理がうまくできる人、周りと協調性がある人ですね。
Q、人材募集はどのような方法で行っていますか?
A、過去にハローワークや農業大学校の卒業生、友人知人を採用していました。
株式会社麻生園芸の生産管理について
Q、農業生産している中で、一番苦労した点は何ですか?
A、減農薬栽培に切り替えたときに、売り上げが半減したことです。大葉栽培ではたくさんの農薬を使います。私は入社したときに、親が農薬を散布しているのを見て「農薬は嫌だ」と思いました。私は自分の作った商品を、自分の大事な人に自信を持って食べてもえる農業をしたいと考えていました。だからすべてのハウスを減農薬栽培に切り替えました。でも現実は厳しくて、病気や害虫でほぼ全滅状態になり、収穫量も半分以下に落ち込み、売り上げが半減しました。それで父親とケンカばかりしていました。父は「一度に減農薬に切り替えずに、少しずつ試していけばいいんじゃないか」と考えていました。でも私はそのやり方だと、いつまでたっても減農薬栽培に切り替えられないと思っていました。先に認証も取っていたので、思い切って全部減農薬栽培に切り替えました。実は、父にも減農薬栽培をしたい気持ちはありました。でも、虫が出たら農薬を使うことを止められませんでした。父にとって減農薬栽培は、目の前の収入を落としてまですることではありませんでした。
当時の私は入社して数年だったので、会社の収益はあまり考えていませんでした。思いだけで、お金はなんとかなるだろうと思っていました。それよりも将来を考えると、今のやり方では時代に合わなくなって、お客さんも減ってしまうと考えていました。有機栽培や減農薬などの売りになる言葉で商品力を持っていかないと、他の農産物と一緒に見られて販売が厳しくなると思っていました。だから将来のことを考えて、減農薬栽培に切り替えるべきだと思いました。
Q、それはどのように解決されましたか?
A、新しい取引先に助けられました。減農薬栽培を続けていると、ある程度高く買ってくれるお客さんが付きました。でも、まだまだ解決の途中です。
Q、農業生産において独自で工夫されているところはどのような点ですか?
A、大葉は周年作物で、毎日出荷します。その中で、注文量と収穫量をコントロールすることが大切です。だからExcelで独自のソフトを作って、2週間先までの注文量と収穫量がわかるようにしています。これで仕事の計画を立てて、毎日みんなに作業内容の共有をしています。そして作業を平準化して、休みのとりやすい環境作りをしています。前はその日にならないと作業内容がわからない状態でした。でもソフトを作ったおかげで、このあたりまで前倒しで作業を進めればこの日は休めるということが自分たちで予測できるようになりました。
Q、現在、農業生産において困っていることはありますか?
A、面積あたりの収量が低いことです。22ヶ所ビニールハウスがあって、収量の低いところは高いところの1/3~1/4しか採れません。土や病気、潅水のやり方や環境制御など、さまざまな原因があると思います。
Q、解決に向けて取り組んでいることを教えて下さい。
A、情報収集と勉強をしているつもりですが、まだまだだと感じます。
麻生代表取締役が目指す農業の未来
Q、今後の展開について考えていることを教えて下さい。
A、年間売上として10億円を達成したいです。そのための構想は頭の中にあります。3億円くらいまでなら、収量が上がればいけると思います。
Q、麻生社長が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。
A、環境に適応できる農業にしていかないと、農業は世の中からなくなるでしょう。いろんな状況に合わせて変化することが大事だと思うので、あるべき姿は1つではないと思います。地域や人によってやり方はさまざまだと思うので、あるべき姿が多様化することが必要です。無理して1つの形に当てはめずに、そこで生き残れる方法を考えた方がいいと思います。
Q、麻生社長から若手農家へひとことお願いします。
A、農業を始めるということは社長になることです。自分でやることは責任もあるけど、サラリーマンとは違う楽しみがあります。農業はいろいろありますが、作る過程も楽しいし、自分が作ったものを食べてもらえると嬉しく感じます。また、田舎を活性化できる唯一の職業だと思います。土地はあるけど人が少ない場所でできるのは、農業くらいでしょう。
インタビューを終えて
麻生社長は売上が半減しても自分が信じる農業を貫き、自分たちの価値を理解して頂ける新しいお客様と巡り合うという結果に結びつけることが出来ました。
その原動力は、変化を理解し、その変化に合わせて行動していくことが大事と仰っていた言葉に凝縮されているのではないかと思います。 「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」というダーウィンの言葉がありますが、麻生社長の経営スタイルは正にその通りであると感じました。