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株式会社ナチュール 前渕 健太郎様

株式会社ナチュールについて

株式会社ナチュールは、スイカの産地で有名な熊本県北区植木町でワイン用のブドウを栽培している農業法人です。

そのブドウで作られた「菊鹿シャルドネ」は、『日本で飲もう最高のワイン2019受賞』、『専門家部門『金賞』受賞』、『愛好家部門『金賞』受賞』などいくつもの賞を獲得しています。

ワインに惚れ自ら生産を始めた、株式会社ナチュールの前渕社長にお話をお聞きしました。

株式会社ナチュール

代表取締役 前渕 健太郎様

http://nature.urdr.weblife.me/

Q、株式会社ナチュールの創立は何年ですか?

A、2015年7月に設立したので、5年経ちますね。

Q、従業員数(社員とアルバイト数、研修生の数)を教えて下さい。

A、正社員が1人、期間限定でパートさんが2人です。

Q、前渕社長が農業を始められたきっかけを教えて下さい。

A、もともと農業に興味はありましたが、農業を始めたきっかけはワインです。ワインを飲んで「おいしいな」と思ってワインの魅力に気づき、ワイン用のブドウを作りたいと思いました。でも、ノウハウもなかったし、資金も限られていました。そんな中でいろんな方々とご縁をいただいて、その中で出資していただける方が出てきました。そして、それなら最初から会社を興して、本格的に農業を始めようと思って起業しました。

Q、前渕社長の経歴を教えて下さい。

A、大学を卒業してから、14年間商社マンをしていました。工場相手に1円のナットから数億円の設備まで、機械総合商社で工場に関わる設備を販売していました。そのため、農業はまったくの畑違いでした。親戚家族に農業をしているものもいません。道具も何もない、鍬1本持ってない状況から農業法人を立ち上げました。

Q、株式会社ナチュールの栽培作物を教えて下さい。

A、パクチー、ほうれん草、なす、ワイン用ブドウです。

Q、株式会社ナチュールの栽培面積を教えて下さい。

A、パクチーはビニールハウスが12棟、露地栽培が40aです。ほうれん草はハウスが30棟、なすは5連棟のハウスで約20a、ワイン用ブドウは17aです。

Q、株式会社ナチュールが農業生産以外で行っている他事業について教えて下さい。

A、化粧品の展開をしています。これは会社を始めたときから構想にありました。ブドウを作るだけでは食べていけないからです。化粧品の製造は、ワインを作っている会社さんと契約して行っています。ワイン製造の現場を見たときに、ワインを作る過程で発生するブドウの搾りかすを廃棄していることを知りました。そこで、「ブドウの搾りかすを副産物として利用できないか」と思いました。そこのワインは全国的に有名なブランドなので、ブドウの搾りかすに付加価値を付けられればチャンスがあると思ったのです。それから、さまざまな機関で成分分析をしていくと、搾りかすにも美容効果のある成分が含まれるとわかりました。また、ヨーロッパにブドウから作った化粧品を展開している大きなメーカーがあるという実績も調べました。それから、無事化粧品の製品化に至りました。現在、石鹸とボディローションを販売しています。

Q、前渕社長が会社を経営する中で最も気になることは何ですか?

A、販売と人材育成です。

株式会社ナチュールの販売方針について

Q、株式会社ナチュールの主な販売先を教えて下さい。

A、ブドウ・なす・ほうれん草は全部契約販売しています。パクチーは北海道から沖縄まで全国の飲食店さん・セブンイレブンさん・成城石井さんに出荷しています。

Q、株式会社ナチュールは直販されていますか?

A、基本的に直販が中心ですね。先ほど申し上げた契約販売です。

どの仕事をするにおいても思うのですが、一番大事なのが何をするか、次に大事なのが誰と付き合うかだと思います。いろんな人たちのご縁があって、今の販売先に広がっています。どのような形でどのような人と付き合っていくかを大事にしています。人とのつながりは、農業に限らず、何においても大切です。

Q、販売面で苦労されている点はございますか?

A、パクチーはコロナの影響を受けているため苦労しています。飲食店とのお付き合いが多かったので、1月だけを見ると、飲食店向けは前年同月比で9割ダウンでした。それでもパクチーは育つので、今は新しい売り先・契約を見つけて販売しています。

また、関東や関西へなかなか営業に行けないことにも苦労しています。日本のマーケットは、人口が多い関東・関西が大きい。我々は熊本県なので、コロナの影響があるため行きたくてもなかなか営業に行けません。インターネット販売もいかに多くの人に見つけてもらうか?という点で苦労しています。コストをかけたとしても、費用対効果が見えにくいですし。関東関西に送るにしても、九州と距離があるので送料がネックになります。送料に関しては、今いろいろな配送業者などと相談しているところです。

Q、販売面で工夫されている点はございますか?       

A、基本的にその日収穫したものを出荷するようにしています。だから、いろんなところから鮮度が良いと評価をいただいています。また、パクチーに関しては、独自のルートでタイから種を購入しています。この種は、人とのつながりの中で手に入れました。日本で作られる他のパクチーとは味が違うと言われますね。パクチーも世界には200種類くらいあります。その中で色々な種を調べ、植えてみて、この種がいいなと思った品種を栽培しています。最近ではアジア料理を出すお店も多いので、現地の品種を種から育てている点で差別化ができています。

株式会社ナチュールの人材育成について

Q、株式会社ナチュールで働く方の平均勤続年数を教えて下さい。

A、1年半くらいです。

Q、株式会社ナチュールの従業員の年齢を教えて下さい。

A、正社員は42歳で、農業経験はありません。私は40歳です。それと、12月までは41歳の別の正社員がおり、その方は入社した当初から独立を目指していましたので独立しました。

Q、人材育成はうまくいっていますか?

A、うまくいっている点も、うまくいっていない点も両方あります。

Q、うまくいっているのはどのようなところですか?

A、コミュニケーションはうまくとれていると思います。1日の始まりに朝礼をして、今日一日の作業確認をします。そして、1日の終わりに作業の振り返り・反省をしています。

Q、うまくいっていないのはどのようなことですか?

A、農業に関しての人材育成は時間がかかります。生産管理でもいえることですが、農業は反省を活かそうと思っても1年後になります。365日・四季・天候を考えていろんなものを作ろうとチャレンジしても、1年に1回です。だから、人材育成は難しく感じます。

Q、現在、株式会社ナチュールでは人材募集はされていますか?

A、コロナの出口が見えないので現在はしていません。コロナがなければ募集していたでしょう。また、コロナの前から計画していたのですが、事務所や作業所を整えたので、人を雇う余裕が無いのも現状です。

過去採用したときは人づてや紹介でした。また、ベトナムの研修生も受け入れていました。

Q、過去の採用面での苦労されていることはありますか?

A、農業を経験していない人を採用したいですね。農業経験があって、かつ年数が長い方は固定観念があります。私は農業ド素人から会社を始めたので、経験がある方と働くと、学ぶこともあればぶつかることも少なからずあると思います。そこで、人と人とのひずみも生じてきます。農業を知らないもの同士で苦労したほうが、結果として解決に向かうのではと感じています。

前渕社長が目指す農業の未来

Q、株式会社ナチュールの今後の展開について教えて下さい。

A、地元に根付いた農業をやっていきたいです。私たちが農業をしているのは、熊本県の植木という地域です。農業はどこでもそうですけど、植木でも高齢化で辞められる方がどんどん増えて、耕作放棄地が増えている状況です。例えば、ご主人がもう動けなくなったから奥さんも辞めてしまって土地が空いてしまう。私たちとしては、その土地を話し合ったうえで利用させていただきます。そのときに「奥さんも一緒にやりましょうよ」と誘ってみたり、地元の人たちを巻き込んだりして、大きな農業にしていきたいと考えています。そうすると、地域に雇用を生み、土地も活用することができます。それを植木で広げていきたいです。私の出身地ではありませんが、日頃からお世話になっているので、植木に貢献したいと思っています。

Q、前渕社長が考える今後の農業のあるべき姿について教えて下さい。

A、私は土地も借りられて、5年前に農業法人を立ち上げましたが、すぐに農業生産はしませんでした。「このまま何か作ったら失敗する」と思ったので、4か月前後農業をせずに、農業で成功されている社長さんたちを中心に、いろんな人たちに会いに行きました。そして、自分なりのストーリーを作って、農業をしようと思いました。

いろんな農家さんと話して感じたのが、ほかの仕事にも当てはまることですが、「先にゴールを作ればいい」ということです。例えば、ある作物を作って儲かった。それで「あの人これ作って儲かったらしいよ」「じゃあ俺も作ろうか」と言って作って、結果的に儲からなかった。言い方に語弊がありますが、これはビジネスではないと思いました。だから、先にゴールを設定しようと思いました。例えば車のハンドルを作るようお願いされたとします。営業の人が打ち合わせをして、決まった話を工場に持ち帰る。それから生産ライン・材料・人件費などを決めて、再び話し合って、契約が成立する。要は、ゴールからのブレイクダウンで業務を考えています。普通の農家は逆で、ものを作ったうえで販売を考える、業務をステップアップで考えてしまっている。だから、先にゴールを決めてブレイクダウンで考えると、結果的に安定につながります。その時期にやらなければならない作業や、売り先を確立したうえで始めるからです。販売の仕方に関しても、直売が増えているのもゴールからのブレイクダウンの1つの現れかと思います。これは農業だけでなく、一般的なビジネスの形です。一般的な形を、農業に置き換えているだけです。ゴールを確立するという意味で、私の場合は、販売先は直接契約しているところが多いのです。

Q、前渕社長から若手農家へひとことお願いします。

A、農業をしたい方はたくさんいます。でも、実際に農業をやってみると、理想と現実は違います。ふたを開けてみると「こんなにきつかったのか」「こんなに大変なのか」と感じることがたくさんあると思います。でも、1人じゃないことを忘れないでください。いろんな仲間がいればいろんな人たちが助けてくれます。逆に困っている人がいれば助けてあげることができます。それは生産においても、販売においてもそうだと思います。1人で農業をしようという形もあります。でも、仲間で助け合いながら地域全体でやっていこうと考えていると、苦労はたくさんあると思いますが、間違いなく明るい未来もあると思います。

私の座右の銘は「結果は後からついてくる」です。高校のときからずっとそれを思っています。今はコロナの影響もあり大変なこともあると思いますが、振り返ったら自ずと結果がついてくると思います。農業は特にそうだと思います。がんばったら、がんばった分だけ結果がついてきます。

インタビューを終えて

元商社マンで農業素人と自ら語る前渕社長。しかし、どんな仕事でもゴール設定が大事と語っていました。

ゴールからからブレイクダウンし、ただ闇雲に仕事をこなすのではなく、今やるべきことをし、ゴールをつかみ取るというぶれない信念を感じました。

「結果はあとからついてくる」を座右の銘とする前渕社長の未来を想像できるインタビューでした。

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